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登坂広臣、ソロプロジェクトの紛れもない発展形ーー最新曲「OVERDOSE」で見せた変化と本領

リアルサウンド

19/11/29(金) 12:00

 日本が誇るエンターテインメント集団、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(以下、三代目JSB)。近年ではメンバーそれぞれが音楽以外の分野へと活動の場を広げる中、ツインボーカルの今市隆二と共にソロアーティストの道を追求し続けているのが登坂広臣である。来たる2020年1月にはソロとして2作目となるニューアルバムの発売が決定し、その先行シングルである「OVERDOSE」も11月20日に配信が解禁されたばかり。そんな登坂がいかにして自身の音楽をクリエイトしてきたのか、これよりしばし掘り下げてみようと思う。

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 2017年、登坂のソロプロジェクトは勇壮なシングル曲「WASTED LOVE」で鮮烈に幕を開けた。サウンドには三代目JSBの「Summer Madness」なども手がけた世界的DJ/プロデューサーのAfrojackを迎え、作詞は登坂自身が担当。次々と構成が移ろうトリッキーなサウンドは何とも壮大で、以後の登坂が築き上げていくコンセプチュアルな音楽性の起点とも呼べる1曲となった。

 登坂はデビュー当初より一貫して、プロジェクトテーマに「月」を掲げている。三日月、半月、満月と日々満ち欠けが生じる月のごとく、自身も様々な変化を見せていきたいという思いを込めてのことだそう。2018年夏にドロップされた初のコンプリートアルバム『FULL MOON』では、そんな登坂の有言実行ぶりがサウンドのバリエーションや歌詞の世界観などからしかと窺え、第一期集大成として申し分ない実績を残した。とりわけ、ロマンティックな側面と人間の脆弱性を共存させたラブソングの数々は、自らを多面的に見つめんとする登坂の覚悟を雄弁に物語っているとも言える。

 また、時を同じくして今市隆二もRYUJI IMAICHI名義でフルアルバムを発表したことで、それぞれの音楽性の相違点が明確化。今市は、R&Bに明るい布陣を従えたメロウ寄りの路線。対して登坂のアルバムは、今市よりも幾分か外側の層、すなわち黒人音楽を含むダンスミュージック全般を緻密に消化した、コンテンポラリーなポップ志向とでも言おうか。2019年第1弾シングルの『SUPERMOON』がリリースされる頃には、登坂の好奇心旺盛なアティテュードもすっかり堂に入り、劇場版『名探偵コナン 紺青の拳』(2019年4月公開)主題歌というビッグタイアップに起用されたラテンテイストの「BLUE SAPPHIRE」や小気味よいトラップ「UNDER THE MOONLIGHT」、そしてベースミュージックの骨頂を悠然と表現した次なるシングル作「NAKED LOVE」など、目の覚めるようなインパクトと中毒性を兼備したキラーチューンを連発。持ち前の色気も存分に発揮され、インディペンデントな魅力を放つソロシンガーとして大きな前進を果たした。

 そうした来歴を経て先頃リリースされた最新曲「OVERDOSE」は、登坂広臣が仕組む変化の紛れもない発展形であり、ある種の帰結でもある。狂おしいほどに人を愛してしまったがゆえ、自暴自棄に陥る男の苦悩を描いたリリック、スモーキーな空気を背負いながらバウンシーな鼓動にも余念がないダンスサウンドと、“登坂印”とでも言うべきスタンダードな要素が主体を担っているのは事実。しかしながら今回は、悲哀を増幅させる味付けが重厚に施され、従来の作品にはあまり見られなかった寂しい余韻がヘビーに留まり続ける点で斬新な聴き心地を誇る。特に、ビルドアップの役割を担う生温かいファルセットは絶品。残されたわずかな希望に縋る主人公の心境を、登坂は穏和なボーカリゼーションで情感豊かに表現。直後に訪れる激情的なサビが一段とドラマティックに盛り上がるという意味でも、同曲きってのハイライトとして推薦しておきたい。

 サウンドメイキングには、「SUPERMOON」「NAKED LOVE」に続いてUTAとSUNNY BOYの黄金コンビが参加。また、彼らと同じTinyVoice,Production所属のクリエイターで、Ymagikとしてシンガー活動も行うYoheiが、登坂との初タッグにして作詞を担当している。R&Bをこよなく愛するYoheiの洗練された言葉選びは、「OVERDOSE」の軽快なリズムとグルーヴに大きく寄与。彼のような腕の良いクリエイターと邂逅したことで、登坂の音楽性は今後、よりいっそう有機的に冴え渡っていくのではないだろうか。

 果たして「OVERDOSE」の誕生は、勢い芳しい登坂広臣の活動指針を決定付ける画期的な出来事だったように思う。が、きっとこれはまだ前哨戦。おそらく2020年のニューアルバムでは、これまで以上にフリーキーな名曲をお見舞いしてくれるはず。我々の想像を軽々と超えていくほどに新しく塗り変わった“オミ”を、今から楽しみにしている。(白原ケンイチ)

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