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神前 暁の「音楽家としての核」はどこにある? 斎藤滋&山内真治を交え“思い出の楽曲”を語り合う

リアルサウンド

19/12/27(金) 12:00

 『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』、『〈物語〉シリーズ』、『かんなぎ』などの楽曲を制作し、アニメ・ゲーム業界だけではなく、J-POPシーンにも影響を与えてきた音楽家・神前 暁が、2020年3月18日に作曲家デビュー20周年を記念した作品集『神前 暁 20th Anniversary Selected Works “DAWN”』をリリースする。

 同作の発売を前に、神前と株式会社ランティス(現在は株式会社バンダイナムコアーツに社名変更)の音楽プロデューサーとして、『ハルヒ』『らき☆すた』などを手がけてきた斎藤滋氏と、『〈物語〉シリーズ』などで音楽プロデュースを務める株式会社アニプレックスの山内真治氏を交えて行った鼎談。前編では彼のキャリアに沿う形でエピソードを語ってもらったが、後編では斎藤氏&山内氏の“思い出に残っている楽曲”をベースにトークを繰り広げてもらった。(編集部)

【前編:神前 暁が斎藤滋&山内真治と振り返る、『ハルヒ』『らき☆すた』『〈物語〉シリーズ』の音楽

斎藤&神前が語る「God knows…」「Lost my music」制作秘話

ーー色んなコンセプトの歌モノを一気に作るというのは、『らき☆すた』と『〈物語〉シリーズ』の共通点でもあると思います。

神前:膨大な楽曲を量産するというのはここでだいぶ鍛えられましたし、方法論は確立できましたね。

ーー斎藤さんから、神前さんのアニプレックス周りでの音楽作りはどう見えていましたか?

斎藤:アニプレックスさんとお仕事するなかで、色んなジャンルを経験することでレベルアップしてるなと感じました。『ハルヒ』も『らき☆すた』も大編成を使わないような作品だったので、サウンド感がどことなく似ているんですよ。でも、そこから生楽器を録るようになったり、映画作品を手がけたり。可能性がどんどん広がっているなと。

ーーたしかに、『ハルヒ』と『らき☆すた』はDTM感が強いですね。

斎藤:予算的にもそこまで潤沢でもなかったこともあるんですけど。

ーーDTM感が強かったり、編成の制約があったことで、より神前さんの出自であるゲーム音楽感も出ていたような。

斎藤:『ハルヒ』の音楽はメロディーの強いものが多くて、僕は好きなんですよ。

神前:僕はね……恥ずかしい面もあります(笑)。

斎藤:10~20年前のゲームミュージックって、音源が少なかったからメロディを強くせざるを得なかったじゃないですか。僕はその時代の音がすごく好きだし、『ハルヒ』にも『らき☆すた』にもその感じが残っていて、個人的にはすごくストライクでした。ただ、大編成を使えるようになったり、キャリアを重ねていくことで、台詞との馴染みを考えたりできるようになると、主張を控えめにすることも多くなってくると思うんです。

ーーBGMかどうか、というところですね。

斎藤:昔から劇伴作家さんにお仕事をお願いするときに、自分の意見をいってもいい環境のときは、劇伴作家さんに「なるべく耳に残るものを」とお伝えしています。サウンドトラックになったときに手に取りやすいかなと思って。全部が全部そうではなく、そういう表現が合いそうな作品や状況を選んで提案しているんですけど。

ーー斎藤さんと山内さんが、今回の収録曲でお気に入りを挙げるとすると?

斎藤:「God knows…」と「Lost  my music」は、2人ともバンド録音が初めてで。長門有希のギターが超絶テクニックという設定だったので、すごい人たちを呼ばなきゃということで、結果的に西川進さん(Gt.)、小田原豊さん(Dr.)、種子田健さん(Ba.)というメンバーが集まって。収録当日、スタジオに行ったら皆さんがすでにスタンバイしていて、僕はそういった現場が初めてなので「来たのはいいけど、何をすればいいんだ……」と戸惑っていました。向こうもこちらの指示を待ってくれていたんですが、見るに見かねた西川さんが「こっちで始めるので進めちゃっていいですか?」と言ってくださって。こちらも滝のような汗をかきながら「わかってますよ」という空気を出すのに必死でした(笑)。

