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でんぱ組.incは“新しさと原点”を示しながら進化を遂げる 3つのライブ映像から見えるグループの今

リアルサウンド

18/9/25(火) 18:00

 昨年末に新メンバーの鹿目凛と根本凪が加入し、新たな7人体制になったでんぱ組.inc。今年はライブを中心とした積極的な活動を続けており、9月26日に新体制で2作目となるニューシングル『プレシャスサマー!』と、ライブBD/DVD『COSMO TOUR2018』が同時発売される。これらのアイテムには、『COSMO TOUR2018』に2つのライブが収録され、『プレシャスサマー!』の初回限定盤A及びB付属のDVDにも夏のライブハウスツアーの映像が収められ、あわせて3つの異なるタイプのライブを見ることができる。それぞれのライブでテーマや見せ方が違っていて、3つ全部で今のでんぱ組.incの全体像が見えてくる、ともいえるだろう。この原稿では、ライブの面からでんぱ組.incの魅力を探っていくことにする。

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 まずは『COSMO TOUR2018』のディスク1、江戸川区総合文化センターでのライブ。新体制での初のツアーで、“新しいでんぱ組.inc”を強く印象づけるライブとなった。「ギラメタスでんぱスターズ」からスタートし、「ムーンライト伝説」「Ψ発見伝!」「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」と、7人になってから生まれた曲をライブの前半で披露しており、ブランニューな部分を強調している。

 でんぱ組.incのライブパフォーマンスというと、メンバーが演技をしながら入り乱れてカオスになっていく、いわゆる“わちゃわちゃ感”が大きな魅力で、7人になってその部分のおもしろさがいっそう増した。メンバー構成的には旧体制から1人増えただけなのに、こんなに違うのかと思えるくらいだ。「ギラメタスでんぱスターズ」ではステージを走り回るスピーディーなアクションの中で鹿目凛がバスケットボールのゴールを決めていたりして、雑然とした楽しさがよく表れている。さらに「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」での、ダークファンタジー的な世界観を表したような寸劇風パフォーマンスは極めて斬新で、すべてが意味深としか言いようのない独創的な振り付けに惹きつけられてしまう。この曲など、今の7人でなければできなかったと思える。

 新メンバー2人の個性も大きく、根本凪の太い声でダイナミックに歌うボーカルも、鹿目凛のキュートなぶりっ子ボイスも、これまでのでんぱ組.incにはなかった。2人の加入によって、グループが生まれ変わったかのようにフレッシュだ。“宇宙”のコンセプトでステージセットや映像を統一した演出も含め、新しいメンバーによる新しいライブの形を見せたのが、このツアーだといえるだろう。

 続いて『COSMO TOUR2018』のディスク2、河口湖ステラシアター。この公演は全曲でバックバンドが参加し、ツアー本編とはセットリストも大きく異なってほぼ別物のライブだ。ツアー本編が新体制のお披露目的な意味合いとするなら、次の段階にステップアップした位置付け、ということになるだろうか。過多な演出もなく、メンバー7人全員が並列で、でんぱ組.incのライブの魅力をストレートに見せたものになっている。

 オープニングでは古川未鈴と東京打撃団の2人が強烈な和太鼓ビートを叩き出し、そのまま「でんぱれーどJAPAN」へと移行していく流れがいきなり圧巻。そして弦楽器や管楽器を含む7人編成のバンドによる分厚くダイナミックなサウンドはやはり素晴らしく、楽曲がいっそうエネルギッシュに迫ってくる。夏曲メドレーで新曲「プレシャスサマー!」を初披露したり、ラストには雨が降る中で花火の打ち上げがあったりと、見どころも多い。しかしそうしたこと以上に、パワーアップしたメンバーとバンド編成という、ベストの布陣で最大限のパフォーマンスを示したことに尽きるライブだと思う。個人的にはこれが今年の彼女たちのベストライブである。

 もうひとつはシングル『プレシャスサマー!』に収録される、『東北ライブハウス大作戦 presents 東北でんぱ大作戦!』だ。8月上旬に東北3カ所のライブハウスを回ったツアーを収録したもので、キャパ150~250人程度のハコででんぱ組.incがワンマンライブを行うのは、実に久々のことだった。

 レア曲を連発したりメンバー同士のユニット曲を披露したり、至近距離だからこその一体感など、このツアーだけのスペシャル要素が満載。後方の観客が見えづらいからとお立ち台を使っていたのも新鮮だったし、観客もいつもよりコールやMIXの声が大きく、ノリがパワフルだ。その光景を見ていて、彼女たちのホームである秋葉原ディアステージでのライブに近い感覚があった。そもそも彼女たちはこうした濃密な現場で熱量の高いライブをしてきたグループで、観客の方もヲタ芸やサイリウムなど秋葉原文化を育んできた歴史がある。その文化は今も守られているし、ライブの熱量も失われていない。いわば、演者と観客が生み出す独自の祝祭的な空間。だからでんぱ組.incのライブは無二の強さがあるのだ。そうした原点を感じさせてくれるツアーだったと思う。

 今回の3タイプのライブを総じていえば、新しさと原点の両方を示しつつ進化を遂げている、ということになるだろう。その新しさというところで、現時点での最新型がニューシングル『プレシャスサマー!』だ。表題曲はでんぱ組.incではおなじみのWiennersの玉屋2060%が久々に手がけた曲である。ハードコアっぽい破壊力にあふれた演奏が高速ビートで突き進み、歌詞を聞き取るのが追いつかないくらい速い。なのにメロディは親しみやすくてキャッチーで泣きの要素も入っているという、玉屋の本領発揮といえる曲だ。こうしたカオス曲はでんぱ組.incの真骨頂でもあり、それを更新した感が強い。カップリングは「エバーグリーン」がメロディアスなポップス、「かぼちゃタンデム」がミュージカルっぽいファンタジックな曲で、3曲すべてタイプが異なるというのもでんぱ組.incらしい。新体制2作目にしていよいよコアな真価を発揮していて、この先の彼女たちはいっそうおもしろくなっていきそうだ。(小山守)

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