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いま、最高の一本に出会える

コブクロが伝えた、20年分の感謝と未来への決意 3時間超えの熱演見せた20周年ツアー

リアルサウンド

19/8/29(木) 17:00

 コブクロ結成20周年を祝う『20th ANNIVERSARY TOUR 2019 “ATB”』が、5カ月に及ぶ長い旅を終え、8月24日の台北公演でフィナーレを迎えた。国内では3月20日の長野から7月21日の大阪まで、日本武道館や京セラドーム大阪を含む大会場を巡り、5年ぶりの海外公演で中国の上海と台湾を訪れた大規模なツアーは、最新ベストアルバム『ALL TIME BEST』を引っ提げて臨んだ、まさにベスト・オブ・ベストなもの。いつまでも思い出に刻まれるツアーの記録として、6月30日、さいたまスーパーアリーナ公演のステージを記録しておこう。

参考:コブクロ、欅坂46曲カバー経緯明かす「パンクバンドがメッセージを伝えるような勇気が突き刺った」

 開演時刻の午後4時、頭上のスクリーンに映し出される“サンドアート”の妙技にいきなり引き込まれる。サンドアートは砂を使い手で絵や文字を描いていくパフォーマンスで、のちにライブ中に明かされるのだが、会場内の別室でリアルタイムで制作されている。ギター、マイク、人、そして桜の木など、コブクロの歴史をビジュアライズする魔法の指先に驚嘆したあと、客席の間を抜けて黒田俊介と小渕健太郎が登場。さいたまスーパーアリーナの、回る円形ステージと4本の花道はコブクロ仕様としてすっかりお馴染みだ。中央に立つ二人が軽く拳を合わせ四方に礼をすると、小渕がおもむろにアコースティックギターを爪弾き、黒田が歌い出す。1曲目は「桜」。20周年記念ライブを、二人の始まりの曲から始めるという直球勝負がコブクロらしい。小渕のアコギはいつも以上にエモーショナルで、黒田の声は張りすぎじゃないか? と思うほどに情熱的だ。

 「桜」を含め、冒頭4曲は全てインディーズ時代からのレパートリーだ。「DOOR ~ The knock again ~」はミドルバラードながら非常にソウルフルな熱さのある曲で、小渕のアクションの激しさ、黒田の歌のパワーが尋常じゃないと思ったら、歌い終えた瞬間に黒田が放った「小渕さん! まだ2曲なのにアクセル踏みすぎ!」という言葉に全員大笑い。小渕も苦笑い。小渕が煽って黒田が倍返しする、きっとストリートでこの曲を歌っていた頃もこうだったのだろう。

 爽やかでポップな「LOVE」の柔らかいストロークを刻みながら、小渕が「このくらいでいいよね?」と笑っている。明るいアップテンポの「ボクノイバショ」からはパーカッションが加わり、「太陽」ではギターとベースも参加して、演奏が一気に厚みを増してきた。小渕が「行くぞさいたま!」と観客を煽る。満員の観客は七色のペンライトを振って応える。曲を締めくくる、小渕の超ロングトーンもばっちり決まった。ドラムとストリングスが加わった「YELL~エール~」では、オールディーズポップ風のあたたかい曲調に合わせ、幽玄に明滅する吊り下げ型の照明が美しく揺れる。最初のセクションでは、20年の歴史の初期を彩る名曲たちをたっぷりと聴かせてくれた。長く楽しい夜になりそうだ。

 最初のMCで、小渕が本日の入場者・20396人への感謝を述べる。この会場でちょうど20回目の公演ということで、「縁起がいいね。結成20年、20回、大阪ではG20もやってる(笑)」と黒田がボケる。なごやかなムードの中、しかし20年のうちにはつらい出来事もあり、最初の東京・渋谷公会堂公演では客席が半分しか埋まらなかったことに触れ、「最高の演出は満員のお客さんです」と小渕がしみじみ語る。全ての人に向けて全力で歌うことがコブクロの原点。それが今の僕らを作ってきたと胸を張る、小渕の言葉に迷いはない。

