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『ONE PIECE』『NARUTO』『約ネバ』など 日本の漫画やアニメがハリウッドで実写化される背景

リアルサウンド

20/6/30(火) 8:00

 先日、6月15日に『週刊少年ジャンプ』の連載を終了した原作・白井カイウ、作画・出水ぽすかによる大ヒット漫画『約束のネバーランド』が、Fox 21により英語版で実写TVドラマ化されることが決定した。

参考:『約束のネバーランド』海外でドラマ化 監督にロドニー・ロスマン、プロデューサーにマシ・オカ

 そしてここ数年、そんな日本のコンテンツがハリウッドで実写化される企画が、10年前に比べ圧倒的に増えた。その背景にはどんな理由があるのか? 今回は、特に日本の漫画やアニメをもとにハリウッドで企画されている映画と、企画倒れになった作品を通して、その理由を検証してきたい。

 もっとも、ここ日本映画自体が漫画やアニメの実写化の傾向が多く、2018年には漫画を原作とした日本映画が、ほぼ毎週のように公開されていたほどだ。なぜ、これほどまで増えたかと言うと、ここ10年間で漫画からの映像化が難しいと言われてきたハードルが、映像の技術的な面での躍進を経て、難なく乗り越えられたのが一つの大きな要因としてあるようだ。

 つまり、映像的にも原作の漫画に劣らぬ技術を高めてきたということだ。ハリウッドの大作を多く手がけるニュージーランドでピーター・ジャクソン監督が率いるVFXの制作会社、WETA Digitalでは、10年前は1年に2、3本のハリウッド作品に関わっていたものの、現在はその3、4倍の作品に毎年関わっていて、アメコミ作品の中でも、『X-MEN』シリーズ、『アベンジャーズ』シリーズ、『アイアンマン』、『デッドプール』などを手掛けてきた。さらに、ジョージ・ルーカス監督のVFX制作会社、インダストリアル・ライト&マジックは、カリフォルニア州のサンフランシスコの本社だけでなく、シンガポール、カナダのバンクーバー、イギリスのロンドンにも支社を置き、世界的な展開を果たしていて、日本の漫画のキャラクターも登場した『レディ・プレイヤー1』、『ドクター・ストレンジ』、『キャプテン・マーベル』などのアメコミ作品に携わった。

 一方日本では、映画『キングダム』、『BLEACH』を手掛けたVFX制作会社・白組、『宇宙兄弟』、『るろうに剣心』を手掛けたオムニバス・ジャパン、『鋼の錬金術師』、『アルキメデスの大戦』を手掛けたピクチャーエレメントなどが台頭してきた。要するに、多くのスタジオが、これらのVFX制作会社に技術的な信頼を置くようになった。

 次に大きな原因となるのは、オンライン動画配信サービスのNetflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオの成功だ。そして、これらに昨年から加わったDisney+、そして新たにHBO Max、Quibiなどが名乗りをあげた。これらのオンライン動画配信サービス会社を通して、何巻にも渡る漫画を2時間の映画で無理に描くのではなく、時間をかけて原作に忠実にTVシリーズとしても描けることから、漫画の著作権を保有する原作者や日本の会社から実写化への許可が降りやすくなったこともあるだろう。

 まず、そういった技術的な面や著作権の障害を乗り越えたのが、日本の人気アニメ『カウボーイビバップ』の実写映画化。2018年の11月にNetflixと制作会社トゥモロー・スタジオが共同で製作すると株式会社サンライズが発表し、テレビアニメで監督を務めた渡辺信一郎もコンサルタントとして参加することが決まった。キャストでは、映画『スター・トレック』シリーズのジョン・チョーが主役を演じている。だが、ジョン・チョーの怪我や新型コロナウイルスの影響で、配信は来年になると予想されている。

 続いては、2016年に日本で記録的な興行を叩き出した新海誠監督のアニメ『君の名は。』。米パラマウント・ピクチャーズと『スター・ウォーズ』シリーズのJ・J・エイブラムス監督の制作会社バッド・ロボットが、東宝と組んで実写映画化を進めている。もちろん、アメリカを舞台にするため、その設定も変わり、田舎に住むネイティブアメリカンの少女とシカゴに住む少年が、お互いの体が入れ替わる体験することから物語が始まっていく設定にしたようだ。現在は、映画『アメージング・スパイダーマン』のマーク・ウェブが監督を務めることになっている。

