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『かぐや様は告らせたい』真のヒロインは藤原書記だった? 天真爛漫なトリックスターの魅力

リアルサウンド

20/7/9(木) 12:00

 両片想いの二人による「いかにして相手から告白させるか?」の頭脳戦を描いたラブコメディ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』。秀知院学園の生徒会長・白銀御行と副会長の四宮かぐやとの恋模様を中心に展開される作品だが、実は四宮かぐやはヒロインではないことをご存じだろうか。四宮と白銀はともに「主人公」と定義されており、本作のヒロインは別に存在する。それが生徒会書記・藤原千花なのである。

参考:『かぐや様は告らせたい』四宮かぐやはなぜ愛おしい? 超負けず嫌いなヒロインの本心

 藤原千花はゆるふわロングヘアに極黒のリボンがトレードマークの可愛らしい身なりの持ち主。人懐っこい性格で、藤原が生徒会メンバーに話題を振ったりゲームに誘ったりするのをきっかけに物語が始まることも多い。読者人気も高く、アニメ第1期のエンディングで放送された『チカっとチカ千花っ♡』のダンス・通称「チカダンス」でも話題になった。天真爛漫で裏表がないのが特徴だが、その無邪気さが、高度な心理戦のはずの「恋愛頭脳戦」を引っ掻き回していくことになる。

 相手が理屈で動くことを前提に戦略を立てる白銀と四宮にとって、思いつきで行動する藤原は不確定要素そのもの。恋愛映画のチケットを前に「どちらから誘うか」を水面下で争っている二人に『とっとり鳥の助』という謎のチケットを出してきて場を混乱させたり、白銀の手作り弁当を無邪気に欲しがって四宮から氷のようなまなざしを向けられたり。四宮が前々から仕込んでいた計画も白銀の張った罠も、藤原によってことごとく狂わされていく。そのトリックスターぶりに、用意周到で目的のためなら手段を選ばない四宮でさえ、“藤原さんをコントロールしようとしても無駄なんです”と諦めの境地だ。

 作中には、そんな藤原をメインとするシリーズも存在する。例えば「特訓回」は、運動音痴、歌が下手など意外と弱点が多い白銀の苦手克服のため、藤原が先生となって特訓するシリーズ。壊滅的なレベルだった白銀が猛特訓によって少しずつ上達していき、その成長ぶりに謎の母性が生まれた藤原は感動の涙を流したりする。お互いに恋愛感情がゼロだからこそ成立する、藤原と白銀の不思議な関係性が魅力の人気シリーズだ。

 ほかにも、藤原がひとりラーメンしているのをモブの客がモノローグで実況するという「超食べたい」シリーズ。外見はゆるふわな藤原が、通な食べ方でラーメンを満喫する至福の表情が、藤原ファンにはたまらないシリーズである。

 そんなふうに、一人で話を成立させられるほど安定したキャラクターを確立している藤原千花の存在は、『かぐや様』のバランサーのような役割も果たしている。

 ラブコメディとしてスタートしている『かぐや様』だが、話が進むにつれてキャラクターのバックボーンが明らかになり、それぞれが壁を乗り越えていく成長物語の側面もある。そんな中で唯一「無邪気で天真爛漫」を貫くのが藤原千花だ。物語は重厚さを増していくなかで、時にシリアスな展開を迎える。そんな時、ところどころに配置された「特訓回」や「超食べたい」シリーズでふりまかれる藤原の無邪気さが、変わらぬ癒しと安心感を与えてくれるのだ。

 ここで改めて「ヒロイン」の示す意味を考えてみる。主には「女の主人公」、そして「主人公の対になる立ち位置の女性」だろうか。『かぐや様は告らせたい』の二人の主人公、四宮かぐやと白銀御行は、物語を通して少しずつ変化していく性質のキャラクター。そんな二人に対し、「変わらぬ存在」として見守るような位置に立つ藤原千花は、確かにこの物語のゆるぎないヒロインだ。(満島エリオ)

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