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この星は、私の星じゃない

19/10/22(火)

『この星は、私の星じゃない』 (C)2019 パンドラ+BEARSVILLE

1970年代の初頭、日本で産声をあげた「ウーマン・リブ」を代表する女性運動家だった田中美津を描いたドキュメンタリーである。「便所からの解放」という挑発的なマニフェストを掲げて、過激な論陣を張った田中美津を、監督の吉峯美和は、たんなる伝説の運動家という特権的な被写体としてはとらえない。「田中美津は、私だ」という深いシンパシーを込めて、半世紀を経た今も変わらない彼女のゆるぎない真情の在り処を追い続けるのだ。鍼灸師として女性の心身と細やかに向き合う彼女の、身体感覚を介して紡ぎ出される自前の〈言葉〉には、後半、辺野古のゲートの前で若い機動隊員に語りかける〈言葉〉とまったく同質のしなやかさがあり、独特の説得力が感じられる。 東京・本郷で生まれ育った幼少期の回想のなかから、自らの〈女性性〉を意識せざるを得なかった〈事件〉への言及もあり、活動家・田中美津の原点がさりげなく示唆される。 老いを迎えた彼女が吐露する、70年代という時代をめぐる総括や、今という時代への違和感、異議申し立てが、声高な政治的なメッセージとは一切無縁の柔らかさをまとっていることに気づく。時代精神というものは、田中美津のような個性の中にこそ、ひっそりと息づいているのだ。

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