第2代国連事務総長のダグ・ハマーショルドは、1961年に搭乗した飛行機がコンゴで墜落して亡くなる。当時は東西冷戦下のアフリカをめぐる複雑な政治状況から「謀殺」という見方があった。例えば、墜落死したハマーショルドの遺体にはCIAの殺害を示唆するトランプのスペードのエースがあったという証言。そんなハマーショルドの謎の死をめぐるドキュメンタリーだが、映画が展開するにつれて、例えば白人至上主義グループが黒人を浄化するためエイズ菌をばらまいていたなど、虚実の境を揺り動かすような複雑怪奇な世界になっていく。本当なのか、それともフェイクなのか。ハマーショルドの謎めいた死の真相の追及は、この世界そのものがつねに謎めいていることを物語っているようで興味深い。