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メトロノームが語る、“再起動”を経た21年目への自信「僕らが一緒にいることは初めから決まってたこと」

リアルサウンド

19/12/10(火) 20:00

 メトロノームが、11月20日にニューアルバム『確率論≠paradox』をリリースした。メトロノームは、1998年に結成。2009年から7年間の活動休止期間を経て、「第10期メトロノーム」の開始を発表し、9月21日にシングル『解離性同一人物』でメジャーデビューを果たした。そしてバンドは今年、活動21年目を迎えた。今回のインタビューでは、活動休止中に変化したバンド内の関係性や、そこから生まれる楽曲、そして今作について語ってもらった。(編集部)

どんな曲であってもこの3人でやればメトロノームになる 

ーーバンドを再起動させてから約3年、今年で活動21年目を迎えたメトロノーム。現在のバンドの状況はいかがですか?

フクスケ

フクスケ(TALBO-1):以前は3人ともあくまでバンドメンバーとして接していた部分が大きかったような気がするんですけど、再起動してからは飲み友達くらいの接し方になっているところがあって。より距離感の近い、砕けた関係になっていると思うんですよね。だからこそ、手を抜いているとかそういったことではなく、いい意味で軽い気持ちでメトロノームに向き合えているところもありますね。すごくいい雰囲気の中、いい活動ができているんじゃないかな。

ーーそういった変化に何か理由はあるんですか?

フクスケ:休んでいた7年分、僕らも大人になりましたからね(笑)。そういう部分が一番大きいような気はします。あとは、活動している間には見えなかったことが休んでいたときにちょっと外側から見えたりもしたので、気持ち的に楽にやれるようになったところもあるかもしれないです。

リウ(TALBO-2):活動休止してる間は次にまたメトロノームをやるかどうかなんてまったく決まっていなかったので、ミュージシャンとして新たな基盤を作るべく活動していたわけです。で、その基盤がしっかりできた上でメトロノームを再起動することができたので、感覚的にちょっと余裕があるんだと思うんですよね。その結果、各メンバーに対してまかせるところはちゃんとまかせられる、しっかり頼れるようになったっていう。いい意味で、いろんなことを分担してやれているからこそ、今までよりもラフな関係でいられるんじゃないですかね。

フクスケ:再起動してからは、なんでもとりあえず3分の1でやることにしてますからね。誰かの負担を大きくすることなく、3人が平等に曲を作り、平等な数だけ採用していこうと。それによって三者三様の色がしっかり見えて、アルバムとしていいものになるってことは『CONTINUE』(2017年リリースの再起動後一発目のアルバム)を作った時点でよくわかったので、以降もそのスタンスは貫いてます。

ーー各自がソングライティングをする際、メトロノームの楽曲として意識するところって何かありますか?

フクスケ:僕はそんなに気にしてないですね。前からそうなんですけど、一番好きなように作れるのがメトロノームなので、もう自由にやらせてもらってます。

リウ:僕も自分の好みのド真ん中のことをやらせてもらえているのがメトロノームだと思っていて。ここでやりたいことをやり切っているので、他では逆に何か違うことをやってみようかなっていうニュアンスだったりはします。

ーーご自身の趣味嗜好をダイレクトにぶつけられるのがメトロノームだと。シャラクさんはいかがですか?

シャラク(VOICECODER):僕ははっきりと使い分けて作ってる感じですね。メトロノームの曲はメトロノームのために作っているから、選考に漏れたとしても他の活動ではちょっと使えない、みたいな作り方をしてます。

フクスケ:まあでも、最近はどんな曲であってもこの3人でやればメトロノームになるっていう確信があったりするんですよ。だからこそ各々が自分なりの作り方をして、バラバラな楽曲を持ち寄ったとしても、最終的にはしっかりひとつにまとまるっていう。以前はもうちょっとメトロノームを意識して、そこに寄せた曲を作っていたような気がするけど、今は本当に自由。そういう部分がさっき言ったメンバー間の関係性にも繋がっているんだと思いますけどね。

