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息遣いまでリアル。群像劇・四谷怪談をシネマ歌舞伎で。

ぴあ

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』 (c)松竹

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歌舞伎の怪談ものといえば何といっても『東海道四谷怪談』。夫・民谷伊右衛門に見捨てられ非業の死を遂げたお岩さんが夫やその周りの人々を祟るドラマを横軸に、『仮名手本忠臣蔵』を縦軸に織り上げた人気演目だ。これを新たに串田和美による演出で、時代や社会に取り残された市井の人々の群像劇ととらえなおしたのが、2016年に上演された第十五弾渋谷コクーン歌舞伎『四谷怪談』。歌舞伎座でおなじみの『東海道四谷怪談』とはまたひと味もふた味も違う作品となっており、9月24日から公開されるNEWシネマ歌舞伎として収録されているのもこの『四谷怪談』だ。

渋谷・コクーン歌舞伎といえば記念すべき第一弾の演目が『東海道四谷怪談』。十八世中村勘三郎が中心となり客席を大いに沸かせたのが思い出される。第七弾では、南番と北番それぞれ全く切り口の異なる演出で日替わり上演された。今回収録されている第十五弾は、観る側の深層心理にまで食い込んでくるインパクトを持った北番をさらに発展させた作品で、タイトルも『東海道』が取れて『四谷怪談』。お岩さんの祟りのエピソードだけではなく、それぞれの登場人物を一人ひとり深く掘り下げ、彼ら/彼女らが江戸の町の辻々で息づいているのがリアルに伝わってくる、そんなドラマに仕立てられている。

NEWシネマ歌舞伎ではこの作品の魅力を隅から隅までたっぷりと味わえるのがうれしい。民谷伊右衛門&お岩、直助権兵衛&お袖などの主要登場人物から、彼らとすれ違う名もない人たちに至るまで、その表情や息遣いを漏らさずキャッチ。俳優たちの目線、その眼の色が変わる瞬間、総毛だつ肌、怒張する血管……そんな一瞬を逃さないカメラアングルもシネマ歌舞伎ならでは。「自分はいったいどこで道を見失ってしまったのか」という登場人物たちの心の叫びが聞こえてきそうだ。

また音楽も邦楽による下座音楽ではなく、トランペットやアコーディオンなどの音色が使われており、時に不気味なほど軽快、時に重苦しく、人々の刹那的な人生を浮かび上がらせる。そんな音楽にたっぷりと包みこまれるのもシネマ歌舞伎ならでは。彼らとともに私たち自身も、江戸の町を当てどなく彷徨っている気分になりそうだ。

歌舞伎を初めて見る人はもちろん、『東海道四谷怪談』のコアなファンの方にも、シネマ歌舞伎だからこそヴィヴィッドに伝わってくる『四谷怪談』のエネルギーを体験してほしい。

文:五十川晶子

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』

【配役】
民谷伊右衛門:中村 獅童
直助権兵衛:中村 勘九郎
お袖:中村 七之助
小仏小平:中村 橋之助
お梅:中村 鶴松
四谷左門:真那胡 敬二
仏孫兵衛:大森 博史
小汐田又之丞:首藤 康之
伊藤喜兵衛/お熊:笹野 高史
按摩宅悦:片岡 亀蔵
お岩/佐藤与茂七:中村 扇雀

上映期間:2021年9月24日(金)~2021年9月30日(木)全国の映画館にて上映

NEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』特別予告


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公式サイト
https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/35/

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