Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『ハイキュー!!』日向と影山の絆 生涯の相棒でありライバルの関係性を紐解く

リアルサウンド

20/10/4(日) 8:00

 高校生たちの手に汗握るバレーボールの試合展開だけではなく、それぞれの友情やライバル関係にも胸が熱くなる『ハイキュー!!』。

「あの2人…同じ中学出身か? それとも小学校から一緒とかか?」

 これは鳥養コーチが初めて烏野高校の練習試合を見学、日向と影山を観たときに発した言葉だ。2人が初めて出会ったのは中学3年、ネットを挟んで。

 たったひとりでその場しのぎのチームを率い試合に出ていた日向と、優秀なチームメイトが周りにいるにも関わらず、その性格からひとりで戦っているような状況だった影山。そんな2人が烏野高校で出会い、“相棒”となり“最強の味方”となっていく。

日向が発した「居るぞ!!!」の一言が影山を救う

 中学総合体育大会、県予選決勝で影山がトスを挙げた先には、誰もいなかった。ミスではなく、チームメイトからの拒絶。「コート上の王様」と揶揄され、その出来事は影山の心に大きなしこりを残すことになった。

 そして、高校に入って初めての練習試合で日向が影山に向かって発した「居るぞ!!!」の言葉。どこにだって飛ぶ、どんなボールだって打つ。だからどんなトスでも持って来い。この言葉は影山にとってかなり重大なものだっただろう。バレーボールを教え、良き理解者であった祖父の一与。その祖父は、影山が中学生のときに亡くなっていた。バレーボールのおもしろさを教えてくれた人の喪失は何よりも大きかなものだったはずだ。影山の練習には誰もついてこない、心の内を打ち明ける人間もいない。そして、チームメイトからの拒絶。そんな時「居るぞ」と言われたらと思うと――暗く陰っていた心を照らしたのは日向だったのではないか。

 そして、祖父・一与という名前もなんてぴったりなんだろう。影山にバレーボールというかけがえのないものを与えて、ひとりの世界を作ってしまったのだから。

言いたいことは言う 本音の言葉が実力を引っ張り出す

 日向にとっても影山にとっても、チームに恵まれたということはあるだろう。しかし、一番大きなことは、日向は影山を、影山は日向を見て、本能で相手を分析し、言葉を飾らず気持ちを伝え続けたことが何よりも大きかったのではないだろうか。

 休部していた東峰が復帰し、体格とパワーを羨む日向の気持ちを察した影山は言い切った。

「大黒柱のエースになんかなれない」
「(でも)お前の囮のお陰で自由になる!」

特性と能力を踏まえた上で最強の囮になれると日向の未来への道を切り開いた。影山がいなかったらどうだろう。「エース」という単語にとらわれて、日向は伸び悩んだかもしれない。一方、日向は再び「コート上の王様」という名前にとらわれそうになった影山の揺らぎを断ち切った。

「前から思ってたけど“王様”ってなんでダメなの?」
「影山が何言っても納得しなかったら俺は言うこと聞かない!」

 実力がある影山に対して、どうやって文句をつけたらいいのか分からない選手も多い。しかし、日向はややこしいことを考えず、思ったことをそのまま伝える。どんなに実力に差があろうとも、対等なのだ。それに、影山は正しいことを言われたら、意外と素直に受け止める。だから、いつだって日向の言葉は真っ直ぐ影山の心に届くのだ。

いつでも最強の味方で、最強の敵

 「俺が居ればお前は最強だ!!!」

 これは、日向が東峰のようにはなれない、と下を向きかけたときに、影山がかけた言葉だ。しかし、日向も同じ言葉を影山にかけている。春高予選準決勝、対青葉城西戦。及川の大きさに呑みこまれそうになる影山に向かって日向が言ったのだ。

 「俺が居ればお前は強くなれる」とか「俺が居ればお前は大丈夫だ」というセリフは本人たちにとって綺麗事ではない。実際に「最強」なのだ。自分と共にいるときが相手も一番強い。そんなセリフ、おいそれと言えるようなものではないだろう。ましてまだ高校生、今後いずれ道は分かつだろうし、自分よりも最強の相棒と出会う可能性はある。

 それでも2人は早い段階で、自分たちが別々の道を歩むなど思っていない。運動神経がいいだけのチビとしか思っていなかった影山は、常に日向をライバルだと認識している。

「先に行くぜ」(影山の全日本ユース強化合宿選抜時)
「今回も俺の勝ちだ」(春高準々決勝、日向離脱時)

 日向が追い付いてくることは当然だし、勝負はこれからも続いていくと“知っている”。高校卒業時には「またな」と交わす。かたやVリーグ、かたやブラジルでビーチバレーという異なる進路なのに、だ。

 そして、時が経ちVリーグで再開した2人。「来たぞ!!!!」と言う日向に「遅え」と影山。きっと誰よりも、日向が帰ってくるのを待っていたのだ。

 その後、同じ日本代表のチームメイトとして、あるいはネットを挟んで対戦相手として、日向と影山は何度も顔を合わせることになる。チームメイトであれば、最強の相棒として、対戦相手であれば、最強の敵として。どちらでも変わらない。互いに選手であり続ける限り、互いを越えるために強くなり続けるのだから。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む