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いま、最高の一本に出会える

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 (C)2019 CTMG. (C)2019 MARVEL.

“ホーム”から遠く離れて。『スパイダーマン』最新作がついに完成!

ぴあ

19/6/27(木) 22:00

マーベル・スタジオの新作映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』がいよいよ明日から公開になる。本作は一体、どんな映画になっているのだろうか? 公開を楽しみに待っている人のために具体的な内容には可能な限り触れずに紹介する。

特殊な能力を身につけたことで“スパイダーマン”として活動しているピーター・パーカーは、アベンジャーズの一員としてサノスの脅威から地球を救ったが、自身をチームに誘った師であり、父親的な存在トニー・スターク/アイアンマンを失った。その後、人々はピーターに“第二のアイアンマン”になることを期待するが、彼はまだ未熟で、自分がどう生きていくべきか決心がつかないまま、半ば逃げるようにクラスメイトとヨーロッパ旅行に出かける。すべてを犠牲にしてヒーローとして生きることよりも、今は友達と旅行したり、恋している女性MJとの距離を縮めたい。しかし、ピーターの前に新たな脅威が出現し、彼は異世界からやってきたという謎の男ベックに出会う。

そもそもピーター・パーカーは自分の街を守る“親愛なる隣人”で、若い自分が地球を脅かす存在に立ち向かえるとは思ってもいない。しかし、最新作で人々はスパイダーマンに大きな期待を寄せ、何か事件が起こればヒーローとして振る舞うことを求める。アベンジャーズを率いるニック・フューリーは旅行する彼を追いかけまわし、人々のために責任を持てと迫る。まだ高校生で、好きな娘と隣の席に座れるかどうかで一喜一憂している彼に。

本作のタイトルは“ファー・フロム・ホーム(ホームから遠く離れて)”で、映画を観ていくと“ホーム”にはいくつかの意味が込められていることがわかってくる。ひとつは“故郷”だ。実際にピーターは暮らしているアメリカを離れてクラスメイトとヨーロッパ各地を旅しており、劇中も様々な国が登場する。

また、ホームは“ヒーローとして活動する上でのよりどころ”を意味するようだ。かつてピーターに何かトラブルが起これば、トニー・スターク/アイアンマンが助けに来てくれた。アドバイスしてくれたし、時には叱ってくれた。自分がなぜスパイダーマンを続けているのか、自分はヒーローとしてちゃんとやれているのか、スタークの元に行けばわかった。安心できた。しかし、そんな状況からは遠く離れた場所に来てしまった。もう元には戻らない。だから、ピーターは自分で決めなければならない。スパイダーマンを続けるにせよ、やめるにせよ。

とは言え、現在のピーターはスパイダーマンでいることに疲れている。ピーターを演じたトム・ホランドは「前作(『ホームカミング』)でピーターはアベンジャーズになりたくて仕方なかった。だけど本作では、彼はアベンジャーズでいることを避けたいと思っているんだ。彼は16歳で普通のティーンエイジャーの生活を望んでいる」という。つまり、ホームは“ピーターがスパイダーマンではなく、ピーターのままでいられる場所”のことも意味している。

本作は豪快なアクションや観客をアッと驚かせるサプライズ、笑えるシーンを盛り込みながら、映画全編に渡って、主人公が“スパイダーマン”と“ピーター・パーカー”の間を行き来し、周囲の人々からどちらかの立場でいることを時に期待され、時に強制される展開が描かれる。言うまでもないことだが、スパイダーマンとはピーター・パーカーのことだ。しかし、そのふたつはそう簡単にはひとつにならない。ある者はスパイダーマンとして責任を負えと言う。ある者はスパイダーマンの座を降りてピーターとして生きろとアドバイスする。ある者は危機が迫ると急にピーターではなくスパイダーマンになってくれと頼む。その結果、主人公は“自分が自分でいられる場所=ホーム”から遠く離れていってしまう。それでも彼は戦うのか? なぜ彼はそれでもなお、スパイダーマンでいることをやめないのか?

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、長年に渡る壮大なドラマに終止符を打つべく公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』の直後にリリースされたとは思えないほどシリアスで、マーベル映画の“真髄”ともいえるテーマを描いた作品になった。思い返せば、トム・ホランドが演じるスパイダーマンは“ヒーロー誕生”の瞬間が描かれておらず、スクリーンに登場した彼は最初からスパイダーマンだった。しかし、本作で彼は岐路に立ち、選択を迫られる。観客はピーター・パーカーの迷いや葛藤や失敗を通じ、改めてヒーローの困難や複雑さ、魅力を感じることになるだろう。もし、彼のことをどんな時も“何者でもない青年ピーター・パーカー”として見てくれる人がいたら、それは彼にとっての“ホーム”かもしれないが……。

ピーター・パーカーは数々の試練を乗り越えて“ホーム”に帰ってくることができるだろうか?

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
6月28日(金)より全国公開

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