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MCU作品のDisney+配信でさらに加速? 多様化するアメコミ映像作品の変遷を追う

リアルサウンド

19/10/3(木) 8:00

 この原稿を書くにあたって僕自身の経験から始めさせていただきたいのですが、僕が初めてサンディエゴ・コミコン(アメコミを起点とするポップカルチャーの祭典:以下SDCC)を本格的に取材したのは2010年でした。

参考:フェイズ4発表でさらに加速するMCUの熱狂 杉山すぴ豊のサンディエゴ・コミコン現地レポート

 映画『アベンジャーズ』の製作発表が行われた記念すべきSDCCだったのですが、その時に印象的だったことが3つありました。とにかく映画の広告が街中に氾濫していたこと。つまり、SDCCは“アメコミのイベント”から“アメコミ映画のイベント”になっていた。そして2つ目はその年の秋から始まる『ウォーキング・デッド』のドラマのPRが派手に行われたこと。3つ目は業界人が登壇するイベントでヒットTVドラマの仕掛人としてJ・J・エイブラムスとジョス・ウェドンのトークイベントが開催されたことです。そして、いまあげた3つのことがこの先どうなっていったかが、まさに<映画からドラマへ 多様化するアメコミ映像作品>を物語っていたのです。

 まず2010年のSDCCでは、TVドラマの人の印象が強かったJ・J・エイブラムスとジョス・ウェドンは、後に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『アベンジャーズ』の監督を務めます。つまりTVドラマ畑から映画界を動かす人材が生まれ始めたということです。そして『ウォーキング・デッド』は大ヒットドラマとなり、改めてアメコミ原作のドラマが注目されるきっかけとなります。さらにSDCC期間中の屋外広告は、2010年以降映画からTVドラマの広告が主流になってきます。この理由はアメリカのドラマは秋から新シーズンを迎えることが多いので直前の視聴者囲い込みには、夏に開かれるSDCCがタイミング的に良いということが認知され始めたということもあるのでしょうが、ドラマが映画より勢いがある、ということを感じさせてくれます。

 そして今年のSDCCはまさにドラマが主役であることをさらに印象付けてくれました。まずマーベル・スタジオのパネル(プレゼンテーション)でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェイズ4以降は新配信サービス「ディズニー・プラス」でのドラマも重要な役割であることが強調されました。これまでマーベル・スタジオの、MCUのパネルでは、映画と一緒にドラマが紹介されるということはなかったのです。

 またバットマンやスーパーマンを有するDC(映画会社的にはワーナー傘下)は、今年映画の発表は見送ったのですが、『アロー』等のTVドラマや独自の配信サービス<DCユニバース>で届けている『タイタンズ』(日本ではネットフリックスで配信)等のドラマについては多くのパネルが開かれていました。そして今年のSDCCで一番目立っていた屋外広告の一つがアマゾンの『ザ・ボーイズ』だったのです。

 「海外ドラマがいままた熱い」「配信サービスの台頭で配信ドラマへの注目が高まる」はアメコミ物に限らず、いまエンタメ業界で言われていることですが、こうした流れはアメコミ文化にも来ていると言えます。アメコミに限って言うと、もともとアメコミ・ヒーロー物というのはTVドラマと相性がいいコンテンツでした。50年代はスーパーマン、60年代はバットマン、70年代はワンダーウーマンのTVドラマが人気を博していたし、マーベルも『超人ハルク』のTVシリーズを成功させています。

 アメコミ・ヒーロー物というのは、犯罪者とヒーローが戦うというパターンが多いから、犯罪アクション物のバリエーションとしてとらえることが出来る。犯罪物はTVドラマの鉄板だから、アメコミ・ヒーローもドラマ化しやすかったのかもしれません。またアメコミはそもそも連載という形で続けられ、定期的にヒーローたちと出会えるものだったから、連続ドラマというフォーマットがあっていたのかもしれません。

 しかし89年の『バットマン』の大ヒット、2000年代始めの『X-メン』『スパイダーマン』の大成功、08年の『アイアンマン』『ダークナイト』の成功と、アメコミ・ヒーロー物は映画界のドル箱題材としてヒットされていきます。従ってドラマから映画へとなっていくわけですが、ここで注目したいのがMCU。MCUの映画の作り方は、各作品がつながっていて、続き続き……みたいに展開しています。きわめてTVドラマ的な発想です。MCUがフェーズ1、2、3、4と称している区切りはドラマで言うシーズン1、2、3、4です。MCUの仕掛人であるケヴィン・ファイギの役割も“プロデューサー”というより、ドラマで言う“ショーランナー”に近い。起用する監督もジョス・ウェドンやルッソ兄弟などTVドラマで活躍していた人が多い。極めてTVドラマ的に映画を作っている感じなのです。

 アメコミ・ヒーロー物というのはスーパーパワーを使った派手なアクションもポイントだから、それを劇場で観たい。いまVFX等の進歩でそれが可能になったからアメコミ映画が多数つくられるようになったわけですが、一方ヒーローである前の主人公たちのドラマや様々なキャラクターが出てくるので群像劇としての魅力がある。先にも述べたようにもともとアメコミは連載物だから、定期的な接点と長い年月をかけて登場人物と読者の絆をつくりあげてきました。こうした要素は連続ドラマ向きなのです。だからケヴィン・ファイギは、派手なイベント映画の中に連続ドラマ的要素を入れて、MCUという独特のフォーマットを完成させたのだと思います。

 一方、DCは2012年の『アロー』を皮切りにドラマをヒットさせていますが、例えば2015年の『スーパーガール』はTVドラマでありながら“かつて巨額の製作費を投じて超人が空を飛ぶシーンを見事に映像化した78年の映画『スーパーマン』級のアクション”をいとも簡単に再現しています。つまりドラマでも映画級の見せ場を届けられるようになった。

・映画はイベント的だからドラマ性が弱くなる
・ドラマは映画よりスケールが小さいから見せ場が弱くなる

 こうした長所短所をクリアすると、素晴らしいアメコミ映像コンテンツが作れるわけです。

 さらにドラマの場合放送だと様々な表現の規制が入りますが、配信だと過激な描写も可能になります。また最近ではドラマに映画並みの製作費をかけることもあります。ドラマが予算や表現の壁を超えるなら、アメコミ・ヒーロー・ドラマというのはこの先もっともっと
増えていくと思うのです。

 一方、映画同士を組み合わせることに成功したMCUが、この先ドラマと劇場用映画との融合で成功事例を作れればアメコミ・ヒーロー映画の楽しさ・可能性もますます増えていくでしょう。アメコミ・ヒーローがこれからの映画、ドラマ・ビジネスの中でどのような進化を遂げていくかも注目ですね。 (文=杉山すぴ豊)

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