リウ

リウ:うん。再起動に関しては僕が声をかけたことがきっかけにはなっているんですけど、その段階ではこんなにいい状況でまたバンドができるなんて想像してなかったんですよ。メイクするかしないかとか何も決めず、単純に「また3人でやろうか」くらいなノリだったから。でも、再起動一発目のZepp TokyoでのライブとキングレコードさんからCDを出させていただくようになってから、徐々に今のメトロノームの雰囲気が見えてきた感じなんですよね。

ーー再起動後、音楽シーンの中での居心地はいかがでしょう? 活動休止前と比べると、ジャンルのクロスオーバー化が進んだようにも感じるのですが。

フクスケ:実際のところ、「僕たちどこのシーンにいるんだろう?」ってくらい自分たちの立ち位置がわかってないんですよ(笑)。うちはうちでしかないみたいな感じなので。バンド自体は気持ちよくできているから、対バンをやったりイベントに出たりすれば、いい刺激をもらえて楽しいんですけど……シーンっていうのはよくわからないんですよね。

ーー当初のメトロノームはヴィジュアル系のシーンにくくられがちでしたけど、今やもうそんなくくりも必要ないような気がしていて。そういう部分での動きやすさがあるんじゃないかなと思ったんですよね。

フクスケ:そこに関しては僕らもいろんなバンドさんと対バンしていくことを理想にはしているんですよ。他のジャンルで好きなバンドさんとご一緒してみたいなっていう。とはいえ、実際はヴィジュアル系の枠に入りがちで、メイクしてないバンドさんと一緒にやることがほぼほぼない状況なので、まだちょっと上手くいってない感じではあるかな。

リウ:もどかしさは確かにありますよね。でも、居心地で言ったら、昔よりはかなり良くなってるとは思います。だってね、昔はどこのシーンにも入れない感じだったのに、今では「いろんなバンドとやってみれば?」って言われることが多かったりもするので。

ーー先ほど、再起動のタイミングではメイクするかしないかも決めていなかったという発言がありました。ということはまったく新しいスタイルでリスタートすることもできたわけですよね。

リウ:そうですね。活休してた7年間、シャラクくんはヴィジュアル系とは違ったジャンルで活動していたりもしたので、メトロノーム再起動にあたっては「どっちでも大丈夫だよ」っていう感じではありました。

ーーそこでメイクをしないという選択をしなかったところにメトロノームの強いアイデンティティを感じますよね。今まで愛されてきたスタイルでまた闘っていこうという。

シャラク

シャラク:そうですね。再起動一発目のライブで化粧をしてなかったら、きっとみんながっかりするだろうなと思って。昔から応援してくれている人たちも納得するような出方はしないといけないって思ってましたね。今も化粧を落としたい気持ちはまったくないですし。このスタイルは貫いていくべきだと思うので。

ーーしかも、揺るぎないスタイルはありつつも、その音楽性はより自由に、より幅広くなっていますからね。そこが今のメトロノームのおもしろいところだし、他ジャンルへと攻めていける大きなポイントにもなっているなと。

フクスケ:そうですね。最近はほんとにみんな自由に曲を作ってますからね。そこに昔のメトロノームを再現しようなんていう感覚は一切ない。今回のアルバムは特にそうだけど、今までになかったような雰囲気の曲も入れることができたし、しっかり次に繋がるチャレンジができているんじゃないかなと思います。

20年もひとつのバンドとして存在できる確率はそうとう低い 

ーー最新作『確率論≠paradox』は本当にメトロノームの新たな可能性がたっぷり詰まった作品だと思います。制作はどのように進んでいったんですか?

フクスケ:3人で持ち寄った楽曲の中からまずメイン曲を決めて、後は各々の楽曲から入れたいものを自己申告していく流れですね。制作の途中で全体を見ながら差し替える場合もあったりはしますけど。

ーー基本の持ち枠は3曲とのことですが、各自それ以上の楽曲を持ち寄るんですか?

フクスケ:リウは立派な大人なので多めに持ってきますね。で、僕とシャラクの同級生チームはちょっと少なめなタイプ。たまに3曲に到達しないときもあるんですけど(笑)、今回はどうだったかな?