 その次は、諫山創原作の『進撃の巨人』だ。既に日本では、映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』として2部作で実写化された。今度は、2018年の10月にワーナー・ブラザーズのもとハリウッド実写化が企画され、TVシリーズ『HEROES/ヒーローズ』のマシ・オカと『ハリー・ポッター』シリーズのデヴィッド・ハイマンが製作を担当。さらに、映画『IT/イット “それが”が見えたら、終わり。』のアンディ・ムスキエティがメガホンを取ることになった。ちなみに、ムスキエティ監督は、映画版『The Flash(原題)』でも監督を務め、この作品も今年の4月から撮影に入る予定だった。だが、新型コロナウイルスで撮影が延期されたため、ハリウッド版の『進撃の巨人』が鑑賞できるまでは、しばらくかかりそうだ。

 そして、尾田栄一郎の人気漫画『ONE PIECE』は、集英社とトゥモロースタジオが、Netflixのもと全10話でドラマシリーズ化する予定で、さらに原作者の尾田栄一郎も製作総指揮で参加している。脚本は、『エージェント・オブ・シールド』のマット・オーウェンズが脚本を執筆する。当初は今年の夏に撮影が開始されると思われたが、新型コロナウイルスの影響で延期された。だが、既に10話分の脚本は仕上がっていて、Production Weeklyによると、2020年8月31日に撮影を開始し、2021年の2月8日までに終える予定でいるようだ。

 岸本斉史のヒット漫画『NARUTO』は、2016年からライオンズゲートのもとで製作が進められている。映画『ザ・グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシーが監督を務め、クリス・エヴァンスの初監督作『Before We Go(原題)』のクリス・シェイファー&ポール・ビッグネアが原作に基づき脚本を執筆した。だが2018年の時点では、グレイシー監督は、まだ納得のいく脚本が出来上がっていないと答えていた。ただ、CNBCのメディア・インフルエンサー、ダニエル・リクトマンによると、キャスティング・コールを行う予定だとTwitterで明かしている。

 最後に、サンライズ制作のアニメ『機動戦士ガンダム』は、レジェンダリー・ピクチャーズと組んで、実写化を2018年のロサンゼルスのアニメExpoで発表した。そして、2019年にはTVシリーズ『LOST』や『アンダー・ザ・ドーム』の脚本家・製作者、ブライアン・K・ヴォーンが脚本を執筆することも決まった。そのうえ、レジェンダリー・ピクチャーズの代表として『パシフィック・リム:アップライジング』のプロデューサーのケイル・ボイダーと、サンライズのクリエイティブチームが監修を務めることにもなった。もっとも順調に進んでいるようだが、その後、現在まで新たな情報は入ってはいない。

 この他に、日本の作品がアメリカで映像化される背景には、少年少女時代に日本のアニメをアメリカで鑑賞していたアメリカ人が、映画会社のプロデューサーに昇格し、上記のような作品の実写化に関わるケースもあるようだ。さらに上記の漫画は、中国でも高い評価がされ、北米だけではなく、中国の映画市場でも興行面が見込めるようになったことも大きな要因ではないだろうか?

 上記のように、着々と進んでいる企画がある中で、過去には様々な理由で、日の目を見なかった日本の作品もたくさんあった。ここ10年間で、そんな企画が成立しなかった作品も紹介したい。

 まずは、寺沢武一の漫画『コブラ』は、2011年から映画『ホーンズ 容疑者の告白の角』のアレクサンドル・アジャとフランスのプロダクション・カンパニー、OnyxとProject 37が実写映画化を企画し、2015年には脚本もでき、プロデューサーもいたが、2018年に予算や映画市場でスペースアドベンチャー作品が増えていることへの懸念などから中止になった。つまり、スペースアドベンチャー作品の台頭で、製作資金に対する興行的な見込みができなくなったことが、大きく左右したようだ。

 続いては、漫画家、松本零士の『宇宙戦艦ヤマト』は、2011年にスカイダンス・プロダクションズが興味を示し、一時期、映画『ミッション:インポッシブル』シリーズのクリストファー・マッカリーが監督候補に挙がっていた。だが、2012年に明確な方向性が見つからなかったことや、既に日本では映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』が実写化されたために、企画倒れになった。ところが、米映画情報サイト、Deadlineでは、2017年に映画『リミット・オブ・アサシン』のザック・ディーンに新たな脚本を書かせている情報が流れたが、いまだに映画化はされていない。

