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神宿 塩見きら、作詞に込める“ありのままの自分”と創作への熱量「SNSに可愛い自撮りを上げたから動員が増えるとは限らない」

リアルサウンド

20/5/23(土) 16:00

 神宿が、新曲「Erasor」を5月16日にリリースした。同曲は、一ノ瀬みか、塩見きら、小山ひなによる神宿初のユニット曲。4月16日にリリースした「在ルモノシラズ」に続き、従来のイメージとは異なる壮大なバラード曲が誕生した。

 同曲では、塩見きらがコライトで作詞に参加。彼女が手掛けた歌詞パートには、2019年4月29日に神宿に加入してから約1年、その中で生まれた悩みや葛藤がそのまま言葉として表現されているという。

 ソロ活動の一環でアニメのコラムをメディアに寄稿するなど、文章に関わる仕事も行っている塩見きら。「在ルモノシラズ」でも作詞を経験した彼女が、今回どのようなプロセスで「Erasor」の歌詞を書き上げたのか。本人曰く、加入から成長の日々を過ごしていたという1年を振り返りつつ、今作の歌詞や客観的に見たグループの強み、アイドルに対する考えを語ってもらった。(編集部)

日々自分の理想やなりたいものも変わっている

神宿「Erasor」MV

ーー塩見さんは4月29日に神宿加入1周年を迎えたばかりですが、この1年で生活が激変したんじゃないかと思います。

塩見きら(以下、塩見):1年前には想像のつかなかったような生活を送っているというのは確かに事実で、それこそ加入した当初はこうやって作詞とかクリエイティブに携われているとは思っていなかったし。そういう自分の良さというか強みを、どんどん引き出していただいた1年だったなと思っています。

ーーそもそも、クリエイティブ方面に興味はあったんですか?

塩見:もともと私もアイドルが好きだったので、オタク目線で「これはこうなんじゃないかな?」って考えたりするのがすごく好きで。神宿に入ってからも「これはこうしたほうがいいんじゃないか?」っていう話し合いに私自身も加わらせていただいていたので、興味はあったのかなあ。うん、そういうことを考えるのは好きだったのかもしれないです。

ーーでは、「私がアイドルをやるなら、こう」みたいなイメージを持っていた?

塩見:オーディションを受けていたときには、もちろん「こういうアイドルになりたい」とか「あんな可愛いアイドルに憧れて」というのはあったんですけど、1年前に思い描いていた自分に今なれているとは正直思っていなくて。それ以上に、日々自分の理想やなりたいものも変わっていて、それは自分が成長できている証拠なんじゃないかなと思うんです。

ーーなるほど。ちなみに当初はどういうアイドルを目指していましたか?

塩見:私、坂道グループが好きだったので、すごくキラキラ輝いていて可愛い王道のアイドルを思い描いている自分はいましたね。

ーー「1年前に思い描いていた自分に今なれているとは思わない」というものの、神宿というグループに加入したことで独自のスタイルを確立できたように映りますよ?

塩見:本当ですか? やっぱり「○○っぽい」じゃなくて「神宿らしさ」というか、神宿というジャンルを作っていきたいという思いは、加入してからどんどん強くなりましたね。それこそ、最近は楽曲の幅が広がり始めているのも、そこに通ずるのかなと思います。

ーー神宿はYouTuberとしての活動も定着しつつありますし、塩見さん加入後の1年でいろんな模索があったかと思います。塩見さん自身は、その「神宿らしさ」は見つけられましたか?

塩見:それこそ、いろいろなジャンルの楽曲をやらせていただく中で、自分たちの内面や普段考えていることを楽曲で伝えられるようなグループに、どんどんなれているんじゃないかと思っています。そういうところは「神宿らしさ」なのかな。私はアイドルが好きだったので、以前は「アイドルというのは現場に足を運んで直接会話をして、相手の良さを知るもの」だと思っていたけど、最近ではYouTube活動をさせていただく中で、自宅にいても自分たちのキャラを理解してもらえるのはひとつ強みにもなっているし、そういう部分でも「神宿らしさを」どんどん出せていけたらいいなと思っています。

「これを神宿が歌うとどうなるんだろう?」

神宿「在ルモノシラズ」MV

ーー「自分たちの内面や普段考えていることを楽曲で伝えられるようなグループ」という話に直結しますが、「在ルモノシラズ」や「Erasor」といった最近の楽曲では塩見さんが作詞に挑戦しています。塩見さんはアニメコラム(※「超!アニメディア」の連載企画「神宿・塩見きらのゆるりと真剣にアニメ語り!」)も執筆していますが、文章を書くことに対して以前から積極的だったんですか?