リウ:シャラクくんは5曲、フクスケくんも4曲あったから、いちおうノルマはクリアしてたよね(笑)。ちなみに僕は6曲出しました。

フクスケ:リウは作ってくる数も多いし、それぞれのデモをガッツリ仕上げてくるからえらいんですよ。シャラクにいたっては、たまに「これ鼻歌か?」みたいな状態のときもあるんで(笑)。

シャラク:ドラムとベースのルートだけ入れて、あとは「♪ナナナナ~」みたいなことがありますね。それがなぜか採用されることもあるんですけど(笑)。

フクスケ:シャラクは昔からそういうデモをよく作ってくるんですけど、シャラクが作ったならなんとかなるだろうみたいなところがあるからね。僕の場合は作りこむものと作りこまないものの差が激しいんで、リウとシャラクの中間くらいだと思います(笑)。

ーー今回収録されているご自身の楽曲に対しては、どんな傾向があると思いますか?

リウ:アルバムの制作前に、マスタリングエンジニアさんやキングの担当の方たちと“サビの抜け感”について話す機会があって。それを忘れないようにメモしておいたんですよ。なので今回は“サビの抜け感”を第一に考えてひたすら曲を書いたので、いつもよりもポップというか、歌がスッと入ってくる曲になっているような気がしますね。

ーー「憂国の空」はすごくいい曲ですよね。

リウ:ありがとうございます。今回作った6曲は全部ジャンル的に違ったもので、どれも自信作ではあったんですけど、この「憂国の空」はちょっとメロディアスすぎるからうまくまとまるかなっていう若干の不安もあって。でもシャラクくんの歌に絶対合うと思ったし、オートチューンがかかることでサビがすごくきれいになるだろうなっていうイメージは明確にあったんです。結果、すごくいい仕上がりになったので良かったですね。

フクスケ:僕は今回の曲で言うと、「脳内消去」に尽きる感じですね。今回のアルバムを作るにあたって、衣装をちょっとスタイリッシュにしたりとか、おしゃれテクノっぽい曲を入れたいなっていうイメージを提案したんですけど、実際そういう曲を自分ではなかなか作ることができなくって。で、制作期間のギリギリ最後にできたのが「脳内消去」だったんです。「あー、やっとできた!」っていう気持ちでしたね。

ーーせつない恋心を描いた歌詞もいい雰囲気です。

フクスケ:今回、僕が作った曲には「脳内消去」と「忘れん坊」っていう“忘れる”曲がふたつあって(笑)。「忘れん坊」は勝手に忘れていく曲なんですけど、「脳内消去」は自分から忘れていく曲なのでちょっとせつないっていう。個人的な趣味としては「忘れん坊」のようなちょっとふざけた歌詞が好きなんですけど、作詞をしていて楽しいのは「脳内消去」のようなタイプではありますね。

ーーシャラクさんはどうですか?

シャラク:再起動してから前作の『廿奇譚AHEAD』までは、みんなが思うメトロノームらしさを意識していたんですけど、去年の暮れあたりから「自分がただただやりたいことをやってもいいんじゃないかな」と思うようになって。そこでできたのが「Catch me if you can?」と「テンションゲーム」だったんです。だから、この2曲に関してはメトロノームらしさというよりは、いちロックバンドみたいな感覚で、バンドキッズがコピーしたら楽しいような曲になったと思います。で、さっき話に出た、「よくこんなデモを出したな」っていう状態だったのが11曲目の「まだ見ぬ世界」で。

ーーこれが鼻歌デモだったんですね。仕上がりはものすごくキラキラした雰囲気で、アルバムのエンディングにふさわしい1曲になっていると思います。

シャラク:はい。デモの段階でなんとくこんな曲になりますっていう説明はしたんですけど、結果的にはまったく違った感じで完成しました(笑)。

フクスケ:かなり変わったよね。この曲はギターが入ってないので、リウがミックスし終えた段階で初めて聴いたんですけど、「あれ、こんな曲あったっけ?」って思いましたから(笑)。

