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『鬼滅の刃』はあと何年楽しめる? 今後のアニメ展開に寄せる期待

リアルサウンド

20/12/6(日) 6:00

 11月30日に興行収入275億円を突破したことで『タイタニック』の262億円を抜き、歴代興行収入2位となった『劇場版 「鬼滅の刃」無限列車編』(以下、『無限列車編』)。歴代興行収入1位となった『千と千尋神隠し』の308億円を今年中に抜くのではと注目が集まっている本作だが、それだけに気になるのが、今後のアニメの展開だ。

※本記事には原作のストーリーに関わるネタバレが一部含まれます。

 吾峠呼世晴が手掛ける『鬼滅の刃』は、すでに週刊少年ジャンプでの連載は終了しており、単行本の最終巻となる第23巻も12月4日に発売された。大正時代を舞台にした本作は、家族を鬼に殺された竃門炭治郎が、鬼となってしまった妹の禰豆子を人間に戻すために、鬼殺隊の剣士として鬼と戦う物語だ。

 昨年、ufotableが制作したアニメが高く評価されたことで、大ブレイクを果たした『鬼滅の刃』だが、テレビアニメ化されたのは単行本の1~7巻(1~53話)まで。そして映画化された『無限列車編』は、7巻から8巻前半(54~66話)までを原作としており、今後アニメ化されるとすれば、8巻後半から23巻までということになる。

 ちなみに各エピソードをコミックスの巻数ごとに分類すると、

コミックス/アニメ(1話23分40秒で計算)

「鬼滅隊入隊編」1~2巻(1~9話)/1~5話(118分20秒)
「浅草編」2~3巻(10~19話)/6~10話(118分20秒)
「鼓屋敷編」3~4巻(20~27話)/11~14話(94分40秒)
「那田蜘蛛山編」4~6巻(28~44話)/15~21話(165分40秒)
「蝶屋敷編」6~7巻(45~53話)/22~26話(118分20秒)
「無限列車編」7~8巻(54~66話)/劇場映画(117分)

となる。

 そして今後展開されるエピソードは以下の通り。

「無限列車編後日談」8巻(67~70話)
「吉原遊郭編」9~11巻(71~97話)
「刀鍛冶の里編」12~15巻(98~129話)
「柱稽古編」15~16巻(130~139話)
「無限城編」16~23巻(140~205話)

 流れで考えるならば、次に放送されるだろうシーズン2は「吉原遊廓編」を中心に描くことになるが、このエピソードだけでは、1クールだと長過ぎるし2クールだと短すぎる。かといって「刀鍛冶の里編」まで描くと、2クールでは足りない。

 アニメ版『鬼滅の刃』は原作に忠実で、一つ一つのエピソードを丁寧に見せることはあっても、話を省略したり、余計な水増しをする場面はほとんどない。原作漫画の世界をとても大事に作っていることが、アニメ版『鬼滅の刃』の最大の成功理由であり、その方針はおそらく最後まで貫徹されるだろう。

 映画関係者がもっとも期待しているのは、次の劇場映画だと思うのだが、今回の『無限列車編』がうまくハマったのは、物語のサイズが、映画一本の尺に丁度よかったからだ。対して、『吉原遊郭編』や『鍛冶の里編』はエピソードの長さは単行本で3~4巻。アニメ版でいうと『那田蜘蛛山』の尺を大きくオーバーしているため、映画化するには長過ぎる。もちろん『鬼滅の刃』の人気なら、前編・後編といった二部構成でも観動員は見込めると思うのだが、完成度を第一に考えているufotableや集英社の意向を考えると、作品の世界を捻じ曲げてまで、無理やりアニメ化することは、現時点では考えられない。

 おそらく、今後、劇場アニメの展開があるとすれば、古くは『機動戦士ガンダム』の劇場版3部作のようなテレビシリーズを再編集した総集編的なものか、漫画『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎が製作総指揮として深く関わった『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』等の劇場映画のように、吾峠呼世晴本人が監修するような形でオリジナルエピソードの新作映画を作るといった方向性は考えられる。

 これはテレビアニメも同様で、もしも、オリジナルエピソードが追加されるのであれば、作者自身が原作漫画を補足する形で、脚本等に参加するのではないかと思う。たとえば、『無限列車編』終了から『吉原遊廓編』スタートまで、劇中では4カ月の時間が流れている。その間、炭治郎たちが鍛錬を繰り返しながら、鬼と戦い、単独の任務もあったことが、ナレーションで語られるのだが、この省略された時間軸にオリジナルエピソードを加えることは可能だろう。 

 鬼殺隊の日常生活や、本編ではあまりうまく活かせなかった鬼殺隊の階級制度に絡んだ物語も、新たに描くことができる。同時に、ノベライズや、煉獄杏寿郎や富岡義勇といった柱(鬼殺隊最高位の剣士)の外伝漫画も刊行されているため、アニメシリーズの中に盛り込むことは可能だろう。

 また、コミックスでは、終盤になるほど、作者が漫画本編で描けなかったエピソードを補足する解説文が増えている。そういった外伝的なエピソードをうまく盛り込めば、「吉原遊郭編」をクライマックスとするシーズン2と、「鍛冶の里編」と「柱修行編」を描くシーズン3、そしてシーズン4となる「夢幻城編」という流れが作れるのではないかと思う。

 2年ごとに1シーズンと考えると「無限城編」が終わるのは、2027年ぐらいだろうか。少なくとも、あと6年は楽しめそうだ。

※禰豆子の「禰」は「ネ」に「爾」が正式表記。
※煉獄杏寿郎の「煉」は「火」に「東」が正式表記。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
全国公開中
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔
原作:吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com
公式Twitter:@kimetsu_off

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