塩見:実は全然そうじゃなくて(笑)。それも神宿に入って見つけられた自分の強みなんじゃないかなと思っています。私、理系なんですよ。なので、人のコラムを読んだり本を読んだりすることはすごく好きだったけど、文を書くとか全然無理で(苦笑)、作詞することが決まったのもアニメのコラムを書かせていただいたのがきっかけで、今までまったく経験もなかったんです。

ーー僕もあのコラムはよく読ませてもらっていますけど、すごく面白いです。

塩見:本当ですか? 直接そう言われると、めちゃめちゃ恥ずかしいですね(笑)。

ーーあのコラムには塩見さんの素の部分がそのまま出ていると思いますが、作詞となるとコラムやSNSでの投稿とは体裁が異なりますよね。「在ルモノシラズ」で初めて作詞に挑戦したときは、そことはどう向き合いましたか?

塩見:書いている最中は「自分が考えていることや思いをなんとか表現したいな、自分にしかできないような表現にしたいな」って、自分の思いを紙に書いたんですけど、いざ出来上がってみると「これを神宿が歌うとどうなるんだろう?」っていう思いもあって。

ーーそれはどういうことですか?

塩見:神宿はメンバー5人それぞれキャラが立っているし、ほかの4人は私とは全然違うので、「これを歌うことでどんな感じになるのかな?」って不安があったんです。でも、出来上がった楽曲を聴くとすごくいい感じに仕上がっていて。それって要するに、悩んでいるのって私だけじゃない、ほかのメンバー4人も同じように悩みながら、葛藤しながら活動していて、そういう自分たちの内面が楽曲に乗せられたと気付いたんです。それは自分自身、大きな手応えでしたね。

ーーなるほど。最初に作詞したときはどの程度メンバーのことを意識していましたか?

塩見:実は、最初に書く段階ではあまり意識していなかったんですけど、「ここのパートはこの人に歌ってほしいな」ということはちょっとだけ考えていました。

ーーでは、初めて作詞する際に、ほかのアーティストの歌詞を読んだりなど、参考にしたものはありました?

塩見:歌詞というよりは、本だったり誰かのコラムだったりと、好きな文章の中から「これはいいな」っていう言い回しは、日常的にメモして「いつか使いたいな」と思ったりしていたので、そういう影響が入っていないこともないです(笑)。

ーー言葉というものに、日常生活でも意識的に触れているんですね。

塩見:面白い話をしている人が好きで、お笑いも好きでよく観るんですけど、芸人さんって発する言葉の一つひとつが面白くて頭がいいなと思うんですよね。そういうことを日常的に意識しながら「これは面白い」というものに対して関心を持ったりしているので、確かにそうかもしれませんね。

1年前は自分の思いなんて発信できなかった

ーー実際に作詞を経験してみて、それ以前と比べて歌うことに対する意識の変化は感じましたか?

塩見:全然違いましたね。今までの神宿の楽曲を歌うのと、今回の「在ルモノシラズ」や「Erasor」を歌っているときの感情も全然違ったし。言葉によって、1曲数分の中で誰かの心を動かすこともできるとも感じたし、だからこそ一言一言にすごく気をつけるというか重みを感じるようにもなりました。

ーーよく「この歌詞に人生を変えられました、救われました」という声も耳にしますが、歌に乗せることで言葉の持つ力ってより増幅されるんじゃないかと思うんですよ。それこそ、その言葉が歌い手によって綴られたものだったら、そのパワーはより増すと思いますし。

塩見:本当にそうだと思います。アイドルの中にも作詞をされている方がいらっしゃるじゃないですか。そういう楽曲を聴いていると、「この人はこう考えているんだ」と新しい発見もありますし。私たちの場合もファンの方がいろいろ考察してくださって、「塩見はそういうふうに考えているんだ」とか「塩見の考え方、すごく共感できるし好きだよ」と言ってもらえたのはすごくうれしかったです。

ーー神宿は今年1月に、これまでに発表した楽曲をまとめたアルバム3枚(※『kamiyado complete best 2018-2019』および『kamiyado complete best 2014-2015』『kamiyado complete best 2016-2017』)を同時リリースしました。塩見さんはそこで、ご自身が加入する前の楽曲をすべてリテイクしましたが、1年近く神宿での活動を経験してすべての楽曲を歌ったことで、グループのことをより深く理解できたのではないかと。そういう総括のタイミングを経て、メンバーが作詞に挑戦したのが非常に興味深いなと思っているんです。

塩見:例えば1年前の5月だったら、私はグループのイメージとか前任の(関口)なほさんのことを考えすぎていて、自分の思いなんて発信できなかったけど、アルバム3作同時リリースで神宿の楽曲を全部歌わせていただくことで、私自身が神宿の歴史をなぞっていくような感覚にもなれた。この3作を世の中に発信できたことによって、私にも少し自信が付いたかなって感じていて、それが終わったぐらいから自分の考えていることや思いもどんどん発信できるようになった気がして。そういう部分が作詞にも少なからず影響を与えているんじゃないかと思います。