 ここからは、ドラマチックバラード三連発。黒田がリードを取り、若い恋心が激しく揺れ動くさまを描く「赤い糸」。小渕のリードで黒田がサビを歌う、片思いの切なさと和風情緒香るサウンドが寄り添う「未来」。二人のソロと息の合ったハーモニーが楽しめる、遠く離れた恋人へ贈るロックバラード「Twilight」。バラードにも関わらずこの迫力と音圧、そしてせつない恋歌なのに、いつかこの恋は報われるだろうと信じさせてしまうような、黒田の圧倒的なパワーボイス。小渕の描くロマンチックな世界観の中で黒田が武骨な生き様をさらす、コブクロのバラードはいつだって儚く切なく、しかし激しく力強い。ストリートで最初に黒田の歌声を聴いた時、あまりの衝撃に動けなかったという小渕も、「最初に黒田の声を聴いた時と、今日の歌は、ほぼほぼ近い」と相方を絶賛した。常にそばにあると気づかないものだが、小渕と黒田の出会いはやはり一つの奇跡と言っていい。

 「ここからはみんなの盛り上がりにかかってますよ!」と、小渕が観客を煽る。バラードセクションのあとはアップテンポへと一気にモードチェンジ、「宝島」では小渕がエレクトリックギターをかき鳴らし、黒田が花道へ飛び出す。軽快なカントリーロック調の「轍‐わだち‐」では、恒例の大合唱で会場全体が一つになる。スピード感たっぷりのドライビングソング「tOKi meki」ではカラフルな大玉風船が登場し、「Moon Light Party!!」では七色のペンライトが輝く中、小渕が盛り上げの手を緩めないせいでコール&レスポンスがいつまでも終わらない。もちろん観客も大歓迎だ。ハードロックな「神風」ではスモークが吹き上がり、バンドメンバーも次々と花道へ飛び出してソロを決める。バラードもいいが、ロックなコブクロも最高にハマってる。

「大切な歌がまだあります。10周年の時に書いた、絆と出会いの歌を、20年目で歌えるのが嬉しいです」(小渕)

 曲は「時の足音」。情感豊かなストリングスと、心を込めた二人の掛け合いが素晴らしい。この時点でたぶん、小渕の中にこみ上げるものがあったのだろう。「蕾」の途中で感極まり声を詰まらせた小渕のあとを、当然のように黒田が歌い継ぐ。「風をみつめて」では小渕がかすれそうな声を振り絞り、一歩ずつ前に進む決意を歌う。「蕾」も「風をみつめて」も、植物の生命を人の生き方に重ね合わせる歌だ。雨降りでもビルの谷間でも、きっといつか咲く日を待つ。やがて光溢れる雨上がりのシーンに至る、壮大な風景が胸の中に広がってゆく。

「20周年を無事に迎えられました。二人だけで続けられた自信はありません。みなさんのおかげです。この喜びを胸にこれからも頑張っていきます」(小渕)

 20周年記念日をタイトルに冠する「20180908」は、昨年9月16日に宮崎のライブで初披露された楽曲。20年分のありがとうを持って、今ここに立てる喜び--。物語ではなく、飾らない独白のような言葉がいい。続いて歌われた「晴々」も20周年記念曲で、過去のコブクロ曲の歌詞を織り込んだ楽しい歌詞、躍動感あふれるロックサウンドで、まだまだ続く二人の未来の希望を高らかに歌い上げる。会場内は青いペンライトの光で美しく染まった。ラストは派手に銀テープを発射し、大歓声と拍手に包まれた笑顔溢れるエンディングへ。本編は19曲、3時間近い熱演だが無駄なシーンは全くない。20年の歴史をしっかり凝縮し、コブクロの原点と現在と未来を見通す力のこもったパフォーマンスだ。

 アンコールは2曲。あらたまって黒スーツに着替え、小渕が「路上ライブでいつもやっていた歌を」と前置きして歌った「ココロの羽」の、ゆったりとフォーキーな曲調が、本編で盛り上がり切った観客の心を優しくクールダウンする。スクリーンではサンドアートが、天使の羽を描いている。小渕がアコギを弾くのをやめ、最後は感動的なアカペラのコール&レスポンスになった。20396+2人の歌声が、広いスーパーアリーナをゆっくりと満たしてゆく、忘れがたいワンシーン。そして本当のラスト曲は「ANSWER」。ワルツのリズムに乗ったバラードで、3時間以上歌ってもまるで衰えない力強い歌声が素晴らしい。変わり続けるために、変わらずにいるよ――。サンドアートが“20thありがとう”とメッセージを描き出す。歌い終えた小渕と黒田が笑顔で手を振る。満足感でいっぱいの、しかしまだまだ続く使命感を持った引き締まった顔つきだ。

 音楽にマラソンのようなゴールはなく、音楽シーンにはまだまだ、はるか先を走る年上のアーティストはたくさんいる。20年という通過点を経て、コブクロがどこまでゴール地点を伸ばし続けるか。その決意と自信をしっかり見せてもらった素晴らしいライブだった。(宮本英夫)

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