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白神真志朗、新曲「ノスタルジア」制作に垣間見える“クリエイティブな発想の源” 「自分が作るものに責任を持っていたい」

リアルサウンド

20/12/16(水) 20:00

 ストリーミングサービスで躍進した次世代シンガーソングライター&マルチクリエイター、白神真志朗。12月9日、決定打となる配信シングル「ノスタルジア」をリリースした。本作は気鋭の映像作家、吉川詩歩による作品構想が発端のひとつとなり楽曲、そしてミュージックビデオが生まれたという。

 そもそもシンガー、ベーシスト、コンポーザー、アレンジャー、レコーディングエンジニアとして活躍する白神は美術にも造詣が深く、彫刻や絵画、写真などのアートワークも手がけている。ベーシストとして、“まふまふ”や“じん”など、様々なアーティストの作品やライブにも参加。さらに楽曲提供や劇伴制作などマルチな才能を発揮している。

 コロナ禍である2020年、定期的にオリジナル楽曲をリリースし続けてきた白神。今年6曲目となるのが「ノスタルジア」だ。ストリングスから始まる世界観の大きさを感じさせる大人シリアスな高揚感あるポップソング。それこそ、歌謡曲~シティポップを“いまの時代感”でアップデートしたかのような、研ぎ澄まされたサウンドスタイルに注目したい。取材時にわかったのだが、白神には常に自分の音楽活動を分析、そしてPDCAを回し続ける探求者としての側面が強くあるようだ。2021年、期待の才能であることは間違いない。(ふくりゅう)

「映像として描きたい世界観を固めていった」

ーー2016年、ボーカロイドプロデューサー・じんさんが新レーベル<EDWORD RECORDS>を立ち上げたときに発表イベントが渋谷WWWでありましたよね。その時にオフィシャルレポートを書いたんですよ(参照:EDWORD RECORDS)。

白神真志朗(以下、白神):そうなんですね。あの時、自分のバンド、ステラ・シンカと、感傷ベクトルやじん君のサポートもしていて。

ーーそして、2017年からはソロ活動も活発化して、Spotifyを軸に白神真志朗としての評価が高まってきていますよね。僕もSpotifyの公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』でよく選曲させてもらっています。この才能溢れるアーティストは何者なんだろうって感じで。

白神:そして、ふくりゅうさん主催の神泉のスタジオでやってたスナックイベントに呼んでもらって……。

ーー今に至るという感じなのですが、新曲「ノスタルジア」がとにかく素晴らしくて。歌心があり、表現レベルがとても高い。打ち出せるマーケットも広いですよね。今回、ノンタイアップではあるのですが超大型映画のエンディングテーマでもなんら遜色ないっていう。

白神:ストリングスパワーがかなりありますね。一番最初は、2つのプランがあって。ひとつは、生弦とピアノを録るという話があったのと、あと、今回ミュージックビデオを作ってくださった監督さんが普段は商業作品のディレクターをやられている方なのですが、自分の映像作品として映画祭などコンペに出す作品を作りたいという話を同時にいただいて。あと、もうひとつは、ダンサー事務所の方と知り合って、ダンサーを売り込むための映像作品を作りたいという話もあったんです。それらが結びついて話がまとまったという。

ーーよきタイミングが重なったのですね。

白神:ちょっと紆余曲折はあったんですけどね。映像作品のたたきの状態のプロットから、新曲へ取り掛かりました。歌詞の内容も監督さんに近い感覚というか、映像として描きたい世界観を通話しながら固めていって。例えば「このとき、この子はどんな心情で、今どこで生活していて、どんなシチュエーションで」みたいなことを確認し合って土台となる世界観、歌詞を作っていきました。

白神真志朗 (Mashiro Shirakami) “ノスタルジア(Nostalgia)” Music Video

ーー通常の楽曲作りとはかなり違うスタイルですよね。

白神:そうですね。サウンド面では弦とピアノは生に差し替えることができるだろうという想定のもと進めていきました。なので、僕が1人で作ったというよりはいろんな要素や影響が混ざり合って完成した曲ですね。偶然が重ならないと生まれなかった曲だと思います。家でラップトップで作るパターンとは大きく違いました。いろんな人の感性や美学が入っています。

