Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

BABYMETAL、米ビルボード躍進は現地レーベル設立の成果 最新作に感じた原点回帰と冒険心

リアルサウンド

19/11/4(月) 8:00

 BABYMETALが3rdアルバム『METAL GALAXY』を、10月11日に世界同時リリースした。前作、2016年4月1日にリリースされた2ndアルバム『METAL RESISTANCE』から、じつに約3年半ぶりとなった最新盤。その間、いくつかの収録曲はデジタル配信されていたが、道中ではYUIMETALの脱退を受けた体制の変化もあり、ライブを軸に先行きを見守り続けていたファンにとっては待望のアルバムとなった。

参考:松本孝弘はギタリストとしてどう磨かれた? BABYMETAL楽曲など盛んなソロ活動を機に考察

 ひとたび聴いてみたところ、率直に浮かんできたのは“何じゃコレ!?”という感想。メタルと身がまえて聴いても、BABYMETALの最新盤と身がまえて聴いても、いいようのない肩透かしを食らったのが本音ではあるものの、全編を通して「BABYMETALの“今”が凝縮されている」と、思わず納得せざるをえない仕上がりとなっていた。

■ビルボードで日本人最高位を獲得

 本作の発売日には『BABYMETAL METAL GALAXY WORLD TOUR LIVE AT THE FORUM』と題して、自身初となるアメリカでのアリーナ公演をロサンゼルス・The Forumで達成したBABYMETAL。9月から10月にかけて20都市を巡った全米ツアーの一環として実現した大舞台となったが、海外でのアリーナ公演はアルバムと同じく約3年半ぶりで、2016年4月2日に行われたイギリスのウェンブリー・アリーナ公演以来の2度目となった。

 また、3rdアルバム『METAL GALAXY』はその後、アメリカの音楽チャート・ビルボードにおけるアルバム総合チャート「Billboard TOP 200」(10月21日付)で、日本人史上最高位となる13位を獲得したのも広く話題を集めた。歴史をたどれば、1969年に坂本九が記録した14位を56年ぶりに更新。日本人女性アーティストとしては、初めての快挙だった。

 2014年3月に日本武道館で2日間にわたり行われた公演を境にして、活動の軸足を海外へ向け始めたBABYMETAL。以降、国内外を問わず支持を獲得してきたが、今回の結果は前作にあたる『METAL RESISTANCE』が同チャートで記録した39位も大幅に上回り、アメリカでのさらなるファン層の拡大を印象づけるものにもなった。

 要因はさまざまに考えられるが、大きな分岐点に位置づけられるのは、2018年5月に彼女たちの名前を冠したレーベル<BABYMETAL RECORDS>がアメリカで設立されたことである。

 これによりBABYMETAL側は、SlipknotやMegadethらのマネジメントを手がける<5B Artist Management & Records>とパートナーシップを結び、さらに、Marilyn MansonやTHE PRODIGYのリリースを手がけ、ロンドンやメルボルン、ニューヨークに拠点を持つ<Cooking Vinyl>と連携した。

 当時、海外のハードロック/メタル事情に詳しいライター・西廣智一氏が弊サイトに寄せた解説によれば、先述の2社は「メタルやハードロックを中心としているレーベル・マネジメントではなく、いずれもミクスチャーといっていいモダンな音楽性を持ったアーティストをバックアップしている会社」であり、さらに、所属するアーティストも「ポップスを意識しつつ、真の部分はメタル/ラウド/パンク的なスピリットや音楽性があるというのが特徴」であるため、BABYMETALもその系譜にあったと考えるのが自然だ。(参照:BABYMETAL、なぜ新レーベル設立? 5B&Cooking Vinylとタッグ組んだ背景を考える)

 同じ所属事務所であるアミューズのONE OK ROCKが、2016年9月にワーナーミュージック傘下であるアメリカのレーベル<Fueled by Ramen>に移籍して海外戦略をより強化した先行事例もあったが、イギリスやドイツをはじめとしたヨーロッパに続き、現地での強力なバックアップを受けてより広く認知を高めていったとみるべきだろう。

■原点回帰と冒険心の“二面性”を持つ『METAL GALAXY』

 さて、いよいよアルバムの核心に迫っていきたい。通常盤はディスク2枚組の構成で、収録数は全16曲。そのうち、「Elevator Girl」「PA PA YA!!(feat.F.HERO)」「Starlight」は音源のみデジタルで先行配信されており、同じくすでにリリースされていた「Distortion」は、Arch Enemyのボーカリストであるアリッサ・ホワイト=グラズをフィーチャリングゲストに迎え新録された。

