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光石研が語りかける“支える”という仕事 『エール』音に天啓のような出会いが訪れる

リアルサウンド

20/4/7(火) 12:00

 裕一(石田星空)が鉄男(込江大牙)の詩にメロディを付けていたころ、裕一の運命の相手も福島に来ていた。第4回で、裕一が関内音(清水香帆)に教会で偶然出会うシーンは、父の仕事で川俣を訪れた音が、賛美歌を聴いて聖歌隊に参加したときのものだった。

参考:柴咲コウ「音楽には人生を変える力がある」 『エール』オペラ歌手を演じる上での取り組み

 『エール』(NHK総合)第7回では、ヒロイン・音が登場する。後に裕一と夫婦になる音は、豊橋で馬具を製造販売する関内安隆(光石研)と妻・光子(薬師丸ひろ子)のもと、個性豊かな三人姉妹の次女として育つ。

 元陸軍の獣医で「馬のように優しい」安隆に対して、音の性格は天真爛漫。音は「女、子こども」という言葉が大嫌いで、「『男、子ども』って誰も言わんのに」というのがその理由だった。時代は大正デモクラシー。平塚らいてうの「元始女性は太陽であった」という言葉に象徴される男女の平等が主張されるようになっていた。

 おかっぱ頭に袴という出で立ちで、時代の空気を胸いっぱいに吸い込んだ音は、学校でも自分の意見を積極的に発信。「女子が輝ける出し物をやった方がいいと思います」と言って、女子クラスの全体を巻き込み、学芸会の演目を『浦島太郎』から『竹取物語』に変えてしまう。

 かぐや姫になった自分を想像していた音だったが、割り振られたのはおじいさんの役だった。どうやら「生意気」な音は大人たちから目を付けられてしまったようだ。小岩井教頭(内藤トモヤ)が担任の熊谷(宇野祥平)に「最近の子どもは変に知恵があっていけませんなあ」と眉をしかめる場面もあり、大正デモクラシーとは言いながらもまだまだ封建的な考えが主流を占めていた。

 落胆する音に、安隆は「音がかぐや姫だったら、おじいさん役は誰かほかの人がやるんだよな。その人がいやいや演じとったらどう思う?」と問いかける。「人にはみんな役割がある。誰もが主役をやれるわけじゃない。だけど、主役だけでもお芝居はできん。必ずそれを支える人がいるんだ」。名バイプレイヤー光石研の金言、もとい娘の気持ちを受け止めた父のエールによって音は元気を取り戻す。

 かぐや姫のセリフをそらんじる音とそれを見つめる安隆の姿は『竹取物語』のかぐや姫と竹取の翁のようで、音の未来を暗示しているようだった。第7回の終盤では、音に天啓のような出会いも訪れる。支えることの意味を知り、ヒロインとして輝きを放つ音の前にはどんな未来が待っているのだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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