ーー今回、歌い方へのこだわりも強くありそうで。

白神:今年「あなたのことは全て」というシングルをリリースしたんです。そのときぐらいから自分自身、歌い方への転換があって。僕はもともとロックミュージックというか、ライブハウス、インディーバンドあがりなので、声なんて出せるようにしか出ないという感覚で歌っていたのが、この2年ぐらいでようやく「ああ、これが歌なんだ」という気づきがありました。その頃からいろんな可能性を探って、落ち着いた先がブレッシーな声でした。最近ベッドルームミュージックというか、ライブにおけるPA環境を想定しないボーカリストって増えているじゃないですか。ささやき系とか。

ーーああ、なるほどね。

白神:ファーストステージがそもそもイヤモニありきのアーティストが増えたんですよ。ネットで知名度が上がっていて集客力も最初からあるから、転がし(モニター)を必要としないボーカリストが増えているんです。なんとなく自分もそっちなのかなって。でも、そのままだと違うなと思っていた自分もいて。配信シングルの「あなたのことは全て」の頃から、ちょっとずつ変えていったんです。試しながら4曲を経て、たどり着いたのが「ノスタルジア」の歌い方でした。ちょっと強いバージョンというか。ただブレッシーなだけじゃなくて、腹式呼吸で下の帯域が出るようなパターンを探りながら、ある程度の音量を出しながらも質量として嫌味にならない感じを意識していますね。

ーーこれまで、イメージ的には作詞作曲編曲、演奏、エンジニアなど、マルチな表現者という真志朗さんだったのが、特にボーカリストとして気になったんですね。生楽器、ストリングスやピアノとともに負けていない感じで伝わってくるという。

白神:そうかもしれないですね。今回、作業量としてはいろんなことをやったんですけど。実際、でき上がった音に関して一番関わっていない作品ではあるんです。ストリングスやピアノを活かしたかったので、他の音を少しずつ消していきました。ミキシングでもボーカルが浮いて聴こえるようなミックスにしていて。葛藤もあったんですけどね。前作「持たざる者」ではスポークンワードっぽかったり、ヒップホップ系のループトラックをポップスに引き込んだみたいなノリにしていたので、その時のミックスに近いんです。声の輪郭が浮いて聴こえて、ディテールがよくわかるんですよね。本来「ノスタルジア」みたいな曲ではやらないんですけど、今回は映像もあって生々しい質感に合うかな、没入できるかなと思ったんです。

「言ったことはないけど、“そう思う心情を内面に飼っている”のが歌詞」

ーー真志朗さんは、今話してくれたように自分の作品を語る言葉を持っている方ですし、分析力も異様に高い。あと、ストリングスによるイントロも素晴らしいんだけど、そこに時計が刻む音が没入感を誘いますよね。

白神:どっちが先か忘れたんですけど、「ノスタルジア」にはテーマがあって。最初は、いわゆる望郷みたいな感覚は映像作品の主題にはなかったんです。地元に帰ってきた登場人物が、地元に住み続けている人との間で繰り広げるドラマを描こうっていう感じでだったんですけど、過去の経験を振り返って回帰していくという切り取り方にしようと思ったのは、音楽側のアイディアができたからなんです。たぶん、サウンドを作っていてふと時計の音が欲しいなと思って入れちゃったんですね。入れた後で歌詞を書いたので、音に引っ張られて「ノスタルジア」になったんですよ。テーマも含めて。

ーー面白いなあ。

白神:だいたいイントロから曲は作るんです。今回、歌詞のイメージから編曲されたものではないんですよ。

ーー歌詞は女性目線な言葉になっていますが、真志朗さんのなかで、自分の経験と重なった言葉ってあるんですか?

白神:自分自身の心境とは違うんですけど、歌詞に〈波打ち際〉という言葉を入れたときに、島本理生だなって。

ーー島本理生?

