サンダーロード
20/6/21(日)
サンダーロード
ブルース・スプリングスティーンの名曲『涙のサンダーロード』から題名がつけられたこの米インディペンデント映画はコメディだが、からっと陽気なアメリカンコメディではない。深刻で憂鬱なトラジコメディ(悲喜劇)だ。
まず12分ワンカットのファーストシーンがすごい。主人公の警官ジムが、母親の葬儀が行われている教会で弔辞を読んでいる最中、ガチガチに緊張して無残な醜態をさらけ出す。このあまりの痛々しさに笑いさえも凍りつく冒頭のその後も、生真面目で不器用すぎる性格ゆえに、公私共に空回りを連発するジムの悪夢のような日々が描かれていく。
そんなダメ男がいかにして絶望のどん底から這い上がり、人生の心のよりどころたる“愛”をたぐり寄せるのか。終盤、実は本作がこのうえなく切実な親子のラブストーリーなのだと気づいた観客は、筆者と同じように不意を打たれ、胸を熱くせずにいられないだろう。
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