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「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズ躍進に注目 ラノベ週間ランキング

リアルサウンド

20/8/21(金) 8:00

本 ライトノベル 週間ランキング(2020年8月10日~2020年8月16日・Rakutenブックス調べ)
1位『魔法科高校の劣等生(32) サクリファイス編/卒業編(電撃文庫)』佐島勤、石田可奈 KADOKAWA
2位『わたしの幸せな結婚 四(4)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
3位『【楽天ブックス限定特典付き】誰かこの状況を説明してください! 〜契約から始まるウェディング〜 4(アリアンローズコミックス)』木野咲カズラ、徒然花 フロンティアワークス
4位『ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~(2)(メディアワークス文庫)』三上延 KADOKAWA
5位『わたしの幸せな結婚 二(2)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
6位『アクセル・ワールド25 -終焉の巨神ー(電撃文庫)』川原礫、HIMA KADOKAWA
7位『わたしの幸せな結婚 三(3)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
8位『わたしの幸せな結婚(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
9位『はたらく魔王さま!21(電撃文庫)』和ヶ原聡司、029 KADOKAWA
10位『りゅうおうのおしごと!13(GA文庫)』白鳥士郎、しらび SBクリエイティブ
ランキング:https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#!/

 Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(8月10日~17日)で1位となったのは、累計発行部数が1500万部を超えた「魔法科高校の劣等生」シリーズの最新刊で、完結編となる『魔法科高校の劣等生(32)サクリファイス編/卒業編』(電撃文庫)。一人で戦略級の魔法を繰り出す司波達也を相手に、異形の力を手に入れた九島光宜が東富士演習場で激突するクライマックスに心躍らせて、9月10日の発売を待っているファンの多さがここから分かる。

 完結編だからといって即幕引きにはならず、達也たちが魔法科高校を卒業してからの活動を描く『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー』が10月10日に発売。達也たちが抜けた後の魔法科高校が舞台となった『新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち(仮)』も書籍化が決まった。放送が延期となっていたテレビアニメの第2期『魔法科高校の劣等生 来訪者編』も10月から始まる。こうしたマルチな展開は、圧倒的な強さで敵をねじ伏せる“俺TUEEE”キャラの代表・司波達也の凄さに近づくきっかけになりそうだ。

 “俺TUEEE”といえば、発揮すれば周囲のすべてを圧倒する知性や身体能力を持ちながら、隠したままで周囲を巧みに動かし、競争をサバイバルしていく少年が主人公という、変わった設定のライトノベルがある。衣笠彰梧の作で、トモセシュンサクがイラストを描く「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズだ。週間では30位までに入っていないが、8月16日の日別では30位までに既刊のうち7冊が並ぶ人気ぶりを見せた。

 卒業時には希望する進学や就職が100%かなう名門校、高度育成高等学校に入学した綾小路清隆を主人公にしたシリーズ。1年Dクラスに配属された清隆たちに担任から、月初めに10万円相当のポイントが支給されたと告げられ、さすがは名門校と喜んだのもつかの間、1か月が経ってその間の生徒たちの浮かれた素行がチェックされ、5月の支給額はゼロだと告げられたことから、学校ではすべてが実力によって決定されていると判明する。

 試験などで好成績をとればポイントは取り戻せるが、実はDクラスは学業に限らずコミュニケーション能力が不足していたり、暴力性を持っていたりとどこか足りない生徒たちが集められた最底辺のクラス。成り上がっていくのは不可能と思われた。だが、成績優秀ながら思いやりに欠ける点があってDクラスに配属された堀北鈴音は、競争に勝ってAクラスに上がろうと必死になる。その鈴音に清隆が協力する。

 無気力な雰囲気を漂わせ、成績も運動も平均以下の目立たない清隆だったが、実はある施設で英才教育を受け、最高傑作とまで言われたスーパーエリートで、思うところがあって施設から逃げ出す形で高度育成高に進んだとき、わざと成績を抑えていた。そのままひっそり生き続けようにも、学校は激しい競争を強いてくる。清隆は、赤点をとった者が退学となる試験を乗り切るための策をめぐらせ、無人島でのサバイバルでも他のクラスが仕掛けてきた策を見抜くなどしてDクラスを支える。

 ルールの隙間を読んで絶体絶命のピンチを打破し、巧みな交渉によって協力者を増やし、敵の裏をかくような策を繰り出して勝利をつかむ清隆の知略が圧巻。それでいてトップには立たず、手柄を鈴音や櫛田桔梗といった同級生たちに回して裏方に徹する姿には、数多ある“俺TUEEE”のヒーローとは違った格好良さがある。同時に、清隆が単に親切で周囲を持ち上げているのではなく、自分のためだという不穏さもあって、司波達也のようには讃えづらい。

 籠絡でも買収でも脅迫でも、法や規律に触れなければ何でもありの競争を、高校生たちが繰り広げている様にも、なかなか不気味なものがある。ただ、社会というものを見たときに、才能だけでは乗り越えてはいけず、知力でも体力でも機転思考力でもコミュ力でも、様々な力が必要とされる。そうした力を得るにはどうすれば良いかをシミュレーションしてくれるシリーズとして、若い世代の支持を集めているのかもしれない。

 その後も、様々な特別試験をこなし、誰かを投票によって退学に追い込むという残酷な試験も経て生き残った清隆とDクラスが、2年に進級してからを描いた2年生編が今年1月にスタート。最新刊『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編2』では、1年生とペアを組んでの特別試験の数学で、清隆だけが満点をとったことで、彼の本性を知らない生徒たちの間に動揺が走る。

 Aクラスでトップの女子も解けなかった問題を、過去に1度も試験で満点を取っていなかった清隆が解けるはずがない。本当の学力を隠していたのではないか。誰もが良い点を取って上位進出を目指しているクラスを裏切っていたのか。信頼が揺らぎ糾弾が始まる。才能を隠していたことが裏目に出た。

 だからといって、理由を明かす訳にはいかない清隆を脇に、鈴音が勝手に清隆が才能を隠していた訳を並べたて、周囲を納得させてしまう。清隆がそうするなら何か理由があるはずだ。バレる訳にはいかないのなら、別の理由を作ることで清隆が活動しやすくなる。それでAクラスに上がれるなら協力する。鈴音の判断力が光る場面だが、彼女がそう言い訳せざるを得ない状態に追い込んだのも清隆の計算だとしたら、なおのこと不気味な才能だ。

 『2年生編2』では、1年生編でDクラスが経験した孤島サバイバルが、全学年を巻き込んで実施されることが決まり、次巻から知力と体力を削るような壮絶なバトルが始まりそう。清隆を是が非でも退学させたい勢力が暗躍し、送り込まれた“刺客”も牙を剥く。清隆の本領がすべて明かされるのか。1位になれば以後、勝手に振る舞えるようにしろと要求するクラスメートの高円寺も、これまで明らかにしてこなかった本領を見せるのか。刊行が待ち遠しい。

 ランキングの2位は9月15日発売の顎木あくみ『わたしの幸せな結婚 四』(富士見L文庫)。継母や義母妹に虐げられ、婚約者候補をすべて追い出してきた冷酷無比な軍人・清霞に嫁ぐよう命じられた薄幸の女性・美世が、実は実直だった清霞と心を通わせるようになっていくシンデレラストーリーの最新刊。清霞と仲良さげな女性軍人・薫子の登場で何が起こる?

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

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