 本作の土台にあるのは「メタルの銀河を旅する」というテーマ。かつて“アイドルとメタルの融合”を掲げて結成されたBABYMETALであるが、メタルというジャンルをベースにしつつも、これまで以上にさまざまなジャンルとのコラボレーションに取り組んでいる。

 しかし、新しさを味わえる一方で、不思議と込み上げてきたのは“懐かしさ”という感情。アルバムの入り口となる1曲目の「FUTURE METAL」を聴くと“これから何が起こるんだろう”とその世界観に引き込まれそうになるが、トラックを進めていくにつれて、どこか1stアルバム『BABYMETAL』へと“原点回帰”したかのような感覚に陥るのだ。

 ディスク1の2曲目にあたるB’zのTak Matsumotoが参加した「DA DA DANCE」はまさに典型的な一曲で、ユーロビート調のメロディは、1stアルバムに収録された「いいね!」とイメージが重なる。ライブで行われた前者のパフォーマンスをみると、サビではメンバーたちによるバブル時代の“ジュリアナ”を彷彿とさせる片手を左右に振る仕草も目立つが、レーザービームが飛び交う会場で披露されていた後者のように、イントロからさながら“ディスコフロア”に切り替わるかのような展開も踏襲されているように映る。

 ディスク2の4曲目にあたる全編ラップで構成された「BxMxC」も耳に残るのは、攻撃的な歌詞とメロディの途中で流れる“三三七拍子”のリズム。前作『METAL RESISTANCE』に収録されていたYUIMETALとMOAMETALのユニット曲である「GJ!」のイントロをオマージュしているかのような感覚を覚える。

 また、曲中のフレーズにも“原点回帰”の色は残されていて、ディスク1の7曲目にある「↑↓←→BBAB」には日本に古くから伝わるわらべうた「ずいずいずっころばし」が用いられているが、1stアルバムに収録された“かくれんぼ”をテーマとする「Catch me if you can」と似た空気感を匂わせる言葉遊びは、どこかかつてのBABYMETALを彷彿とさせるものがある。

 一方で、彼女たちの進化を感じられる曲もあり、先行配信されていた「PA PA YA!!(feat.F.HERO)」は、曲中でみせるSU-METALの力強い“巻き舌”に耳を傾けるだけでも、彼女の持つ表現力の幅広さを味わえる。また、昨年の変則7人体制による“ダークサイド”時代からライブですでに披露されていた「Kagerou」や、アメリカのプログレッシブメタルバンド・Polyphiaのギタリストであるティム・ヘンソンとスコット・ルペイジを招いた「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」も、ボーカリストとしての彼女の真価がにじむ曲だ。

 さらに、他ジャンルとの融合を試みた、チャレンジングな作品として特筆すべきなのがディスク1の4曲目にあたる「Shanti Shanti Shanti」だ。タイトルはサンスクリット語で“平和”を意味し、曲中でもヒンディー語で“いいね”を意味する〈Accha Accha〉のフレーズが用いられているが、メタルにインドの民族音楽をかけ合わせた冒険的な一曲。

 スウェーデンのパワーメタルバンド・Sabatonのボーカリストであるヨアキム・ブローデンとコラボレーションした、ディスク1の5曲目「Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)」もしかりで、めまぐるしいポルカ調のリズムにメタルをかけ合わせるという試みに挑戦している。

 そして、一連の楽曲を経てアルバムはディスク2の8曲目「Arkadia」で終結。タイトルの“Arkadia”は、古代ギリシア語で“理想郷”を意味する言葉だ。鞘師里保、岡崎百々子、藤平華乃ら“アベンジャーズ”を迎えてライブを行った今年、広大な銀河にちらばっていた“ジャンル”という光を一つひとつ拾い集めた先で、新たな思いを胸になおも未来を切り開こうとするSU-METALとMOAMETALの決意がにじむような一曲で締めくくられている。

 最新アルバムをひっさげて、11月の『METAL GALAXY WRLD TOUR IN JAPAN』でいよいよ日本への凱旋を果たすBABYMETAL。ライブでいまだ披露されていない曲もあり、どのようなパフォーマンスを繰り広げてくれるかも大いに期待したいところだ。(カネコシュウヘイ)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む