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大手マスコミと芸能界を結ぶ「太い利権」が、ジャーナリズムを殺した

リアルサウンド

13/7/24(水) 16:57

 ソニーがJ-POPを殺した――そんな過激な見出しで、音楽業界のタブーに切り込んで話題を呼んだ『誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰記』(朝日新聞出版)の著者・麻生香太郎氏が、音楽業界の抱える問題点を語る集中連載第一回です。
(編集注:『誰がJ-POPを救えるか?』と同じく、一部フィクション形式で回答されています)

本の中では「ソニーがiTunesへの楽曲解禁を拒否し続けたことでJ-POP離れが進んだ」と、決断の遅い企業体質を指摘されています。現状の音楽業界に、その他の問題点はありますか?

 マスコミと芸能界が、太い利権で結ばれていることですね。例えば、作詞家や作曲家、プロデューサーなどの売れっ子にメディアが群がって、言いなりになる。例えば、時代の寵児となっている、太巻こと古田新太氏(©あまちゃん)を例に挙げましょうか。作詞家として時流を見抜く目は確かだとしても、彼の業界遊泳術は見事としか言いようがない(笑)。

20130724asou.jpgIllustration:やべねこ

具体的には、どういった点でしょう?

 古田氏はかつて、ホリエモン(堀江貴文)と一緒に、フジテレビを買収しようとしていましたよね。でもホリエモンが捕まった途端、別のスポンサーをみつけてコロッとGMT47のプロデュースに力を入れ始めた。マスコミの動力源であるところのスポンサーをみつけるのがうまい。ボクが週刊誌時代の『日経エンタテインメント』を制作していた頃、当時はおニャン子クラブの全盛期でしたが、編集部から「おニャン子を取材しよう」という声は上がらなかった。当時、古田氏は「ヒットメーカーを取り上げる『日経エンタ』が、なぜ自分のところに取材に来ないのか?」と不思議で仕方がなかったと思いますよ。当時のエンタの編集部は日経畑の芯のある人間が集まっていたので、おニャン子の人気にあやかって部数を伸ばすことよりも、「どうも、あの番組には好感が持てない」というオトナな感情を重視していたんです。

 でも、90年代に入って『日経エンタ』とは別の雑誌の依頼で、古田氏に取材をすることになってしまった。内心「まいったな」と思いつつ、ニュートラルな形で話を聞きました。すると、その2日後、古田氏から”お届けもの”が送られてきたんです(笑)。たぶん、奥さんがしっかり者なんですね。それまで食べたことのないような、珍しい地方からのお取り寄せ、でした。これが実においしい。ボクも奥さんが出した、お取り寄せの特集本を買わせていただきました(笑)。業界でここまで細かい心配りをする人はいないと思います(この方法論に感銘を受けて、真似して安住紳一郎を唖然とさせたのが古田氏の友人でもある林真理子さんですね)。年配の方たちが、古田氏の魅力にコロっといくと言われている、通称「ジジ殺し」の異名のわけがそのとき、初めて分かりました。

 この姿勢が「川の流れのように」のヒットに、結果、つながりました。リリース数カ月後に美空さんがお亡くなりになったわけですが、霊柩車を見送る場面で流れたのが、当時は新曲だった同曲。どういう経緯かは知りませんが、ともかくその曲をみんなで合唱することになりました。その場にいた、北島三郎、森進一、都はるみ、五木ひろしなどの大物歌手たちは「もっと他に代表曲があるだろう!」と、ものすごく怒りました。

 大御所たちの気持ちも分からなくはない。しかし、皮肉なことに、そこで流れたことがヒットした理由のひとつになった。ワイドショーで、追悼美空ひばりさん、の映像が紹介されるたびに、バックに新曲が流れるわけです。見送りの時に日本を代表する歌手たちが全員で合唱している。視聴者は釘付けになりますよね。最大のプロモーションです。しかも楽曲もよかった。あそこで新曲を流した方は、ボクもお世話になった大プロデューサーさんですが、彼のハートを古田氏はガッチリととらえていたことになる。お取り寄せ効果です(笑)。結果、今の若い世代にとってみると、ひばりさんのいちばんの代表曲のようになっている。「いったい、どれだけ運が強いのか?」と言いたくなります(笑)。

 おニャン子だってそうです。自分が構成作家を務めた番組でスターを創り出し、その楽曲の歌詞を全部、自分で書く――これは例えば、フジテレビのトレンディドラマの主題歌の作詞を、大多亮(編集部注:フジテレビのテレビプロデューサーで、トレンディドラマを確立させた人物)が担当するようなものです。チャゲアス、浜田省吾、米米クラブ、小田和正、これらの作詞を大多亮のクレジットで書いたら、(彼はフジテレビの社員だから)即クビです。しかし、古田氏はフリーの立場なので、それをやりのけた。まさに掟破りですね。

 『スター誕生!』の時だって、審査委員長の阿久悠さんは、楽曲制作を、自分以外にも振り分けていたものです。だが、誰も番組の中心人物には逆らえない。スポーツ新聞もマスコミも、「おニャン子クラブの取材をさせてもらえなくなる」という理由で一切、批判できなかった。批評眼さえなかった。今だと「GMTに取材ができなくなるから……」ですよね。唯一『週刊文春』はスキャンダル記事を載せて、喧嘩を売っているような(逆・擦り寄りのような)微妙なスタンスをとっていますが、本質的なところを指摘するメディアは今のところありません。こうしたマスコミの利権に縛られている状態が、まとも音楽ジャーナリズムが成立しない要因のひとつになっていると思います。
(第2回に続く)

■麻生香太郎
大阪市生まれ。評論家、作詞家。『日経エンタテインメント!』スーパーバイザー。東大文学部在学中から、森進一や小林ルミ子、野口五郎、小林幸子、TM NETWORKなどに作品を提供。『日経エンタテインメント!』創刊メンバーとなり、以降はエンタテインメントジャーナリストに転身し、音楽・映画・演劇・テレビを横断的にウオッチしている。著書に『誰がJ-POPを救えるか マスコミが語れない業界盛衰期』(朝日新聞出版)など。Twitter

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