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BTS RM、新たな道を切り拓くリーダーとしての役割 今の時代に支持される“ラップモンスター”のメッセージ

リアルサウンド

20/12/13(日) 10:00

 BTSが『2020 Mnet ASIAN MUSIC AWARDS(通称:MAMA)』で、9冠を達成した。「Dynamite」で米ビルボードHot100で1位を獲得し、グラミー賞の最優秀ポップデュオ/グループパフォーマンス部門にノミネート。2020年はまさに「世界のBTS」を確立した年だ。

BTS(방탄소년단) at 2020 MAMA All Moments

 そのBTSのリーダーを担っているのが、RMだ。最年長ではない彼がリーダーに任命されているのは、誰もが認めざるを得ない圧倒的な“才”の持ち主だからだ。高校生でIQ148を記録し、英語を学べば独学でTOEIC900点に手が届く。大学修学能力試験(スハン)の模擬試験では全国上位1%に入ったことも。彼の流暢な英語があってこそ、BTSの活躍は世界へ広がったといっても過言ではない。

 努力を重ねられる“秀才“であることに加えて、彼は感性の人でもある。繊細な感覚で自分自身の、そして周囲の人の痛み、苦しみを察知してしまう。だからこそ、それを開放する表現がRMには必要だった。自らを怪物化させ、世の中の毒を制する。それが“ラップモンスター”が生まれた理由ではないだろうか。

 「9歳、いや10歳の時俺の心臓は止まった」とは、RMが1st MINI ALBUM『O!RUL8,2?』のイントロ「INTRO:O!RUL8,2?」で紡いだ言葉だ。国連総会で行なったスピーチでも引用されたこの言葉通り、9〜10歳で彼は世界を取り巻く大きな矛盾とぶつかる。大人は「人生を楽しめ」と言うけれど、実際に求められているのは社会の枠に収まる人生ではないだろうか。

INTRO : O!RUL8,2?
世界中の若者たちへ〜BTS防弾少年団が国連総会で行ったスピーチ /日本ユニセフ協会

 空想することよりも現実を見つめ、心の声よりも他人の声に耳を貸し、そして自分の目で世界を見ようとせずに瞳を閉じて生きていく……RMも一時期はそれを受け入れようとした。だが、ラップモンスターが本能に呼びかける、「目を覚ませ、自分自身の名前を呼べ」と。

 そして、小学校6年生でEPIK HIGHの「Fly」を聴きラッパーを目指す。

 誰もが、自分のストーリーを生きるべきだと。それが、RMが持つビジョン。そして、その想いを一貫してBTSというグループで表現してきた。「自分自身を愛そう」「たった一度きりの人生、誰のために生きるんだ」と叫び続ける。その歌声は、社会が成熟するほどにシステムの一部に組み込まれているような感覚を抱く現代人に対して「目覚めろ」と言っているようだ。

 もしかしたら、それはリスキーなことだったかもしれない。それこそ、作られた「アイドル」という型にはまって活動したほうが無難だったかもしれない。でも、RMの中のモンスターがそれを許さなかった。実際に、アンチの声に悩んだことも。そして、BTSを取り巻く環境は、決して穏やかな日々ばかりではなかった。

 その様子にRMが心を痛めないわけがない。この道が正しかったのか。判断ミスだったのではないか……と、自問自答を繰り返しながら、それでも心の声を信じて走り抜けてきたのだ。世界中の人に届ける歌を歌うというのは、不安な顔をして目指せるような優しい道のりではないと覚悟していたから。

 それでも「forever rain」(プレイリスト『mono.』収録)には、「誰か僕の代わりに泣いてくれ」というフレーズがある。雨にまぎれるように涙を流すことしかできなかった日々。RMはこの曲を最も自分らしいと話している。泣くときは1人静かに、笑うときはたくさんの仲間と共に。そしてもがきながらもBTSだから描けるストーリーを体現していく彼らに、多くの人が我が身を振り返ったに違いない。自分は今、自分を愛し、自分の人生を生きているだろうか、と。

RM ‘forever rain’ MV

 私たちが生きる世界は、ジレンマでいっぱいだ。自分本位で生きるだけでは、社会の一員にはなれない。だが、誰かのために生きようとすると、自分らしくなくなる。そのなかで、自分の人生を生きることで、誰かのためになる道がある。そのジレンマを打破する新たな道を発見し切り拓いていくことが、アーティストの使命なのだとしたら。やはりRMは“才”あるリーダーとしかいいようがない。

 RMの歌詞が、BTSの作品が、世界規模で受け入れられているのは、それだけ意識的に生きようとする人が増えている証なのかもしれない。そして、この2020年という年に、これほどまでに支持を集めたというのは、誰もが完成された社会などないということに直面したから。システムの一部でいられない世の中になってしまった。誰もが戸惑い、孤独を感じ、雨の中で涙を流している。それがわかるから、RMは優しく諭す。

「この長い長い冬を抜けて、春の日が訪れるまで。共に生きぬいて。一緒に生きていけたらと思います。季節は巡り人生は続いていくのですから。いつか春の日が来ることを信じて」(『MAMA』受賞スピーチより)

 そんな完璧な存在に見えるRMも、モノを壊したりなくしたりという人間味あふれるギャップの持ち主。きっと世の中は、少し欠けているところを埋めようとして、面白いことが起こる。困難があるからアーティストが活躍し、高い壁があるから乗り越えたときの喜びがあるのだ。これもこの世界のジレンマと言ってもいいかもしれない。これからもRMの発信するメッセージに心を奮い立たせながら、それでも完璧にはならない自分を愛し、続いていく人生を生きていきたい。世界中が鬱屈とした2020年は終わりを迎えようとしている今、明けない夜はないと信じて。自分の瞳を開き、BTSと共に世界を見つめていこう。

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