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「真実」是枝裕和がカトリーヌ・ドヌーヴの魅力語る「嘘がない」

ナタリー

19/10/25(金) 23:07

「真実」ティーチインイベントより、是枝裕和。

「真実」のティーチインイベントが本日10月25日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で開催され、監督の是枝裕和が登壇した。

フランスの国民的大女優ファビエンヌと、その陰で複雑な思いを抱えて生きてきた娘リュミールの愛憎を描く本作。ファビエンヌをカトリーヌ・ドヌーヴ、リュミールをジュリエット・ビノシュが演じ、リュミールの夫ハンクにイーサン・ホークが扮した。

登場すると「なるべく長めにQ&Aをやろうと思っているのでさっそく始めましょう」と是枝は観客から質問を募る。まず助監督についての話を振られた是枝は、トラン・アン・ユンのデビュー作品からずっと助監督として参加している人物・二コラが、同じく助監督として今回の現場に入っていたことを明かした。「トランが『シクロ』という映画でヴェネツィアの金獅子賞を獲ったとき、僕は『幻の光』でそこに行っていたんです。年齢が同じこともあったし、いろんな映画祭でお会いして仲良くなったんですが、彼の現場はすごく大変だとうわさに聞いていました」と前置きし、「助監督候補としてニコラにお会いして、そんな現場をちゃんと何本もやれたのだからいい人なんだろうなと」と採用の決め手を説明。「ニコラに決めたら、トランから『素晴らしい助監督だから君の力になってくれると思うよ』と連絡が来ましたね」と言い、「トラブルをまとめてくれるポジションでいてくれたので僕は演出に専念できました」と感謝を込めて振り返る。

また「カトリーヌ・ドヌーヴさんはファビエンヌのように面倒くさい人ではなかったですか?」とストレートな質問が飛ぶと、困ったように笑った是枝は「面倒くさいかどうかで言えば、面倒くさいんだけど……」と回答。しかし「ただそれだけだったら彼女のことはみんな好きにならない。クランクアップの日には、キャストもスタッフもみんな彼女のファンになってるのがすごいところです」と現場を思い返していた。「もちろんいいお芝居をされるというのもあるし、人柄に嘘がないです。いいお芝居ができたときは子供のようにうれしそうにするし、早く帰りたい日ははっきりそう言うのでごまかしがない」と楽しげにドヌーヴの魅力を語り、「僕は不快に思ったことは一度もなかった」ときっぱり。続けて「毎日遅刻して楽屋に入るんですが、『昨日寝れなかったのよ』とか『いいお芝居ができないかも』とか予防線を張っていて。途中からはそれがちょっとかわいくなってきちゃうぐらい、楽しい方でした」と述べて笑顔を見せた。

吹替版と字幕版を鑑賞したという観客から、以前の舞台挨拶で是枝が印象的な場面として挙げていたという中華料理屋のシーンについて、より深い説明を求められる一幕も。是枝は「ファビエンヌの近くの席に座っている家族がよかったという話ですね。ある女性を家族でお祝いしていて、彼女が送ってきた人生とファビエンヌの人生が対照的な感じがとてもよく出ている」と話し出す。「もともとは店主がファビエンヌとやりとりするシーンがあったんですが、向こうの家族の方が強烈だったのでこの会話はいらないなと。ワンテイク目じゃないんですけど、本当にあの人たちがたまたま店内にいただけなんじゃないかって気がするくらい自然で素敵でした。ああいう形の出演が映画を豊かにしてくれるんですよね」と目を細めた。

また「是枝作品と文学の関係性は?」と尋ねられると、「文学と映画は違うものだと思ってる。原作がある映画は自分では向かないなと思っているのであまりやらないんです。僕が小説として好きなものは映画化に向かないというか、文体そのものの面白さを追求しているものが多いので……。長編小説を省略しながら2時間の映画にというのは僕には向いていないですね」と答える。さらに劇中劇はケン・リュウの短編「母の記憶に」を原作にしていると言い、「短いので劇中劇で使うのによかったです。ふくらましすぎると魅力が減っちゃうので」と話した。最後に11月1日より順次公開される特別編集版についても言及。「個人的には愛蔵版と呼んでいます。ダメな男たちのシーンが捨てがたかったので、編集で削いでしまったものを残したバージョンを仕上げました。イーサン・ホークの魅力が爆発しています。あのダメさ加減がいいんだよね……」と言って観客たちをうなずかせていた。

「真実」は全国公開中。特別編集版は東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開される。

(c)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA Photo L. Champoussin (c)3B-分福-Mi Movies-FR3

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