神前:恐ろしい現場でしたね(笑)。

斎藤:ミュージシャンのみなさんは早々に察してくださったみたいで、「どっちのテイクが良かったですか?」と聞いてくれたりもしました。

神前:譜面についても、バンドの楽譜の書き方がわからなくて。とにかく全部デモで入れた音のパート楽譜を玉にしていましたね。普通はCとか8ビートとか書いておけばいいんですけど……結果的にすごい読みにくい楽譜になってしまいました。

斎藤:当時、西川さんへのリクエストで「このキャラは実は人間ではないので、難しいテクニックで弾いてください」というのと、小田原さんと種子田さんには「2人は普通の高校生なので、あまり難しいことはしないでください」とオーダーして、あとはじっとしてました。全部いいテイクだし、どうしようと思って神前さんにぶん投げた記憶が……。

神前:西川さんがセルフリテイクしてましたよね。あのイントロのギターリフも西川さんがその場で作ってくださって。

斎藤:当時はビクビクしてましたけど、今思えば笑い話です(笑)。

神前:そんな西川さんとも先日『〈物語〉フェス』でご一緒させていただいて、すごく感慨深かったですよ。

山内:僕は、さっき挙げた「白金ディスコ」と『かんなぎ』の「最後のラブレター」と、『〈物語〉シリーズ』の「chocolate insomnia」。最近だと西川さんの「awakening」もお気に入りです。

「『脆さと狂気』が神前さんの元々の魅力(山内)」

ーー「白金ディスコ」は先ほどエピソードを伺ったので割愛しますが、ほかの3曲について、挙げた理由を伺えればと。

神前:「chocolate insomnia」は実は何度も作り直してるんですよ。最初のデモは山内さんからリテイクをもらって、2回目に出したものはOKをいただいたんですが、自分の中では納得がいってなくて。実はこの曲、以前から作っていたストックのデモ音源を基にしているんです。でも、これが合うという確信があったので、「一回聴いてみてください」と送ったら、気に入っていただけて。

山内:「最後のラブレター」に関しては、原作の完結に合わせて、コミックスに付属するCDの楽曲を、ということで作った曲ですね。アニメ制作当時はアニプレックスにいなかったんですが、原作の武梨えり先生が詞先で歌詞を書いてくださって。ご自身でMIDIのデモも作っていたんですよね?

神前:メロを作ってくださっていたので、クレジット上は共作曲ということになっています。

山内:完結するにあたっての思いの丈が入っている名曲です。

神前:今回のベスト盤では、基本的にアニメ主題歌など知名度の高い曲を選んだんですが、それ以外に「どうしても収録したい、ここで収録しないと二度と聴いてもらえないかもしれないので入れたい」と希望した曲がいくつかあって、「最後のラブレター」はその最たる例です。

山内:「awakening」は『Bright Burning Shout』のカップリング曲なのですが、表題曲は西川貴教さんのソロ名義としては初のシングルで、『Fate/EXTRA Last Encore』の劇伴を担当していた神前さんに作曲をお願いしたい、という経緯でオファーしました。神前さんもかなり忙しい状況だったんですが、内容を伝えると「やらない理由がない」と快諾してくださって。

神前:作業期間のほとんどは「Bright Burning Shout」に費やしていたんですが、カップリングも、とオファーをいただいて。

山内:流石に難しいかなと思っていたんですが、西川さんご本人が強く希望してくださって、結果的に受けていただけることになりました。劇伴のメインテーマを変奏曲として歌モノにするというアイデアが西川さんからあって、制約がキツいタイプの案件でしたね。

神前:スケジュール的にもなかなかタイトだったので、デモを細切れにして山内さんに送っていました。劇伴は歌モノ前提で作っていなかったので、「これは歌になるのかな……」と思いながら作っていた記憶があります。

山内:適度な厨二ワードがうまく入っている毛蟹の歌詞も良かったですね。

神前:アレンジはシンフォニックメタルが大好きなうち(MONACA)の帆足(圭吾)が担当してくれました。

山内:神前さんは「God knows…」の反響からロックの人と見られがちなんですが、全く違いますから(笑)。そういう人がシンフォニックメタルの極みみたいな曲を作っていくのは、すごくワクワクしました。西川さんもとても気に入ってくださって、『西川貴教×大島こうすけ オーケストラコンサート「京響プレミアム~スピンオフ ラジオタイムス~言葉が結ぶシンフォニー~」』で京都市交響楽団と演奏までして。僕と神前さんは直前にそれを聞きつけて、滑り込みで駆けつけて感動したのを覚えています。

ーー最後に、2人にとって、今の神前さんはどう映りますか?

