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松本穂香は「意外と肝が座っている」!? 『わたしは光をにぎっている』中川龍太郎監督が秘話明かす

リアルサウンド

19/10/23(水) 23:30

 映画『わたしは光をにぎっている』の完成披露試写会が10月23日にスペースFS汐留で行われ、キャストの松本穂香、渡辺大知、徳永えり、光石研、監督の中川龍太郎が登壇した。

参考:ほか撮り下ろし写真はこちらから

 第39回モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した『四月の永い夢』を手がけた中川監督の最新作となる本作。両親を早くに亡くした20歳の宮川澪が、長野・野尻湖のほとりから父の親友であった京介を頼って上京し、彼が1人で経営する銭湯の仕事を手伝うように。銭湯にたむろする常連客たちと次第に親密になっていき、東京での日々が少しずつ楽しくなっていく。しかし、銭湯が近いうちに閉店する運命にあることを知った澪は、ある決断をする。

 変化する時代と町を描こうと思ったきっかけについて、中川監督は「僕は、神奈川の登戸という町の出身で、昔は下町らしい雰囲気が残っていて、失恋した時に地元の床屋に慰めてもらったりした思い出の場所なんです。だけど、久々に行ったら、町ごとなくなって箱のような家が林立していたんです。『これは僕の故郷でもなんでもない』と傷ついたのが本作を撮るきっかけなんです。もともと、その街で母と父が出会って、僕が産まれて、祖父に銭湯に連れて行ってもらって……という世代間のコミュニケーションができた場所なのに、その場所自体がなくなってしまった。しょうがない部分もあるとは思うんですけど、そのことに、今まで生きてきた一部が破壊されたような感覚を覚えて、本作を撮る原動力になりました」と思いを語った。

 そんな本作で、初めて都会の生活を送り、いろんな人たちに出会い、居場所を見つけていく主人公・澪を演じたのが松本だ。自身と当て書きで作られた澪との共通点を聞かれると、「私も澪と同じで、器用な性格じゃないですね。脚本を読んでいても心に刺さるものがあって。監督はそういうところもわかった上で、私に澪を演じさせてくれたのかなと思っています」と語った。

 中川監督は、松本との出会いについて「松本さんが東京に出てこられた時にたまたま知り合って、久々に会ってみたらだいぶ変わっていて……」と振り返ると、渡辺は「(東京に)染まった?」とツッコミ。中川監督は、「染まったのかもしれないね(笑)」と苦笑しながら返し、会場は笑いに包まれた。

 松本は澪について、「どこかちょっと甘えて生きてきたところもあって、パッと見、弱々しい人に見えるけれど、そんなことはなくて、芯の強い子なのかなと思って演じていました」とコメントし、自身と共通する部分を尋ねられると「『意外と肝が座っているよね』って言ってもらうことはありますね。あんまり深いこと考えていないのかもしれない……。『頑張ればなんとかなるだろう、なんとかしなきゃ』という気持ちで生きていますね」と答える。そんな松本に、中川監督は「根っこにある気の強さみたいなものは、松本さんにも、澪にもあるように感じますね。僕は、松本さんに『澪は私だから』って怒られましたから」と現場でのエピソードを披露すると、松本は「そんな言い方してないです!(笑)」と反論。さらに、渡辺が「監督が澪になろうとしていたんですか?」とボケて、会場の笑いを誘った。

 また、本作を観た時に涙を流したという松本は、「すごく暖かい気持ちになりました。あんなに客観的に自分が出ている映画を観れたことがなかったので、不思議な感覚になりましたし、終わり方もすごく好きで、この映画に出れてよかった、いろんな人に愛されるといいなあと思いました」と振り返った。

 澪と東京で仲を深めていく映画監督の青年・緒方銀次を演じる渡辺は、監督が作品で描きたかったことを体現している役なのではという質問に対し、中川監督は、「前作『四月の長い夢』で(仲野)太賀に紹介してもらったんです」と渡辺との出会いを振り返り、「大知くんは、監督業や音楽業もやっていたりと、あらゆる表現の手段を持っている方。そういう人にこの役をやってもらいたいと思っていました。仰ったように自分自身を投影した役なので、誰にお願いするのか考えた時に、あんまりいい男にしてもおかしいし、カッコよすぎるのもどうなんだろうと考えていて……」と発言すると、渡辺は「ちょうどいい男ってことですかね」とツッコミ。中川監督が、「アーティスティックでいろんな可能性を持っているということです!(笑)」と慌ててフォローする一幕も。

 そんな中川監督に、渡辺は「監督はさすがだなと思いました(笑)」とコメントし、「僕も映画監督の役ということで、監督の投影なのかなと思ったんですが、それを忘れて脚本を読みました。中川監督を真似するのではなく、自分自身のしゃべりや体を使って表現できる緒方銀次がどういう男か考えていたんですが、作品を観ると言葉の節々に中川くんらしさが出ていて、アーケードを観てちょっと悦に入って喋っているシーンとかは、中川くんが言いそうだなと思ったり(笑)。作中の緒方銀次も、なくなり始めている町を少しでも記録したいとカメラを回し続けている役ですが、本作を観て、今回の映画はそういうことだったんだと改めて思いました。なくなったり、変化したりする町を残せるって映画の力だと思うので」と語った。

 松本が働くことになる銭湯の店主・三沢京介を演じた光石は、松本との共演について「二人でお掃除をする演技のような、素の動きが出るシーンを一緒にやれたのが嬉しかった」と語り、「松本さんとは何度目かの共演になるんですが、電車で現場に来られるんですよ。その時点でもう役になりきっているんじゃないかと感じました。渡辺さんや徳永さんたちと銭湯に来るシーンでも、自然にみんなが和気あいあいとしている姿が印象的でした」とキャストの演技を絶賛した。

 一方、光石演じる三沢京介が酔っ払っているシーンのリアルさについて、徳永が「ナチュラルでしたね!」、中川監督が「国宝にできる」と称賛すると、照れ臭そうに「何年やってると思ってるんだ!(笑)」と返し、会場は再び笑いに包まれた。

 そして、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーからの「この国も捨てたもんじゃない。こんなに美しい日本映画を作る若者がいる」というコメントが読み上げられると、中川監督は、「もともと最初に作った時に、“飛べない時代の魔女の宅急便”にしようとスタッフやプロデューサーと話していたんです。若い人たちが質素で、消費や都市への憧れがなくなった時代の中で『魔女の宅急便』のキキのように堂々と誠実に生きて、光を見つけていくかというのがコンセプトだったので、鈴木プロデューサーにそう言っていただけるとありがたいです」と謝意を述べ、「ジブリに転職しようかな」と冗談も飛び出した。

 最後に松本は、撮影場所となった立石について「取材の撮影で改めて訪れてみて、町の人が優しくて、懐かしい感じがするし、距離が近いと感じました。そういう町ならではのホッとする感じがいいなと思います」と語り、最後に鑑賞者に向けて「今は、どんどん生きづらい世の中になってきているんじゃないかと思うんですが、いつ見つかるかはわからないけど、絶対に居場所はあるとこの映画を観て、感じました。この映画の中には素敵な光が散りばめられています」とメッセージを送り、完成披露試写会を締めくくった。 (取材・文・写真=島田怜於)

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