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いま、最高の一本に出会える

「アナ雪」旋風がようやくチャートに反映するも、1位の福山には届かず

リアルサウンド

14/4/17(木) 11:36

2014年04月07日~2014年04月13日のCDアルバム週間ランキング(2014年04月21日付)

 2週間前に宇野氏が指摘した「アナ雪」旋風が、ようやくチャートにも反映され始めた。(参考:CDチャートには反映されない、史上空前の『アナと雪の女王』旋風)じわじわと順位を伸ばし続けてきた「アナ雪」サントラとMay.Jカバーアルバムが今週の2位と3位をがっちり押さえている。コングラッチュレーション!と言いたいところだが、トップは福山雅治。21.3万枚セールスでダントツ一位に輝いた先週に引き続き、今週も5万枚弱を売り上げて余裕の首位である。

 5年ぶりの11枚目。シングル、アルバムを通じて首位獲得は10作連続となり、確かに記録は素晴らしい。ただ、正直に書いてしまうと、チャートの覇者としての福山雅治、ものすごく語りにくいのである。

 顔がいい。歌も上手い。ギターの腕前は実際に超一級だが、シンガー・ソングライターとしてだけでなく俳優業でも大成功。デビューからずっと悪いイメージとは無縁でも、たんに品行方正というのではなく、毒や風刺はちょくちょく盛り込んでいるし、下ネタやサブカルに精通したトークが異様に面白い。何か重箱の隅をつつくようなことを書いてもヒガミにしか見えず、それどころか本人が余裕を持って面白がってくれるというオチまでついてくる(筆者「SPA!」での体験談です)。ナナメから切っちゃいけない人なのだ。

 また本人が何度も語っているように、もともとはギタリスト志望で上京した根っからのロック好き。CMやドラマで流れた近年のタイアップ・シングルはリテイクやリマスタリングを経て本作のDisc-2に入っているが、メインはそれとは別、全曲書き下ろしのDisc-1なのだから、2枚組仕様も流行りの「ベストをオマケに付ける商法」とは根本的に違っている。

 音楽的に真摯な情熱があり、本人の制作意欲も高く、経験とともに歌詞の味わいも深まっている。歳相応の孤独や家族愛、昭和オヤジ的ユーモアなどもひっくるめて「相変わらずかっこいい福山」が味わえる本作は、しかし、どうしてこう「今の旬!」感に乏しいのだろう。普遍性はあっていい。ただ、ポップミュージックとしてのバックボーンとか、未来を切り開いていく冒険心のようなもの。過去と未来をつないでいこうとする音楽家の夢が、どうも欠落しているように思う。言うまでもなくチャートは時代のバロメーター。そこに福山雅治を当てはめて語れる何かが……少なくとも私には見つからないわけである。

 コンサートに行けばよくわかるが、福山のファンはいわゆる音楽ファンとはだいぶ異なる人種である。彼らは熱心な福山ファンであり、シーンの動向や流行りの傾向に関わらず福山の作品を買うのだろう。「アナ雪」にアニメ、ミリショーのベストなどが並んだ上位の「今っぽい空気」と、一位福山の安定感には、どうしても埋められぬ溝を感じるのであった。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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