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『けいおん!』、LiSA、ももいろクローバーZ……Tom-H@ckが引き出すアーティストらの新たな個性

リアルサウンド

20/7/22(水) 6:00

 8月19日にリリースされるニノミヤユイの1stシングルの表題曲「つらぬいて憂鬱」。セリフ調の独特なメロディと超キャッチーなサビメロ、ド派手なサウンドの同楽曲が話題となっている。そして、この楽曲の作曲・編曲に名を連ねているのがTom-H@ckだ。

 Tom-H@ckといえば、キャラクターソングとしてオリコン史上初めて1位を獲得した、放課後ティータイムの「GO! GO! MANIAC」の作曲・編曲でも知られ、ほかにもLiSAやでんぱ組.inc、声優の富田美憂などの楽曲にも携わっている。ここでは、OxTやMYTH & ROIDといった自身が参加するプロジェクトとも違った、大胆なアイデアとセンスから縦横無尽に繰り出される、作曲家=Tom-H@ckとしての楽曲の魅力を紐解いてみたい。

(関連:アニメ『けいおん!』が与えた影響とは何だったのか 放送10周年を機に改めて考察

■キャラクター性とのベストマッチを導き出した「GO! GO! MANIAC」

 Tom-H@ckは、2009年のアニメ『けいおん!』オープニングテーマ曲「Cagayake!GIRLS」で作曲家としてデビュー。同曲はいわゆるキャラソン然としたワチャワチャとした明るい雰囲気もありつつ、間奏では各パートのソロ回しがあるなどテクニック満載のバンドサウンドで、そこからはロックバンドへの確かな愛を感じさせた。

 翌年に大ヒットした「GO! GO! MANIAC」は、跳ねたリズムと早口のメロディに加えてキメが多く、目まぐるしく展開が変わるなど「Cagayake!GIRLS」から難易度がさらにアップした。主人公の平沢唯役としてメインボーカルを務めた豊崎愛生は、ソロではゆったりとした楽曲を歌うことが多いが、「GO! GO! MANIAC」などでは早口で一生懸命歌う雰囲気が平沢唯のキャラクター性とベストマッチし、ソロやスフィアでの活動とは違う、新たな豊崎の魅力が引き出されていた。

 以降、Tom-H@ckは『けいおん!』シリーズをはじめ、『僕は友達が少ない』や『ヤマノススメ』シリーズなど数多くのキャラクターソングを手がけるほか、声優やアイドルへの楽曲提供も精力的におこなってきた。一方で、自身がメンバーとして参加するプロジェクトの活動でも、その楽曲のクオリティが高く評価されている。

 アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』『幼女戦記』などのテーマソングで知られるMYTH & ROIDでは、神秘的で緩急のあるメロディが秀逸な「Paradisus-Paradoxum」を筆頭に、アンセム感満載のラウドロックナンバー「TIT FOR TAT」など、デジタル&クールな楽曲テイストを真骨頂としている。

 また、アニメ『ダイヤのA』や『オーバーロード』シリーズのテーマソングなどを手がける、オーイシマサヨシとのユニット=OxTでは、オペラ調でハードなデジタルロックの「Clattanoia」から、スケールの大きなロックバラード「ゴールデンアフタースクール」まで、オーイシの卓越した歌唱力との化学反応によって生まれる、幅広い音楽性で人気だ。

 子どものころはX JAPANのファンで、海外のラウドロック系のバンドとゲーム音楽から影響を受け、ギタリストとしてロサンゼルスに留学。AKB48などのアイドルから『けいおん!』シリーズ、『冴えない彼女の育て方♭』など多くのアニメ音楽を手がける作編曲家の百石元に師事した経験を持つTom-H@ck。多彩な経験と学びをしっかりと糧にしていることが、これまでの活動から伺える。

■新たな個性を引き出すTom-H@ckの手腕

 Tom-H@ckは、OxTとMYTH & ROIDには明確な個性があるのに対して、楽曲提供においては実に変幻自在だ。経験を重ねることで求められるものに120%で応えながら、ボーカルの魅力を何倍にも増幅させる、作編曲術を身につけている。

 たとえば、「紅蓮華」がロングヒットを続けているLiSAが2015年にリリースしたシングル『Rally Go Round』に収録された「Wake up! Sloth」では、LiSAが作詞を、Tom-H@ckが作曲・編曲を手がけている。ヘヴィロックな序盤から一転、サビではポップに展開し、まるで他人の噂話が聞こえてくるような雰囲気で言葉をまくしたてるパートがあるなど、アイデア満載の構成が実に楽しい楽曲だ。当時のライブでも盛り上がりの鉄板曲として人気を博した。

 でんぱ組.incが2016年にリリースしたアルバム『GOGO DEMPA』に収録の「破!to the Future」では作曲を担当。同曲は、でんぱ組.incというグループの持つキャラクター性がいかんなく発揮された曲として知られており、高速のBPMで繰り広げられるめくるめく展開と、どこへ向かって行くのか分からないワチャワチャ感が、でんぱ組.incの魅力をさらに輝かせている。

 2016年のももいろクローバーZのアルバム『白金の夜明け』に収録された、前山田健一の作詞・作曲による「愛を継ぐもの」では編曲を手がけ、アイドルシーンとアニソンシーンを牽引する両巨頭のタッグに注目が集まった。ストリングスを前面に押し出した壮大さと、次々と変化するビート、高揚感が増していくサビへの展開など、従来の枠を超えた、あらたなアイドルポップスの金字塔と呼べる楽曲になった。

 さらに、今年6月にリリースされた、声優・富田美優の2ndシングル『翼と告白』に収録の「砂の世界」を作曲。作詞はMYTH & ROIDのhotaruが手がけ、編曲をZAQとRINZOが手がけるという超強力なナンバー。エレクトリックなサウンドで、どこか神秘的で和のムードも漂う。富田の憂いを感じさせる歌声の特性を、十二分に引き出した楽曲だ。

 そして、今年1月にアルバム『愛とか感情』でアーティストデビューを果たしたニノミヤユイが、8月19日にリリースする1stシングル表題曲「つらぬいて憂鬱」でも、Tom-H@ckが作曲・編曲を手がけている(編曲はKanadeYUKとの共作)。ニノミヤはアニメ『アイカツフレンズ!』で日向エマなどを演じる、声優・二ノ宮ゆいのアーティスト名義。明るく活発なイメージのエマ役とは一転、アルバムでは、胸の奥底の感情を激しく吐露するような「私だけの革命」や、傷つきながらも前に進む切なさを歌ったバラード「光なくても」など彼女自身の作詞曲も収録され、まだ十代である彼女の青く激しい感情が、卓越した歌唱力と共に表現されていた。

 「つらぬいて憂鬱」は、打ち込み、スクラッチ音、パーカッション、ブラス、ピアノなど、さまざまな音がスピーディーに入り乱れる、トリッキーかつ緻密なサウンドメイクが実に彼らしい。まるで独り言をつぶやくような歌からのシャウト、耳に残るキャッチーなサビメロなど、どこを切ってもTom-H@ckの大胆不敵な笑みが顔を覗かせている。同曲はニノミヤ自身が声優として出演するTVアニメ『ピーター・グリルと賢者の時間』のOP主題歌でもあり、アーティスト=ニノミヤユイの感性に、声優としての表現力が上乗せされたように感じるナンバーだ。これは、声優・アニソン・アイドルと、多彩な経験を持つTom-H@ckだからこそ引き出すことができたものだろう。(榑林史章)

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