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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

“普通の家族”などどこにもいないと感じた『未来へのかたち』

月2回連載

第67回

考え方が頑なだったら、うまくいくものもうまくいかない

今回は緊急事態宣言下で映画館に規制がかかっている東京ではまだですが、東京以外ではすでに公開されている作品を2作品紹介します。まずは『未来へのかたち』。久しぶりに日本映画を取り上げます。

陶器の生産で有名な愛媛県の砥部町。砥部焼きの窯元で、新しいスタイルを追求している若い陶芸家・竜青は、街で企画された砥部焼きによるオリンピック聖火台のデザインコンペで、老舗窯元と競り合います。

『未来へのかたち』

結果は竜青の勝ち……だったんですが、優勝したデザインは彼の見に覚えのない別物。実はそのデザインは、竜青の娘・萌が彼の名前で密かに応募していたものでした。ところが、彼女にはそれを具体化させるだけの技術はありません。実現させるには、竜青が絶縁している父・竜見の技術が必要だったのです。

『未来へのかたち』

しかも、そこに突然、まったく寄りつきもしなかった竜青の兄・竜哉が舞い戻り、彼らが封印していた母親の死にまつわる因縁まで再燃してしまい……。伊藤淳史さん、内山理名さんなど、演技達者ぞろいの人間ドラマです。

『未来へのかたち』

コレを観て感じたことは、普通の家族ってどこにもいないってことですよね。そもそも普通ってなに?っていう話ですし、それぞれの家族にはそれぞれの事情があって、問題も解決法も人それぞれ。だからこそ、頑なではいけないんですよ。

橋爪功さん演じるお父さんの竜見は、めちゃくちゃ頑なで、聖火台を作るために周りの協力を避けようとするんだけど、次第に心を開いていくんですね。要は考え方が頑なだったら、うまくいくものもうまくいかない、ってことですよ。頑固者が頑固なままでいる理由も分からないではないんですけどね。

『未来へのかたち』

でも、最初から完璧にできる人はこの世には存在しないんだから、そこはおおらかでいないといけませんよね。子供の成長を見守ろうとするようになってからのストーリーはとても穏やかな気持ちで観ることができました。

そしてロクロ! この作品を観ていたら、陶芸やりたくなっちゃいましたね。ものづくりの大切さ、ものづくりをしているときの穏やかな心持ちとか、忙しい毎日を過ごしているとつい忘れそうになることを思い出させてくれます。

カップルで観たらお互いの反省点を振り返るきっかけになるかも

もうひと作品は『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』です。昨年公開されるはずでしたが、コロナ禍による公開延期でついにお披露目となる作品。

高校時代に出会ってひと目惚れしたことから結婚までしたラファエルとオリヴィアですが、結婚10年を迎えて幸せとは言いがたい状況に。ラファエルはSF作家として成功し、オリヴィアはピアノ教室を営んでおり、お互いすれ違ってばかり。

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

そんなふたりは大ゲンカをしてしまいますが、その翌朝、ラファエルが目覚めたのは見覚えのない部屋でした。そこはなんと彼らの立場が逆転した別の世界。

ラファエルはうだつのあがらない中学教師、オリヴィアはピアニストとして大成功を収めていて、ラファエルとは赤の他人になっています。その世界に迷い込んでから、ラファエルはようやくオリヴィアの大切さに気づき、元の世界に戻ろうとさまざまな手を尽くすのですが……。

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

かなりユニークな設定のラブロマンスです。失って初めて大事なことに気づくって、よくある話かもしれませんが、それをパラレルワールド設定で気づかせるってのは面白い発想です。

いわゆるラブコメっぽさを期待すると、かなり違うものを見せられるのでご注意を。SFっぽい設定が印象強いんですが、描かれているのは今でも根強く残る男女の社会格差と恋愛観の差。だってこれを観たら、女性が成功していた方が、男女関係はハンドリングうまくいくんじゃないか、って思いますから。

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

ラファエルが全男性の代表とは言わないものの、多くの男性は仕事においての成功を夢見がちじゃないですか。それに対して多くの女性はどうか。感覚はだいぶ違うと思うんですよ。

長年つきあってきたカップルでも、お互いに何を一番に考えるか、ってことはなかなか話す機会は少ないはず。この作品をカップルで観たら、そういった反省点を振り返るきっかけになるかもしれませんね。

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』

※次回は5月28日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
(C)2020「未来へのかたち」製作委員会
(C)2018 / ZAZI FILMS - MARS CINEMA - MARS FILMS - CHAPKA FILMS - FRANCE 3 CINEMA - C8 FILMS

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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