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鈴木京香&高橋克実『Home,I’m Darling(ホーム、アイムダーリン)〜愛しのマイホーム〜』日本初演にむけて

ぴあ

鈴木京香、高橋克実

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鈴木京香と高橋克実が出演する舞台『Home,I’m Darling〜愛しのマイホーム〜』。発表されたキュートなビジュアル写真の通り、ふたりは1950年代のライフスタイルを追求している夫婦を演じて、“すてきな夫婦になる方法”を探していく。イギリスの劇作家ローラ・ウェイドによるこの戯曲は、ジェンダーなど、今のテーマをコミカルにシニカルに描き、2019年度のローレンス・オリヴィエ賞でベスト・ニュー・コメディ賞を受賞した作品。ここ日本でも、夫婦にとって、男と女にとって、共に生きていくために大切なものは何なのか、楽しく考えさせてくれる作品になりそうである。日本初演に向かう思いを、まず鈴木が、続いて高橋が語ってくれた。

鈴木京香「明るくポップな舞台の中で、人生を考えさせてくれる」

──日本初演となる戯曲を演じることになった感想からお聞かせください。

大まかな筋立てをお聞きしたときから、表面はポップで明るいイメージなのに、その奥には現代的な皮肉めいたものがあって、そのギャップが面白いなと感じたんです。そして戯曲を読んだら、その奥がより多面的で、気になってしょうがなくなって。日本で初めての舞台化が実現するなら、ぜひともこの役に挑戦してみたいと思ったんです。

──鈴木さんが演じられるのは、50年代のライフスタイルに憧れて、夫のジョニーと共にその生活を追求している専業主婦のジュディ。最初は明るく幸せなところから始まって、ある出来事からその生活に危機が起こり……と物語は展開していきます。

ジュディは、もともとは仕事を持ってバリバリ活躍してた人なんですよね。けれども職を失って、だったら憧れていた50年代の生活をしてみたいと、その夢を実現することにパワーを傾けていく。夫もそんな妻をかわいく思い、ジュディも夫のために家を快適にすることに力を注いでいったんだと思うんです。でも、そうやって家のためだけに生活することが、この作品では槍玉に挙げられることになります。

特に、ジュディの母親からすると、ようやく女性も自由に働ける時代になったのに、女性が生きにくかった時代である50年代を愛して、家庭を守っている娘が信じられないんですよね。だから、日本ではまだ家庭を守るお母さんのほうが尊ばれるところがある気がするんですけど、外国ではこういう価値観になっているのかと、私自身もすごく考えさせられて。家庭と仕事というのは、おそらく女性だったら誰でも考えるテーマでもあると思うので、多くの女性に観てもらって、一緒に考えることができたらなと思っているんです。

ただ、この戯曲の中で何か結論が出ているわけでもなくて。登場人物全員が胸に溜めていたものを吐き出して、それをみんなでただ見ている感じがあって。それも面白いんですよね。

──おっしゃったように、ポップな50年代の衣裳や舞台セットを楽しく見ながら、人生を考えるものになりそうですね。

美術は本当に楽しめると思います。私も、オードリー・ヘップバーンの時代の女優さんたちのファッションを見て、なんて素敵なんだろうという憧れがありましたので、今回、フィフティーズ・ファッションで撮影させていただけたのはすごく嬉しかったですし(笑)。きっと家具や家電も当時のかわいいデザインのものが登場すると思うので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。男性陣も、夫のジョニーが、三つ揃えに帽子、きれいに磨いた靴で出勤したり、カッコいいと感じます。

──そのジョニーを演じられる高橋克実さんの印象を教えてください。

克実さんとは、舞台では『鼬』(2014年)でご一緒していて、それ以外でも何度か共演させていただいていますが、誰に対しても本当にやさしい方なんですよね。だから、お稽古していて楽しいですし。人に緊張感を与えずにいろいろなことを進めてくださるのがとてもお上手なので、今回も頼りにしています。

──ほかに、同じ50年代愛好家で共働きの夫婦役を青木さやかさんと袴田吉彦さん、ジョニーの上司役を江口のりこさん、そして、ジュディの母親役を銀粉蝶さんが演じられます。

江口のりこちゃんとは『鼬』でご一緒していますが、ほかの皆さんは初めましてなんです。のりこちゃんとは、また違う関係の役で新しいことを見つけていけるのが楽しみですし。青木さんと袴田さんは新鮮にお芝居ができると思いますし。銀粉蝶さんは、愛情はあるけど厳しくぶつかり合えるこのお母さんにぴったりだと思っていたので、ご一緒できるのを本当に嬉しく思っています。