リウ:あははは。

シャラク:デモのAメロでは「ヴォーヴォー」みたいな感じでガナって歌ってますアピールをしていたんですけど、全然普通にメロディに変わってましたね(笑)。

ーー牧歌的な雰囲気の「そうだ手紙を書こう」も僕はすごく好きで。「みんなのうた」で使われてもおかしくない雰囲気だから、ぜひ子供にもおすすめしたい。

シャラク:元々、別の曲をアルバムに入れる予定だったんですけど、急にこの曲がパッとできて。自分的に「こっちのほうがいいな」と思ったので変えさせてもらいました。これはとにかくシンプルなサウンドで、明るいんだけどちょっとせつない感じが出せたらいいなと。最近、メトロノーム以外の活動の中で、大先輩と弾き語りでライブをする機会がけっこう多いんですよ。そういった経験を通して、ギターと歌だけで成り立つような曲を作れる人になりたいなって思ったのが、これを作ったきっかけではありますね。

ーーまた、リウさん作曲、シャラクさん作詞による「とある事象」が本作のリード曲になっています。先行シングルだった「Catch me if you can?」とは違ったタイプの曲をリードにすることで、今のメトロノームの懐の深さが伝わってくるなと。

フクスケ:どれをリードにするかは基本的に多数決なんですけど……。

リウ:自分の曲ながら、マニアックな曲が選ばれたなと思いました(笑)。まあでもシャラクくんの歌詞が乗ることですごくいい雰囲気にもなったし、MVになって映像で見るとすごく映えるので、選ばれて良かったですね。

メトロノーム/「とある事象」Music Video(full version)

ーーではアルバムタイトルに込めた思いも教えてください。

フクスケ:去年20周年を迎えたときに思ったんですよ。これだけ地球上に人間がいる中で、20年もひとつのバンドとして存在できる確率はそうとう低いことなんだろうなって。その奇跡みたいなことに僕はすごく感動したんです。でも、21年目からもっと勢いを増して進んでいくには、その20年が確率ではなく初めから決まっていたことなんだって思ったほうがいいよなって気づいて。メンバーも、お客さんたちも、僕らが一緒にいることは初めから決まってたことなんだよっていう、そんな可能性を信じて「確率論≠paradox」というタイトルに決めました。

ーーそんな思いを込めて作り上げた本作を引っ提げたツアー『醍醐味カルチベート』も間もなくスタートしますね。

フクスケ:“カルチベート”には“耕す”とか“才能を高めていく”みたいな意味があるので、このツアーを通してメンバーそれぞれの色や、メトロノームの持つ醍醐味をしっかり育てていけたらいいなと思っています。

シャラク:僕らにとって21年目っていうのはすごく大事な時期だと思うんです。なので、その締めくくりとなるツアーは絶対いいものにしようと思ってます。空気が乾燥するこの時期、僕はすぐ喉をやられてしまうので、そこに気をつけながら頑張ります。

リウ:激しいとか勢いがあるとかそういう部分だけじゃなく、ライブ映えする、画が見えるアルバムを作ることができたので、それをライブという場でもしっかり表現できたらなと。VJさんの力を借りつつ、最高のショーをお見せしたいと思います。

ーー20年を超えるキャリアを持ちつつも、今のメトロノームには新人バンドのような痛快な勢いがあるように思います。これからの活動も楽しみにしていますね。

フクスケ:活動休止していた7年間でやれることも増えたし、メトロノームとしてやりたいこともまだまだありますからね。まだまだいけますよ(笑)。

(取材・文=もりひでゆき)

■リリース情報
『確率論≠paradox』
発売:2019年11月20日(水)
【初回生産限定メト箱(CD+DVD)】¥5,000(税抜)
【通常盤(CD)】¥3,000(税抜)

■ライブ情報
『冬季巡礼「醍醐味カルチベート」』
12月7日(土)umeda TRAD
12月8日(日)名古屋CLUB QUATTRO
12月14日(土)福岡DRUM Be-1
12月15日(日)広島SECOND CRUTCH
12月22日(日)川崎CLUB CITTA’

『メトロノームpresents COUNTDOWN≠paradox→2020』
12月31日(火)品川インターシティホール

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