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Perfumeの新曲『Cling Cling』に見る、「日本らしさ」を超えた海外進出とは?

リアルサウンド

14/7/21(月) 14:00

誰が「クールジャパン」を背負うのか

 つい最近、「きゃりーは日本民族の誇り」という強烈な見出しがついたワーナーミュージック・ジャパン名誉会長のインタビューが日経ビジネスに掲載されていた。表紙には「コンテンツ強国へ この“熱狂”を売れ!」というコピーとともにステージで歌うきゃりーぱみゅぱみゅの写真が使われていて、「きゃりーぱみゅぱみゅ」と「日経ビジネス」という何とも言えない取り合わせに胸焼けがした。

 件の日経ビジネス発売の数週間前、夜のニュース番組で「BABYMETALはなぜ世界でウケたのか」という特集が放送されていた。彼女たちの海外での人気を引き合いに出しながら政府のクールジャパン戦略のあり方を問うような構成だったが、一番インパクトがあったのはベビメタの3人と対面した際にどうにもピンと来ない表情を隠しきれていなかったクールジャパン戦略担当大臣の様子だった。番組の性質を考えると、あのリアクションは視聴者のそれなりの数の反応を代弁していたのかもしれない。

 きゃりーぱみゅぱみゅとBABYMETAL、この2組が「日本のコンテンツを世界へ」という最近の風潮における代表例として取り上げられることが増えてきた。ここで僕が思うのは、「この手の話でPerfumeの名前が意外と出てこないな」ということである。

 Perfumeの海外における実績は、前述の2組と比べても遜色のないものである。2012年のレコード会社移籍を機に本格的な海外展開を開始し、同年のアジアツアーと翌年のヨーロッパツアーを成功させるとともにアルバム『LEVEL3』も各国のチャートで成果を収めた。もちろんこういうことはPerfumeを好きな人にだけ伝わっていればいいものではあるのだが、他のアーティストが「海外市場開拓の先駆者!」みたいな扱いをされているとほんの少しだけ違和感を覚えてしまう自分は心の狭い人間である。

「日本好きコミュニティ」の外を見据える「Cling Cling」

 そんなPerfumeの新曲『Cling Cling』が 7月16日にリリースされた。J-POPのアーティストではあまりお目にかかれない低音を強調したトラックをバックに<Cling Cling><るんるんるん><つんつんつん>というわかりやすいフレーズが繰り返されるこのナンバー、おそらくは「海外戦略」を意識した楽曲だろう。これなら日本語のわからないリスナーへのリーチを英詞に頼ることなく実現できる。

 そして、特筆すべきはこの曲のミュージックビデオ。チャイナドレス風の衣装に身を包んだ3人の妖艶な姿が目を惹くこの作品のコンセプトは「オリエンタル」。舞台となっている架空の街が醸し出す雰囲気は中国と東南アジアをミックスしたような趣で、猥雑だけどどこか現実離れしたムードからは「西洋から見た東洋」という視点が想起される。このアングルは前作“Sweet Refrain”の「アジアンビューティー」的なアートワークとも地続きであると同時に、昨今の「オタク/萌え的な感性」もしくは「原宿的なセンス」によって規定される「JAPANESE KAWAII」とは異なる位相のものである。

 いわゆる「クールジャパン」関連の言説にPerfumeがはまらないのはこういったところにも原因があるかもしれない。アルバムタイトルに『JPN』(=JAPAN)という言葉を冠するなど作品の一部に国に関する文脈を挿入することもあるPerfumeだが、その佇まいに関しては一貫して「無国籍」のスタンスを維持している。思えばメジャーデビュー当初の近未来的な世界観にも、最近の「最先端テクノロジーのプラットフォーム」としての立ち位置にも、「日本らしさ」が入り込む余地は存在していなかった。「日の丸ニッポンのコンテンツでプライドを取り戻そう」と鼻息の荒い背広を着た人達と相性が良くないのは当然である。

 Perfumeは自分たちのことを「日本好きコミュニティの人気者」としてではなく、「(日本かどうかは関係なく)誰もが知っている素晴らしいポップアクト」として世界に認めさせようとしているのではないか。“Cling Cling”の楽曲とミュージックビデオからは、そんな意思が透けて見える。

「キュート」「エッジ」を超越する新たなフェーズへ

 Perfumeの過去のアルバムを振り返ると、「キュート」と「エッジ」の双方を行き来しているような傾向が見て取れる。「アイドルがテクノをやる」を推し進めた『GAME』の次にビートをより強調した『⊿(トライアングル)』をリリースし、等身大の女性のしなやかなかわいらしさを表現した『JPN』を経てフロア対応のダンスアルバム『LEVEL3』にたどり着いた。

 この流れで行くと、直近のPerfumeのモードは「キュート」のはずである。実際、今回のシングルの2曲目に収録されている「Hold Your Hand」はサビの切ないメロディが印象的な「キュート」モードのPerfumeらしい1曲だ。一方で、同時収録の「DISPLAY」「いじわるなハロー」はアルバム『LEVEL3』に入っていてもおかしくないポップでハードなダンスナンバーである。そして、「キュート」「エッジ」どちらとも言い切れないような新たな存在感を持った「Cling Cling」がシングルの表題曲となっている。単純に国内での反応だけを考えるならば「Hold Your Hand」主体でプロモーションを行った方が受けはいいのではないかと個人的には思うが、歌番組でも積極的に「Cling Cling」をパフォーマンスしているのにはどんな意図があるのだろうか。

 今のPerfumeは、これまでの「キュート」と「エッジ」を止揚した新たなフェーズにいるのかもしれない。『LEVEL3』が作品としての評価とセールスの双方を獲得し、アルバムコンセプトを具現化したドームライブを成功させたことで、彼女たちは国内のアーティストとして一つの極みに達した。これまでの流れはここでひと段落。ここから始まるのは「日本」も「海外」も関係のない「グローバルスター」としてのPerfumeの軌跡である。本作のリリースを経て行われる全国ツアー、そしてアメリカでのライブを含むワールドツアーで、チームPerfumeは我々にどんな驚きを提示してくれるのか。次のアクションを楽しみに待ちたい。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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