──鈴木さんにとっては3年ぶりの舞台です。劇場に来られる方にぜひひと言お願いします。

舞台に立つ技量についてはまだまだ勉強が必要で、舞台は得意ではないという思いがあるんです。だから簡単に「やります」とは言えなくて、熟考に熟考を重ねてやらせてもらっているんです。今回は自分が面白いと思って挑戦する作品ですので、私自身が舞台上でこのお芝居を心から楽しんでいると思います。皆さんにも舞台をご覧いただいている間は思い切りリラックスして楽しんでいただけるよう、稽古に励みたいと思います。

高橋克実「僕が京香さんと夫婦役なんていいんでしょうか!?」

『Home,I'm Darling~愛しのマイホーム~』チラシ

──今作への出演依頼があったときのお気持ちから聞かせてください。

シアタークリエで海外戯曲といえば、『ナイスガイinニューヨーク』以来。「久々だなぁ」と思って詳しく聞いていくと、イギリスの戯曲で、鈴木京香さんの旦那役だとわかって。「えっ、俺?」「俺でいいんですか?」「京香ちゃんの旦那役ですよ。俺ですか?」と、何度も聞き返してしまいました(笑)。本当に俺が京香さんと夫婦役なんていいんでしょうか……と、いまだに思っています。

──鈴木さんとは、舞台『鼬』のほか映像でも共演されていますが、どんな印象ですか。

京香さんと初めてご一緒したのは、18年前のドラマ『熱烈的中華飯店』でした。それ以来、ご一緒する度、観客や視聴者として拝見する度、美しさはもちろん、どんどん「鈴木京香」という唯一無二の存在感と輝き、女優としての魅力が増大している印象です。繰り返しになりますが、そんな京香さんの旦那役が俺で、本当にいいんでしょうか(笑)。

──鈴木さんは高橋さんについて、「頼りになる」とおっしゃっていましたよ(笑)。

いやいや、僕のほうがいつも頼りにしているんですよ。ご一緒した舞台『鼬』でも、底辺から這い上がって生きてきた女性を、ときには凄みのある迫力で演じ、僕たちを引っ張ってくれました。また、その舞台は日本の貧しい寒村を舞台にした、映画で言うなら“モノクロ”の世界でしたけど、今回はポップなビジュアルですから、“総天然色カラー”の世界に飛び込むようなもの。戯曲は“奥さん主導”の夫婦が描かれていますので、戯曲同様に僕も、“京香さん主導”で付いていって、その世界を楽しみたいと思っています。

──戯曲や、ジュディとジョニーの夫婦像についてはどう感じておられますか。

この夫婦はなぜ50年代のライフスタイルを愛するようになったのか、何かからの逃避なのか、真意は何なのか、またこの亭主はそれをすべて受け入れているのか等々、実は奥底に謎解きの要素もたくさんあるような気もしています。そこは稽古場で、演出の白井晃さんや共演者の皆さんと話しながら、探求していければなと思っているんですけど。ただ、特殊な趣味の夫婦、変わったシチュエーションということではなく、ごくごく“普通の夫婦”として演じたいと、今は感じています。

──その演出の白井さんの印象を聞かせてください。

僕は若い頃に白井さんの劇団をよく拝見していて、ドラマでチラリと役者同士としてご一緒したこともあるのですが、舞台で演出を受けるのは初めて。戯曲にじっくりと向き合い、丁寧な演出をなさることで定評のある方ですから、白井さんの方向性に委ねて稽古を積み重ねていけば大丈夫だと思っています。

──共演者の方々についてもぜひ。

青木さん、袴田さんとは初共演なので、稽古からじっくりと関係性を作っていきたいです。銀粉蝶さんは最近では舞台『女の一生』でご一緒しましたし、昔から数多く舞台を拝見してきた大好きな先輩です。江口さんは、『鼬』メンバーですが、とにかく今、人気ドラマには欠かせない存在で勢いがすごいですから! そして今度は僕の上司なので、どういうパワーバランスが見えてくるのか、想像しただけでも面白いですよね。稽古が楽しみです。

──最後に、劇場に来られる方にぜひメッセージをお願いします。

世の中はまだまだ予断を許さない状況でありますが、僕たちもしっかり対策をしながら、稽古を重ね、開幕を目指していく覚悟です。この1年あまり、“稽古して幕が開いてそこにお客様がいる”という当たり前だったことが、実は特別なことだったんだと再認識し、演劇はお客様がいて初めて完成するんだということを強く感じています。だからこそなおさら、こんな状況でも「劇場に行きたい!」「この芝居が観たい!」「観てよかった!」と思っていただける作品づくりをしていきたいと思っています。この“総天然色カラー”の別世界をぜひ楽しんでください。そして、ライブで観る鈴木京香さんの魅力をご堪能ください。



取材・文:大内弓子



『Home,I'm Darling~愛しのマイホーム~』
2021年10月20日(水)~2021年11月7日(日)
会場:東京・シアタークリエ
その後、兵庫、大阪、愛知、山形、岩手、宮城公演あり

★公演概要・視聴チケット詳細はこちら からご確認ください。 
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