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和田彩花の「アートに夢中!」

『イサム・ノグチ 発見の道』

毎月連載

第59回

6月1日より、都内の多くの美術館が再開となりましたね。1か月以上、美術館に行けない日々が続いていましたが、今回は再開されたらぜひ見たい!と思っていた『イサム・ノグチ 発見の道』についてご紹介したいと思います。

イサム・ノグチ《黒い太陽》1967-69年 スウェーデン産花崗岩 国立国際美術館蔵 ©2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS,NY/JASPAR,Tokyo E3713

彫刻家として知られているイサム・ノグチですが、その仕事は彫刻だけにとどまらず、照明などのプロダクトデザインや、舞台美術などにも大きな足跡を残しています。日本人の父とアメリカ人の母を持ち、戦争を経験し、東西のアイデンティティの葛藤に苦しみ、翻弄されながら、独自の彫刻哲学を打ち立てた人です。

イサム・ノグチ©朝日新聞社

彫刻というと、私のイメージは箱根にある彫刻の森美術館なんです。ここで彫刻の面白さというものを知りました。

彫刻は空間を支配するような時もあれば、空間に溶け込んで、私たちを癒してくれたり、遊びの道具になったりもします。絵画も空間を確かに支配する時はありますが、基本的には、作品そのものを見て楽しむもの。そして空間の見え方を一気に変えてしまう力があるのが彫刻。また絵画にもいろいろな画材やサイズもありますが、彫刻の方がもっとその材料や質感、量感といったものが感じやすいと思います。

イサム・ノグチ 《ねじれた柱》 1982-84年、玄武岩、イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵(公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与)、撮影:齋藤さだむ ©2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713

イサム・ノグチはニューヨークと香川県高松市牟礼町にアトリエを構え、この二拠点を往還しながら、個々の場所を生かして制作をしていました。特に香川県は、1956年にはじめて訪れ、その地で産出される花崗岩・玄武岩に魅せられ、1969年にアトリエを構えることになりました。晩年の約20年間、毎年数か月ほど滞在しながら、制作に励んだそうです。

ちなみに香川県のアトリエは現在「イサム・ノグチ庭園美術館」として一般公開されています。私もぜひ行ってみたいと思っている場所です。

「石」というのはどこにでもある素材ですが、これまで石の作品と向き合うとき、特に素材について意識していなかったような気がします。でも、とても身近とは思えない有名作家の作品でも、実はものすごく身近で素朴な素材で作られていたりするんですね。そう思うと、肩の力を抜いて見られるかもしれません。

それに石ってこんなにもいろんな表情があるんだと気付かされそうです。色はもちろんですが、切り方や削り方によってざらざらだったりツルツルだったり。そういう素材の表情の違いを楽しめるのも彫刻ですね。

イサム・ノグチ 《発見の道》 1983-84年、安山岩、鹿児島県霧島アートの森蔵 Photo:Kevin Noble ©2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713

今回イサム・ノグチの作品を改めて調べてみると、本当にシンプルだなと思いました。素材そのものの色や、質感、量感がダイレクトに伝わる作品が多く、そのシンプルさが余計に造形を感じさせ、考えさせられるというか、難解に思える部分でもあると思いました。

日本とアメリカの血を引き、それぞれの文化や社会の違いをその身で体験し感じていたイサム・ノグチ。その作品には特に日本の伝統や文化からの影響が大きく反映されていると言われていますが、そういった彼のアイデンティティについても理解した上で、今回の作品と対峙してみたいなと思いました。

なかなか外に出づらい状況が続きますが、今回、展覧会を見ることができていない状況でアーティストや作品について調べたり、話しをしたりすることもとても楽しい時間でした。何も知識を入れないで作品と向き合うことが大切な場合もありますが、やっぱり事前に下調べをすると「見たい」という気持ちがさらに強まりますね。「イサム・ノグチ展」は再開したので、早く美術館に足を運びたいと思います。

開催情報

『イサム・ノグチ 発見の道』
2021年4月24日(土)~8月29日(日)、東京都美術館にて開催中
https://isamunoguchi.exhibit.jp
※日時指定予約制

彫刻、舞台美術やプロダクトデザインなど様々な分野で大きな足跡を残した20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチ。本展では、国内外の多数の大型作品や「あかり」を含めておよそ90件の作品を紹介しながら、その集大成ともいうべき晩年の石彫作品にいたるまでのノグチの「発見の道」をたどり、ノグチ芸術のエッセンスに迫っていく。

構成・文:糸瀬ふみ 撮影(和田彩花):藤田亜弓

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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