ーーと同時に、その作詞を結成時からのメンバーではなくて、1年前に加入した塩見さんが担当するというのもまた面白いなと思って。塩見さんは加入前にグループを外側から見ていたことで、ある種の客観性も持っているのかなと思うので、そういう人がどういう言葉を綴るのかにも興味があったんです。

塩見:なるほど。やっぱりファン目線に立つことができるのは、最初の私の強みだったと思うんです。ファンの方も私がもともとアイドルファンだったことを知っているし、「オタクっぽいところを共感できるのがいいよね」と言っていただくことも多かったので、そういう面でも神宿を客観視できているメンバーになれているんじゃないかなと、ちょっと思っています。

自分の悩みや葛藤をありのまま表現

ーー新曲「Erasor」についても話を聞かせてください。塩見さんはこの曲のセリフパートを作詞していますが、どういう過程を経て完成したんですか?

塩見:実は、「Erasor」のデモを1年前にはすでに聴いていて、その時点では今回私が作詞したセリフの部分もKITAさんが書かれていたんです。すごく大人っぽい内容でしたし、当時聴いた印象では「これは難易度の高い曲だなと」と正直思っていました。でも、昨年後半の「ボクハプラチナ」あたりからどんどん楽曲の幅が広がっていって、みんなの大人の部分もどんどん見せられるようになったからこそ、このタイミングに3人ユニットとして歌うのがいいんじゃないかっていうことになったんです。

ーーでは、ボーカルパートの歌詞はすでに出来上がっていたと。それを踏まえて、塩見さんは自身の言葉でセリフパートを加えていったんですか?

塩見:それがですね、実はそことはあまりリンクしていないというか。私はこの曲を初めて聴いたとき、すごく自分のことを理解している人の歌詞だなと思ったんです。でも、私はまだまだ世の中のことも自分のことも理解できていない未熟者なので、この歌詞に私が言葉を加えるのはすごく難しくて。「これはどうしたものか?」と、最初はすごく悩んだんですよ。でも、そういう自分の悩みや葛藤をありのまま表現したらいいんじゃないかと、そういう思いをセリフパートに凝縮してみたんです。

ーーそうだったんですね。レコーディングはいかがでしたか? 歌と違って、セリフは感情の込め方が難しいかと思いますが?

塩見:自分の思いが綴られているので、そこに関してはあんまり苦戦しなかったんですけど、楽曲をより良いものに仕上げたいという意味でいろんなパターンを録ってみました。例えば電気を消して、暗闇の中でレコーディングしたり、ちょっと明るめに言ってみたり怒っているような感じで言ってみたりして、それを制作スタッフの方にうまい具合にミックスしてもらったんですよ。実際、すごくいい感じに仕上がったと思います。

ーー一聴した限りでは非常にナチュラルな仕上がりですよね。

塩見:本当ですか、よかった(笑)。

ーーMVも拝見しましたが、楽曲の持つクールさにマッチした内容だと思います。

塩見:今までは5人一緒にいる絵を撮っていたけど、今回は3人別々の場所で撮っていて、カット割りも多くしたりと、すごくこだわらせていただきました。楽曲もMVもすごく良い仕上がりで、私自身の自信にもつながったし、グループとしても一歩先に進めたんじゃないかなと思っています。

ーー「ボクハプラチナ」から短期間でのこの進化は、見ていて本当にワクワクさせられますよ。

塩見:ありがとうございます。正直、ファンの方の中には戸惑っている人もいるんじゃないかと思うこともあるんですけど、私たちは「これが正しい、これでいける」と自信を持ってやっているので、ついてきてほしいなと思っていますし、私は強い気持ちで活動しています。

「自分の良さはここなんじゃないか」

ーーそんな神宿に今後必要なのはどんなことだと思いますか?

塩見:メンバー1人ひとりが自分のことを理解することがすごく大事なんじゃないかな。1年前の私は自分のことを何もわかっていなかったけど、今は少し見えてきた部分があるし、それはほかのメンバーに対しても感じていて。メンバーそれぞれが自分のことをどんどんアピールできるようになることが、これからは大事になるんじゃないかなと思います。

ーーその「少し見えてきた部分」というのは、塩見さんにとってどういうものですか?

塩見:神宿加入当初は自信のない自分に共感していただいていたところが正直あったのかなと思うんですけど、活動を続ける中でどんどん「文章がいいよね」と言っていただいたり、こういうインタビューをする場にも呼んでいただけることが増えたり。そういう意味で、「自分の良さはここなんじゃないか」というのが見つけられた1年だったのかなと思います。

ーー神宿に入る前は、そういう個性や強みは見つけられていなかった?