 さらに、漫画家モンキー・パンチの『ルパン三世』は、映画『シンドラーのリスト』の製作者ジェラルド・R・モーレンが、2003年に版権を獲得し、主要5人のキャラクターを含めることを発表したが、これも2014年に日本で映画『ルパン三世』で実写化され、企画自体もキャンセルされた。

 そして、株式会社サンライズ製作の『TIGER&BUNNY』。2015年にロン・ハワードの制作会社イマジン・エンターテインメントが、オールニッポン・エンターテインメントワークスとバンダイ・ナムコ・ピクチャーズと組んで映画化の企画を進めていた。その後、2019年に公開予定、脚本家の名前も発表もされたが、2018年に製作費を支援する予定だった会社が倒産したことで、製作中止になったようだ。

 ガイナックス制作による『新世紀エヴァンゲリオン』は、2003年のカンヌ国際映画祭で、ADVフィルムズとガイナックス、そして制作会社WETA ワークショップが実写映画化を企画。コンセプトアートや脚本の初稿を書き、『レッドクリフ』シリーズのジョン・ウー監督がプロデュースする予定だった。ところが、2009年にADVフイルムが、日本アニメの権利を含む保有資産の大半を売却したり、ADVフィルムズがガイナックスを訴えたりしたことで、事実上制作も消滅した。現在は、庵野秀明が率いる株式会社カラーが著作権を保有している。要するに、単なる版権を売り渡すだけでは難しいこともあるようだ。

 『美少女戦士セーラームーン』は、1990年台半ばに北米で著作権を保有していたDICエンターテインメントとディズニーが企画し、クイン・ベリル役を映画『ロング・キス・グッドナイト』のジーナ・デイヴィス、セーラームーン役で映画『クルーレス』のアリシア・シルヴァーストーンと映画『若草物語』のキルステン・ダンストらが出演交渉に入ったが、著作権を保有する講談社が、同作をディズニーに売却せずに終わった。

 最後は、大友克洋の『AKIRA』。多くのフィルムメイカーが食指を動かしたものの、近未来の舞台設定で、高額な予算がかかることから映画化が進まなかった。2012年にはギャレッド・ヘッドランド主演、ジャウマ・コレット=セラ監督で撮影に入る予定だったが、予算が膨れ上がり、頓挫してしまった経緯もあった。そして昨年、タイカ・ワイティティ監督がメガホンを取り、2021年5月21日に全米公開されると報じられていた。しかしワイティティ監督は、マーベル映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』に続く『(マイティ・)ソー/ラブ&サンダー(原題)』(原題)を手掛ける関係で、撮影が2年延期になったと明かしている。つまり、せっかくビジョンを持った監督を雇っても、その監督のスケジュールの都合で、企画が先送りになってしまうケースも多いようだ。

■参考
・https://screenrant.com/cowboy-bebop-netflix-live-action-release-date-story/
・https://screenrant.com/cowboy-bebop-netflix-live-action-premiere-2021/
・https://micky.com.au/your-name-live-action-remake-helmed-by-the-amazing-spider-man-director/
・https://comicbook.com/anime/news/attack-titan-movie-remake-preview-story-details-designs-warner-bros/
・https://www.whats-on-netflix.com/news/live-action-one-piece-series-everything-we-know-06-2020/
・https://screenrant.com/naruto-movie-whitewashing-controversy-asian-cast-avoid-good/
・http://www.mtv.com/news/3115782/live-action-gundam-movie-brian-k-vaughan/
・https://comicbook.com/anime/news/space-adventure-cobra-live-action-movie-anime-lionsgate/
・https://deadline.com/2017/03/zach-dean-star-blazers-christopher-mcquarrie-skydance-1202047252/
・https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/imagine-produce-live-action-english-831055
・https://www.polygon.com/2019/6/26/18758581/neon-genesis-evangelion-movie-live-action-netflix-anime
・https://comicyears.com/anime-news/a-naruto-live-action-movie-is-still-happening-according-to-casting-details/
・https://www.cbr.com/rumored-live-action-anime-adaptations-never/

■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして働き13年目になる。

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