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テレビから離れて 〜 放送作家・鈴木おさむの作品レビュー 〜

Netflix『クイーンズ・ギャンビット』ほど“贅沢”を感じられる作品はない “おもしろい”作品のためにできること

毎月

第17回

20/12/26(土)

今回ご紹介したいのはNetflixのドラマ『クイーンズ・ギャンビット』です。世界中で大ヒットしています。日本だとNetflixのランキングでは、韓国の『スタートアップ:夢の扉』やアニメ作品が上位に来てしまうので、あんまり話題になってないかもですが、たぶん、ヒットしてないのはほぼ日本だけじゃないかと思います。

これ観ていないと勿体ない。こんなに贅沢な時間を過ごすことが出来るドラマってなかなかないからです。

『クイーンズ・ギャンビット』の舞台は1960年代。一言で言うと、チェスドラマです。はい、これを聞いて「俺、チェスわかんないし」と思った方、そこで損をします。僕もまったくチェスが分からない。だけど、チェスが分からない人もめちゃくちゃ楽しめるように作っているから、大ヒットしてるんでしょう。

主人公はベスと言う少女で、母親が車の事故で無くなったため、孤児院で生活することになる。友達も作らずに心を閉ざして生きていく中、地下の部屋でチェスをやっている用務員さんと出会う。そこでチェスのおもしろさに魅了され、チェスを始めたことにより、天才的な才能を発揮していく。

すべてを失ったところからのスタート。まるで少年漫画のスポコンものを見てるかのようにベスを応援したくなる。

しかもその戦い方が、かなり攻撃的な戦術で、男の選手を次々に撃破していくのだ。そして、国内を飛び出て世界で戦っていく。

時代は1960年代。ソ連のチャンピンと戦っていくのですが、それが冷戦時代のアメリカとソ連の代理戦争になっていくのです。すごい展開。

酒とドラッグにおぼれて離脱する時もあったり、恋で悩んだり、事故で死んだと思った母親が実は……とか、うねりのある物語の中で成長していく。

物語もさることながら、この世界観がすごすぎる。衣装、小道具、家具やセット。1シーンずつ、そこに出てくるものに胸躍る。カメラワークも含めて、とにかく贅沢な気持ちにさせてくれるのです。観ながら、軽くお酒を飲んだりして「これ、観ている自分って贅沢だな~」ってなれたんです。

こういう気持ちになれたのっていつ以来だろう? 面白い! 意外に「贅沢」って思える。このコロナ禍で息苦しい生活を、まだまだしていかないといけない。そんな時に、この作品に出合えて、贅沢をもらえた。

あ、しかもですね、海外ドラマにありがちな、シーズン2に続くとかなくて、「リミテッドシリーズ」というもので、これで終わりらしいので、全7話、安心して観ることが出来ます。 年末年始、ベスの生き方に興奮してください。

さあ、この連載も今日が最後です。「テレビから離れて」というタイトルで、いろいろな作品を紹介してきました。Netflix、Amazon Prime、Hulu、Abema、世の中はコンテンツで溢れまくっています。テレビの予算が下がっている中、贅沢にお金をかけた作品も多い。正直、期待したほどおもしろくはなかったという作品も多いけど、めちゃくちゃおもしろい作品もある。

昔、自分がテレビを観た時の興奮と感動をくれるものも沢山ある。だから諦めるのではなく、諦めたら試合は終了。だからこそ、あらためて、テレビだから届けられるものを今一度考えて、世に放てたら、これ幸いです。終わり。

放送作家 鈴木おさむ

作品情報

『クイーンズ・ギャンビット』
Netflixにて独占配信中

プロフィール

鈴木おさむ(すずき・おさむ)

放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。漫画『秘密のチャイハロ』(講談社コミックスなかよし)が発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画『ティラノ部長』の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。

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