白神:島本理生という小説家がいるんですよ。その方の『波打ち際の蛍』という作品があって、〈波打ち際〉と書いた後で、そのことを思い出しました。そういえば〈波打ち際〉って歌いたかったんだと気がついて。歌詞を書いていて思うのは、例えば僕が海岸で〈波打ち際の向こうに/広がる暗闇と/道連れになってくれる?〉と女の人に言ったことはないんですけど、そう思う心情を内面に飼っているんですよ。この歌の物語を考えていたときに、そういうことを言う自分を想像できなくはないんです。言いたいこともあるかもと。そうでないと歌詞にならないんです。

ーー経験していないことでも、その場にいたら言っていたかも知れない、みたいなことですね。

白神:そうですね。これはどこかにいる人の話ではなくて、自分が女性だったらどう思うのかなって考えるんです。

ーークリエイティブの考え方がよくわかるエピソードですね。ちなみに、もともと真志朗さんが音楽に目覚めたきっかけはなんだったんですか?

白神:映画『ライオンキング』ですね。その前から音楽は自然にあったんです。音楽が好きだなあと思ったきっかけですね。

ーー楽器はいつ頃から?

白神:4歳から7歳までピアノをちょっとだけやっていて。その時は全然ピアノが好きじゃなくって。田舎育ちなんで、小さい頃はサッカーやったり外で遊んでましたね。

ーー音楽活動をやることになったのは?

白神:中学校2年生ぐらいの時に、友人がアコギでコブクロのカバーとかやり始めて。それに合わせて歌を歌っていたのが最初かな。そのうち、アジカンやバンプとか、流行っているバンドを知ってバンドをやることになって、ベースをやりながら歌っていました。その後は、3ピースでバンドやっていましたね。そして紆余曲折を経てステラ・シンカになったと。当初はビッグビートみたいな感じから、DAWを覚えていきました。

ーーボカロ文化の入り口は?

白神:もともとは全然通ってなかったんですよ。ライブハウスに出入りしてたときに、今のヒトリエのドラマー、ゆーまおに出会って。その後、bermei.inazawaさんと深水チエさん、ボカロPのなきゃむりゃさんがゆーまおと同人系のバンドをやろうってなった際に、ベースが弾けてDAWが扱える人がいないかって声をかけてもらって。同人即売会の『M3』に出たのが僕のニコニコ動画や同人の元年でしたね。

ーーなるほど。そして、じんさんのプロジェクトに結びついたと。

白神:だんだん波及してNeru君に声をかけてもらって、まふ君(まふまふ)へとつながっていきました。

ーーソロ活動として、自分の表現でやってみようと思ったきっかけは?

白神:僕は美術か音楽をやりたかった人なんです。ベースは、あくまでバンドをやるためにやっていたものが結果的に続いているだけなんですね。音楽で食っていくことは目標ではなかったんですよ。ただ、モノづくりをして世の中に向けて表現したかったというか、その流れにあるものでしかないですね。

ーー目標はあったりするんですか?

白神:結局は、自分自身の音楽が世の中にどう消費されていくのかっていうことですよね。ひいては生きてから死ぬまで、世の中にどんな影響を与えられるのか、ということを考えています。「自分勝手にいたくないという感性を肯定していたい」と思っています。それが目的なのかな。それは果たされ続けているし、より多くの方に聴いてもらえたらより果たされていくのかなって。自分自身がクリエイターとして、アーティストを名乗るからには自分が作るものに責任を持っていたいですね。

■楽曲情報
白神真志朗「ノスタルジア」
12月9日(水)配信 ダウンロードはこちら
Music Video公開中

作詞・作曲・編曲・Vocal:白神真志朗
ストリングスアレンジ:葛西竜之介(APDREAM)
Cello:堀沢真己、奥泉貴圭、結城貴弘、西方正輝
Piano:宇都圭輝
Additional Synth Sound Design:中土智博(APDREAM)
Background Vocal:eco、さかな
Recording Engineer:白神真志朗、内藤岳彦
Mixing Engineer:白神真志朗
Sound Director:山田公平(APDREAM)
Promotion Advisor:岡田一男、椎野一誠(Medium)
Distribution:Warner Music D.N.A.

■関連リンク
白神真志朗 オフィシャルサイト
Twitter

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