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YOASOBI、ヒットの理由をSNS活用から徹底分析 ファンとのつながり&行動喚起を促す“チームワークの巧さ”

リアルサウンド

20/7/17(金) 18:00

YOASOBIから学ぶアーティストのCTA

 私が仕事がら様々なアーティストさまやレーベルさまのお手伝いをさせていただく中、よく出る共通の質問があります。

「SNSの使い方が上手な日本人アーティストっていま誰ですか?」

 私は即答で、迷いなくお答えしています。「YOASOBIです」と。

 TwitterではYOASOBIのオフィシャルアカウント、そしてAyase、ikuraの3アカウントで盛り上げていくYOASOBIムーブメントにはアーティストが学ぶべきところがたくさんあります。

 彼らはCTA、つまり「Call To Action(コール・トゥ・アクション)=行動喚起」が非常に明確。ファンにどう行動してほしいかを自分たちの声ではっきりと伝えています。

 自分たちの描きたいストーリーを伝え、そのストーリーに参加することがファンの喜びになっています。そしてエンゲージメントポイント全てでトレンドを狙いに行っています。

 早速順に見ていきましょう。

(関連:YOASOBIヒットの理由をSNS活用から分析

「聴いてください」とファンに伝える

 まず今のアーティストに何より重要なことです。投稿を見てすぐ遷移できるYouTubeのリンクと各ストリーミングサービスへのリンクを入れて、自分たちの口から「聴いてください」と伝える。ファンにとっては嬉しいランクアップのニュースもあり、また再び聴いて応援しようと思う。

 この日の投稿は振り返るとわかりますが1日に何度も投稿しており、「たくさん聴いてください」と伝えることの重要さが感じられます。

◯◯回再生に合わせて再度聴いてほしいと伝える

 ファンにとって、ファンとアーティストでなし得た成果、それは再生回数です。その喜びをファンと分かち合いながら、再度聴いてもらう。単なる回数達成の報告ではなく、きちんと遷移できるYouTubeリンクが付随しているのが特徴です。

メディア露出に合わせて再度聴いてほしいと伝える

 テレビ、ラジオ、雑誌、いろんなメディアでの露出で知った人がSNSにやってきます。そんな認知獲得勢にすぐに知ってもらうための投稿も欠かしません。もちろん遷移先のリンクも確実に。

コメントを書いてほしい、感想を伝えてほしいと伝える

 「YouTubeのコメントを書いてほしい」「感想をSNSに投稿してほしい」と伝える。書き込むことでファンはYouTubeでの滞在時間が伸び、YouTube上のエンゲージメントも増します。TikTok含む海外からの流入に対してもコメントしています。

 コメントを全て読んでいるとファンに伝えることで、ファンはますます書いてくれますね。書いていなかった人たちは、書きに行くためにYouTubeに再度行ってくれますね。そして見て聴いてくれますよね。

広げてほしいと伝える

 聴いてくれた、好きになってくれたファンに次にどうしてほしいか、広げてくれるお手伝いを促すことも重要です。エゴサーチして見てくれるなら感想を書こうかな? ストリーミングサービスから曲をシェアしたら「いいね」もらえるかな? とファンが思うことが重要ですね。

 今や曲を広げる上でTikTokと同じくInstagramミュージックスタンプも重要です。アーティスト自ら使い方を紹介して広げてくれるお手伝いを促進しています。

 Instagram、TikTok上の見つけづらい投稿も教えてほしいと伝えます。

二次創作で広げてほしいと伝える

 TikTokで使ったりInstagramミュージックスタンプももちろんですが、カバーなどの二次創作を通じてアーティストのことを知ってもらえるわけですし、こうやってオフィシャルに紹介することで、「自分も紹介してもらえるかも!」とカバー動画が増えて行きますね。

 UGC(ユーザーが生成したコンテンツ)はなにより大事です。

 ここまで実際の投稿を見てきましたがいかがでしょうか? さりげない投稿の中に明確なCTAが存在します。ファンにどうしてほしいかはっきりと伝えていることに気づかれたでしょう。

 でも、そもそも何故こうなったのでしょう? もちろんアーティスト2人がSNSがとても上手なことに加えて、YOASOBIのオフィシャルアカウントを担当されている方が素晴らしいということはあります。

 彼らの成功は各所で様々語られています。楽曲の良さ、タイミング、TikTok。そして私は他所ではあまり語られない1つの理由があると推測します。

 それはスモールチームだということ。

 彼らがストリーミング配信のリンクとして設定しているスマートURLは「orcd.co/」ではじまるURL。これはThe Orchardのリンクです。

The Orchardとは?

 The Orchardは全世界に40カ所以上のオフィスを持つ大手音楽ディストリビューション会社です。SpotifyやApple Musicといった大手音楽配信サービスを始め、世界中の音楽サービスに向けて一括で音楽を届けることが可能なツールを提供しています。それだけではなく、マーケティングに関するフルサービス、シンクライセンシング、ビデオサービス、透明性を確保したデータ分析、広告、権利管理、デジタルとフィジカルのディストリビューションなども、全世界のアーティストやレーベルに提供しています。

 インディペンデントのアーティストがストリーミング配信する際に使う、TuneCore型のような年間あたり一定の登録料を先払いして、Apple Music、Spotifyのような各配信サービス(DSP)からの収入を100%で受け取るサービスとは少し異なり、各配信サービス(DSP)からの収入のうち一定の手数料をディストリビューター側(The Orchard)が受け取り、残りをアーティストが受け取るビジネスモデルですね。中国のテンセントや韓国のMelonなどの、グローバルサービス(Apple/Spotifyのような)ではないローカルの配信サービスに対応していることが特徴ですね(参考:https://realsound.jp/tech/2019/08/post-404927.html)。

 YOASOBIはそんなThe Orchardを活用し、スモールチームでアーティストの熱量を周りへ広げていくことに成功したのではないでしょうか。発信し、広げていくことをアーティスト自身が行い、オフィシャルアカウントを上手に運用。アーティストの叶えたいストーリーに、ファンが参加していく。熱量を周りがブーストしていく。誰かが流行らせてくれるのを待つのではなく、自分たちで輪を広げていく。

 彼らのSNSには学ぶべきことが本当にたくさんあります。

 アーティストの「聴いてください」は告知ではありません。ファンにどうしてほしいかを伝えるエンゲージメントポイントです。自身の口で、自分の作品を聴いてもらうため伝えましょう。

 最後に私のお気に入りの投稿、YOASOBIコンポーザーのAyaseの投稿をご覧ください。

力を貸してほしいと伝える

「もっと多くの人に届けたい、広げてほしい 力を貸してほしい!」

 これを言えるか言えないか、今必要なことだと思いませんか?


(松島 功)

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