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HMLTD、Blossoms、King Krule、The Orielles……若手アーティストの動向から考察する、2020年UKロックの展望

リアルサウンド

20/2/15(土) 8:00

 2020年2月10日発表のUKアルバムチャートの1位は、Blossomsの『Foolish Loving Spaces』だった。新人や若手が厳しいと言われて久しいUKの音楽事情、ロック事情であるが、それを打破する一撃のように思える。2020年、UKロックは果たしてどうなるのか? 本稿では、筆者の期待を込めながら、2020年のUKロックの展望を描きたいと思う。

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 そのBlossomsのアルバムはシンセポップやファンクの影響下にあるといっても過言ではないが、相も変わらず、70~80年代を参照点とすることが一つの傾向としてあるように思う。

 2月28日にアルバムリリースを控えるThe Oriellesだが、先行リリースされているタイプが異なる2曲ーージャズの静けさと旧来のギターポップが持っていた高揚感を行き来する「Come Down On Jupiter」、Average White Bandを想起させるようなファンク・ディスコ・チューン「Space Samba(Disco Volador Theme)」を聴く限りでは、ダンスフロアという宇宙を旅行している気分になれるアルバムと予想される。従来の持ち味であったアンニュイさが残るギターポップに、ジャズやファンクを装備した、ミラーボールの輝きを味方につけたThe Oriellesが聴けるのではないだろうか。

 ジャズといえば、King Kruleを忘れてはならないだろう。チェット・ベイカーを敬愛する彼が放つ、色気のあるボーカルは健在。様々なビートを取り入れることを得意としている彼だが、アルバム先行曲としてリリースされた「Alone, Omen 3」、「(Don’t Let the Dragon) Draag On」では、ジャズの乾いたビートに乗せて、タイトルからも想像できる通り、相も変わらず孤独感漂う歌詞を歌い、重たいダークな音で塗り固めている。声は低めに処理され、これまでのように揚々と歌い上げるというよりも、絞り出すようにポツリ、ポツリと語っているように思える。ポエトリーリーディングの面が強化されたアルバムになるのではないか、それにより、彼の伝えたいこと、孤独と生への渇望がダイレクトに伝わってくるような作品になるのではないかと思う。

 ガーディアン紙『All talk: why 2019’s best bands speak instead of sing』でも取り上げられたが、筆者が今、UKで最も面白いかもしれないと思っているのが、ポエトリーリーディングである。その手法を最も体現しているのが、Sinead O’Brienだ。アイルランド出身、ロンドンを拠点に活動をしている彼女が作る音楽は、先に詩があって、音はその情感たっぷりに読み上げる詩に合わせて付けられる。以前は詩の朗読のみでライブを行っていたこともあるという。詩を読むことに重点を置く、それゆえに歌うよりも歌詞の内容がダイレクトに伝わってくる。韻を踏むことも忘れてはいない。バンド編成でポエトリーリーディングを行っているのが、Black Country, New Road、Dry Cleaning、Do Nothingあたりだろう。せっかくのバンドサウンドがあるのに、歌わないのか……と、少しもったいない気もするが、特にサウンドが大きく変化する、Black Country, New Roadの「Sunglasses」は、まるで一つの物語を見ているような気分にさせられる。ただ身を委ねるだけが音楽ではない。何かを表現するものだということに改めて気づかされる。彼らはシングルこそ出しているが、アルバムリリースはまだ。今年リリースするのではないかと予想しているが、その際には80年代ポストパンク界の詩人と言われたマーク・E・スミス以来の新しいトレンドとなりうるのか、注目したい。

 2019年はFontaines D.C.やThe Murder Capital、Girl Bandらによりポストパンクの加速が続いたが、2020年もその勢いは続く。すでにアルバムリリース日が発表されているオルタナティブ・ギターロックバンドのSorry、ジャズやシンセを取り入れた楽曲を発表したSquid、Orange JuiceやAztec Camera方向に舵を切ったThe Magic Gangあたりに期待したい。

 そしてついに、2月5日のアルバムリリースで全貌が明らかになった、HMLTD。Nine Inch Nailsからドレイク、さらにはパンク、グラムロック、ニューウェイヴ、ポストパンク、ニューエイジ、スペースロック、果てには日本の歌謡曲っぽさ(日本語を取り入れた歌詞もあり)までを内包するHMLTDはUKでは異色の存在だろう。国境もなく行き来する自由さ、しかし、不思議なことに知らない音は一切ない。2010年代にジャズやヒップホップがメインストリーム化する中で、ベテラン勢頼りになっていたUKロックだが、ヒップホップやその他様々な手法を取り入れたこの新人バンドの登場がで、再生の一手となっているといっても過言ではない。しかも、芝居じみたこの世のものとは思えない雰囲気、Queenやデヴィット・ボウイやCulture Clubといった、失われてしまったロックスターがここに復活したといってもいいのではないだろうか。このアルバムからUKのシーンがどのように変化していくのか、今から楽しみだ。

 ネオアコやギターポップの方向の、いわゆるいい歌系のバンドも忘れてはならない。アルバムリリースが予定されているスティーブン・パステルの秘蔵っ子=Spinning Coin、古き良きアメリカの映画を取り入れているFurの存在は、伝統を重んずるUKロックの支えとなるはずだ。

  2020年もバラエティに富んだUKロックシーンからは目が離せない。(杢谷えり)

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