斎藤:最近もお仕事をさせていただいてるんですけど、長くご一緒しているのもあって、1を投げれば10で戻ってくるタイプなんですよ。だからこそ安心感がすごくあるし、枠を決めてあとはお任せでも大丈夫だったり。本来、音楽プロデューサーの仕事ってそれでいいんじゃないかな、という気もしています。細かくやりすぎることでその人の可能性を潰しちゃうこともありますから。

山内:僕は「脆さと狂気」が神前さんの元々の魅力だと思っているんですが、そこに色んなキャリアが積み重なって、良い意味で俗っぽい感じが増幅されたことと、音楽的教養をもう一度学んで身につけてきたことで、何倍にも層が厚くなっているなという気はします。『化物語』の歌と劇伴を聴いたときに「一人の作家からこれだけのものが生まれるのか」という驚きしかなかったんですけど、さらに進化を遂げられたのではないかと。だからこそ、今作で神前さんの原点にいる斎藤さんと一緒にやれたことが意味のあることだと思いますし、何より嬉しいんですよね。

(取材・文=中村拓海/撮影=はぎひさこ)

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・【前編】神前 暁が斎藤滋&山内真治と振り返る、『ハルヒ』『らき☆すた』『〈物語〉シリーズ』の音楽

■リリース情報
『神前 暁 20th Anniversary Selected Works “DAWN”』
2020年3月18日(水)発売
完全生産限定盤:7,000円+税(ディスク5枚、歌唱DISC3枚+劇伴DISC2枚)
通常盤:3,900円+税(ディスク3枚、歌唱のみ)

<限定盤BOX仕様>
○三方背BOX
○CD 5枚組
○特製ブックレット:約70ページ(仮)
○ブックレット(歌詞掲載ほか)

<通常盤>
○マルチケース
○ブックレット(歌詞掲載ほか)

<収録予定楽曲>
※作品名50音順
※収録予定楽曲のため、 今後内容が変更になる可能性あり
【歌唱DISC】
・アラタなるセカイ / 河野マリナ 『アラタなるセカイ』
・Morning Arch / 河野マリナ『Aチャンネル』
・ハミングガール / るん(CV:福原香織)、 トオル(CV:悠木 碧)、 ナギ(CV:内山夕実)、 ユー子(CV:寿美菜子)  『Aチャンネル』
・もうそう♥えくすぷれす / 千石撫子(CV:花澤香菜) 『囮物語』
・ただいま。 / 高坂桐乃(CV:竹達彩奈) 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・めてお☆いんぱくと / メルル(CV:田村ゆかり)『 俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・terminal terminaⅼ / 八九寺真宵(CV:加藤英美里) 『終物語』
・dreamy date drive / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和)  『終物語』
・happy bite / 八九寺真宵(CV:加藤英美里) 『傾物語』
・motto☆派手にね! / 戸松 遥 『かんなぎ』
・最後のラブレター / ナギ(CV:戸松 遥) 『かんなぎ』
・étoile et toi [édition le blanc] / Clementine & Ainhoa 『傷物語 〈III冷血篇〉』
・夢幻の華 / 夢塔ハナ(CV:茅野愛衣)  『キャプテン・アース』
・木枯らしセンティメント / “戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和)、 貝木泥舟(CV:三木眞一郎) “『恋物語』
・お後がよろしくって…よ! /”極 落女会 蕪羅亭魔梨威(CV:佐倉綾音)、 波浪浮亭木胡桃(CV:小・岩井ことり)、 防波亭手寅(CV:山本希望)、 空琉美遊亭丸京(CV:南條愛乃)、 暗落亭苦来(CV:後藤沙緒里)” 『じょしらく』
・God knows… / 涼宮ハルヒ(CV:平野 綾) 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・Lost my music / 涼宮ハルヒ(CV:平野 綾)  『涼宮ハルヒの憂鬱』
・Super Driver / 平野 綾  『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・モノクローム ~ version de l’apprivoiser / 気多の巫女(CV:戸松 遥) 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・光のオクターブ / アゲマキ・ワコ(CV:早見沙織) 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・セキレイ /”結(CV:早見沙織)、 月海(CV:井上麻里奈)、 草野(CV:花澤香菜)、 松(CV:遠藤 綾)”『セキレイ』
・雨上がりのミライ / “シャーロック・シェリンフォード(CV:三森すずこ)、 譲崎ネロ(CV:徳井青空)、 エルキュール・バートン(CV:佐々木未来)、 コーデリア・グラウカ(CV:橘田いずみ)” 『探偵オペラ ミルキィホームズ』
・たからもの / 河野マリナ『夏目友人帳』
・七つの海よりキミの海 / 上坂すみれ 『波打ち際のむろみさん』
・二言目 / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和) 『偽物語』
・marshmallow justice / 阿良々木火憐(CV:喜多村英梨) 『偽物語』
・白金ディスコ / 阿良々木月火(CV:井口裕香) 『偽物語』
・perfect slumbers / 羽川 翼(CV:堀江由衣) 『猫物語(黒)』
・happy endings / 花澤香菜 (花澤香菜/絶園のテンペスト)
・staple stable / 戦場ヶ原ひたぎ(CV:斎藤千和) 『化物語』
・帰り道 / 八九寺真宵(CV:加藤英美里)  『化物語』
・ambivalent world /神原駿河(CV:沢城みゆき) 『化物語』
・恋愛サーキュレーション /千石撫子(CV:花澤香菜) 『化物語』
・sugar sweet nightmare /羽川 翼(CV:堀江由衣) 『化物語』
・chocolate insomnia / 羽川 翼(CV:堀江由衣) 『猫物語(白)』
・もってけ!セーラーふく / “泉こなた(CV:平野 綾)、 柊かがみ(CV:加藤英美里)、 柊つかさ(CV:福原香織)、 高良みゆき(CV:遠藤 綾)” 『らき☆すた』
・幸せ願う彼方から / 泉かなた(CV:島本須美) 『らき☆すた』
・SOMEONE ELSE / “種島ぽぷら(CV:阿澄佳奈)、 伊波まひる(CV:藤田 咲)、 轟 八千代(CV:喜多村英梨) “『WORKING!!』
・ハートのエッジに挑もう Go to Heart Edge / “小鳥遊宗太(CV:福山 潤)、 佐藤 潤(CV:小野大輔)、 相馬博臣(CV:神谷浩史) ” 『WORKING!!』
ほか

