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CIVILIAN、中田裕二コラボ「campanula」で見せた新機軸 柴 那典が“歌謡曲”的アプローチを考察

リアルサウンド

19/3/11(月) 18:00

 CIVILIANが新たな一歩を踏み出す。3月13日、3組のアーティストを迎えたコラボレーションEP『邂逅ノ午前零時』がリリースされる。

参考:CIVILIANが全国ツアーを通して見出したひとつの答え 『Hello,civilians.』ファイナル公演レポ

 2017年11月にメジャー1stアルバム『eve』をリリースした彼ら。3ピースのロックバンドならではの研ぎ澄まされたサウンド、ヒリヒリと胸に焼き付くようなメロディと言葉、ときに噛み付くような、ときに祈りのような表現力を見せるコヤマヒデカズ(Vo/G)のボーカルで支持を積み重ねてきた。

 アルバムをリリースした後のツアーで、コヤマは「今、やっとCIVILIANとしてのバンドの身体の中に流れてる血液が新しく循環している気がしてます」と語っていた(参考:CIVILIANが全国ツアーを通して見出したひとつの答え 『Hello,civilians.』ファイナル公演レポ)。

 おそらく、その経験を経て新たな挑戦が始まったのだろう。2018年5月には自身が主催し、中田裕二、さユり、GARNiDELiAを招いた東名阪2マンイベントツアー『CIVILIAN presents INCIDENT619』を開催。単に共演するだけでなく「招いたゲストのバックバンドをCIVILIAN自身が務める」という、それぞれ一夜限りのスペシャルユニットを結成してのステージを繰り広げてきた。

 3組のアーティストを迎えたコラボレーションEPという、今作での初めての試みも、そこからの延長線上に位置づけられるものだろう。

 収録曲のうち、リード曲「I feat. まねきケチャ」ではアイドルグループのまねきケチャを招き、先行配信リリースされた「僕ラノ承認戦争 feat. majiko」はネットカルチャー出自の女性シンガーソングライターmajikoと共作を果たしている。

 そしてもう一曲、先行配信された収録曲「campanula」では、プロデュースを中田裕二が担当している。

 前述の『INCIDENT619』にあたっても語っていたが、中田裕二がかつて所属していた椿屋四重奏は、CIVILIANに大きな影響を与えたバンドだ。コヤマはソロの弾き語りでも椿屋四重奏「紫陽花」をたびたびカバーし、共演にあたってはコヤマだけでなく純市(Ba)、有田清幸(Dr)も思い入れの深い楽曲を選ぶなど、メンバー3人にとって敬愛する存在でもある。

 そして中田裕二にとっても今回のタイミングはバンドのプロデュースをするのが初めてだという。そこで、この記事では、両者にとって“邂逅”となったこの曲の持つ意味合いについて解説していきたい。

 「campanula」は、アコースティックギターの優しいアルペジオから始まる一曲。ゆったりとしたテンポで、徐々にサビに向かっていって盛り上がっていき、〈あなただけがわたしの心そのもの〉という最後のフレーズに辿り着くという曲展開を持ったミドルバラードだ。

 Syrup16gやART-SCHOOLなど、00年代の日本のギターバンドを自身の影響元に挙げることの多いCIVILIAN、コヤマヒデカズ。椿屋四重奏もそのシーンの同世代として活動してきたバンドではあるのだが、中田裕二の特色は自身のルーツが70年代~80年代の歌謡曲にあると繰り返し語っているところにある。“艶ロック”を標榜していた椿屋四重奏時代からその音楽的素養の片鱗を見せていたが、特にソロデビュー以降はカバーアルバム『SONG COMPOSITE』や、数々のライブでその嗜好性を全面に展開させてきた。

 「campanula」も、そういう中田裕二ならではのエッセンスを感じさせる一曲になっている。挙げていくならば、まずはコヤマのボーカルの「コブシが入っている」箇所。たとえば〈汚れた身体を庇っては 綺麗でいたいと 思うのは何故〉というBメロのフレーズからサビに入る直前、「♪えぅぇ~」と伸ばすような歌い方がその一例だ。

 また、歌詞にもそのエッセンスが感じ取れる。この曲は〈これからずっとふたりで泣くでしょう 抱えきれない罪を背負って〉というフレーズが象徴するように、いわゆる許されざる“大人の恋”がモチーフになっている。

 70年代~80年代の歌謡曲の時代においては不倫や浮気なども含む大人の恋愛をテーマにしたヒット曲が多い一方、90年代以降のJ-POPにおいてはそういった題材のヒット曲はぐっと減っていく。それはカラオケが主にスナックなど酒席の場で興されるものだった70年代~80年代と、カラオケボックスと通信カラオケが普及し学生や若いOLが友達同士で楽しむようになった90年代という時代環境の差が背景にあるのだが、それはともかく。

 CIVILIANは、これまで基本的には内省的な、自己の内面を覗き込むことから生まれるような楽曲を多く作ってきた。そうした彼らにとって、今回、中田裕二をプロデューサーに迎えて“歌謡曲の系譜”を意識した楽曲制作をしたことは、一つの糧になったのではないかと思う。(柴 那典)

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