塩見:全然わからなくて。自分のことも嫌いだったし、良さなんてまったくわからなかったんですよ。そういう自分を変えたくて、アクションを起こしたわけで。私の場合はアイドルが好きだったから、こういうアクションだったんです。

ーーアイドルの皆さんにオーディションを受けたきっかけを聞くと、よく「自分を変えたかった」「自分には何もないから、何かを見つけたかった」という答えが返ってきますよね。

塩見:もがきながら正解をどんどん見つけていくような成長ストーリーに惹かれるところはあると思うし、その過程が見ている人の共感につながるのかな。私の場合も1年前に加入してから今日までの成長を、私のファンの方には楽しんでいただいていると思うし、そういう自分の頑張っている姿や成長を見届けていただきたいなって思うし。だって、アイドルと応援する側では立場は違うかもしれないけど、みんな同じ人間ですし、私が日々悩んでいるようにファンの方も同じように悩んでいると思うんです。私もアイドルのそういう姿に共感を覚えたし、頑張っている姿に勇気付けられたので。それと同じことを今、ファンの方からよく言っていただくので、アイドルってそういうものなんだろうなと思います。

神宿がみんなの居場所であり帰る場所でありたい

塩見きら – 空も飛べるはず (スピッツ) COVER

ーーここ数カ月は新型コロナウイルスの影響で、ライブなど表立った活動が思うようにできていないと思います。でも、神宿は4月からの3カ月連続新曲配信が、結果として功を奏しているんじゃないかと思うんです。

塩見:確かに、こんなご時世でもファンの方に楽曲やいろんなコンテンツを提供できているのは、すごくラッキーだなと思います。偶然か必然か、楽曲もMVもこういう世の中になる前に完成していたので、こうやってどんどん前に進めていることは私たちの自信にもつながっていますし。こうやって取材もしていただいて忙しかったりするので、本当にありがたいです。

ーー本来なら4月、5月とライブを行いつつ、今回のリリースにつなげていったと思いますが、実際ライブが中止・延期になっても活動が止まっている印象はまったく受けませんし。

塩見:神宿はずっとストーリー性を大事に活動していて、5月頭にやる予定だった『GRATEFUL TO YOU』もファンの方々に感謝を伝えるというツアーだったので、ライブができなくなったことでまた新たなストーリーを作り出さなくちゃいけないし、新たなテーマを作ってこれからのスケジュールを立て直さなくちゃいけないのは正直大変でもあるんですけど、まずは失速することなくファンの方に楽しんでもらえているのは正直うれしいです。

ーー実際、神宿は新曲配信に加え、YouTubeを使った生配信も積極的に続けていて、塩見さんはスピッツのカバー「空も飛べるはず」もYouTube配信しましたよね。

塩見:こんな状況でも皆さんに楽しんでもらいたいというのが、まず第一にあるし、ファンの方のためを思っていろいろな活動を工夫しながら考えているんです。カバー曲を配信したりYouTube生配信を日替わりでやったりするのも、その一心からですね。「Stay Home」って言われていますけど、私は神宿がみんなの居場所であり帰る場所でありたいと思っているので、今は直接会えないけど画面越しでも「観ていると落ち着くな」とか「大変な状況だけど癒されたな」と感じてもらいたいと考えながら、常に活動してます。

ーーまた、今家にいるからこそ出会うきっかけにつながるというのも、まったくない話ではないですよね。ライブ中心の活動では届かなかった層にも、YouTubeや新曲配信を通じてリーチする可能性も大きいですし。

塩見:そうですね。実は、「在ルモノシラズ」はもともとYouTube中心のプロモーションを考えていたんですよ。アニメーションのMVにして、楽曲もYouTubeですごく人気のあるDUSTCELLのMisumiさんに作っていただいて。そういう意味では、この状況になって功を奏した部分も大きいのかな。実際、ネットユーザーが以前よりも活発なタイミングでのリリースだったので、反響も以前より大きかったですし。よく「SNSに強い人が勝つ時代になる」と言われているけど、だからといってSNSに可愛い自撮り写真を上げたからライブの動員が増えるとは限らない。何が一番大事かと言ったら、やっぱりクリエイティブのクオリティ。いいものを届けることが一番大切なんじゃないかと思っています。

「Erasor」

■リリース情報
「Erasor」
5月16日(土)リリース
配信はこちら

「(タイトル未定)」
6月10日(水) リリース

■各種リンク
神宿公式HP
神宿公式YouTube Channel
神宿公式Twitter

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