【劇伴Disc】 (完全生産限定盤のみ)
・クチナワ『囮物語』
・竜頭蛇尾『囮物語』
・気まぐれ『鬼物語』
・昔語り 『鬼物語』
・俺の妹が(ry『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・兄貴の日常『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・\(^o^)/『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・アキハバラマーチ 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・くぁwせdrftgyふじこlp 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
・まがいものそのものの女 『傾物語』
・はじまり 『かんなぎ』
・おほほほ 『かんなぎ』
・こうりん 『かんなぎ』
・かみのき『かんなぎ』
・こもれび 『かんなぎ』
・血 『傷物語 〈I鉄血篇〉』
・鉄血篇 エンドロール『傷物語 〈I鉄血篇〉』
・おっぱい 『傷物語 〈III冷血篇〉』
・地獄の沙汰も金次第 『恋物語』
・いつもの風景から始まる物語 『涼宮ハルヒの消失』
・SOS団再び 『涼宮ハルヒの消失』
・あの日の記憶を追いかけて 『涼宮ハルヒの消失』
・ある雨の日 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・いつもの風景 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・おいおい 『涼宮ハルヒの憂鬱』
・好調好調『涼宮ハルヒの憂鬱』
・悲劇のヒロイン『涼宮ハルヒの憂鬱』
・着ぐるみカエル隊 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・白線マーチ 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・活動開始『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・おふざけマーチ 『涼宮ハルヒの憂鬱 2期』
・絢爛 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・楽園 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・運命 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・銀河美少年 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
・偽物 『偽物語』
・怪異の王 『偽物語』
・絆 『偽物語』
・恋 『猫物語』
・私の物語 『猫物語』
・真実からは程遠い存在 『猫物語』
・序章 『化物語』
・街談巷説 『化物語』
・神域 『化物語』
・以下、 回想 『化物語』
・戯言 『化物語』
・天輪聖王 『Fate/EXTRA Last Encore』
・フンフンフン♪だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・らっきー☆ちゃんねるのテーマ 『らき☆すた』
・ランランラン♪だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・次回予告だよ、 らき☆すた 『らき☆すた』
・かなたのテーマ 『らき☆すた』
・はじまり 『私の優しくない先輩』
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