Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

大島幸久 このお芝居がよかった! myマンスリー・ベスト

2月のベストは『ヘンリー八世』、『泣くロミオと怒るジュリエット』の桐山照史に“敢闘賞”!

毎月連載

第16回

20/2/29(土)

① 『ヘンリー八世』 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(2/19)
② 『天保十二年のシェイクスピア』 日生劇場 (2/10)
③ 俳優座劇場プロデュース『彼らもまた、わが息子』 俳優座劇場(2/8)
④ KERA CROSS『グッドバイ』 シアタークリエ(2/5)
⑤ 名取事務所『鳥が鳴き止む時-占領下のラマッラ-』「劇」小劇場(2/21)

*日付は観劇日。2/1〜27 までに観た30公演から選出。

『ヘンリー八世』より、左から阿部寛 吉田鋼太郎 撮影:渡部孝弘

上演が少なかった『ヘンリー八世』は物語、主人公の骨格がシンプルでシェイクスピア作品の中でも分かりやすい歴史劇だ。演出・吉田鋼太郎の殊勲は、王を取り巻く人物を強く印象付けて、絶対王の善悪をより明確にした腕力だった。吉田自身が演じた枢機卿ウルジーの策略による権力掌握と転落、その跡に付いたウインチェスター司教の思惑違い、カンタベリー司教の復権が対比されて面白い。

最初の妻キャサリンの悲劇、続く王妃となったアン・ブリンという女性ふたりの運命の悪戯……。そして阿部寛が演じたヘンリー王の弱さや迷い、権力者としての横暴といった多面性も打ち出した。演技者ではやはり吉田の圧倒的な台詞術とコミカルな芝居。蜷川幸雄氏の遺志を真っ向から受け継いだ舞台になった。

『天保十二年のシェイクスピア』より 写真提供:東宝演劇部

井上ひさし・作『天保十二年のシェイクスピア』は実に奇抜な時代劇だ。シェイクスピアが書いた三十七戯曲を網羅して入れ込んだ喜劇。その趣向の面白さが第一。言葉の魔術を駆使した天才作者が生み出す情景には社会の底辺でうごめく庶民、悪人らがいる。人は貧しさゆえ、女ゆえ、夢を見るゆえに血と汗を流す。藤田俊太郎の演出はスピード感を持って人間の業を描いた。隊長・語り部を演じた木場勝己は最優秀助演男優賞である。

俳優座劇場プロデュース『彼らもまた、わが息子』より 撮影:飯田研紀

アーサー・ミラー作『彼らもまた、わが息子』を桐山知也が演出した物語世界は...

※続きはアプリでお読みください

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む