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SugLawd Familiar、2020年末のバイラルチャートで急上昇 クラシカルなビートと強烈なフックで聴き手を虜にするクルー

リアルサウンド

21/1/5(火) 12:00

参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(12月31日公開:12月24日~12月30日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:Ado「うっせぇわ」
2位:SugLawd Familiar, OHZKEY, Vanity.K「Longiness」
3位:優里「ドライフラワー」
4位:Broken kangaroo「水平線」
5位:BBY NABE「PINK SWEET」
6位:SEKAI NO OWARI「silent」
7位:Eve「廻廻奇譚」
8位:川崎鷹也「魔法の絨毯」
9位:菅田将暉「虹」
10位:NiziU「Step and a step」

 12月31日更新のSpotifyウィークリーバイラルチャートは、11月からトップ5圏内にランクインを続けるAdo「うっせぇわ」と優里「ドライフラワー」のロングヒットソングの双璧に、チャート急上昇中のSugLawd Familiar, OHZKEY, Vanity.K「Longiness」が間に割り込み、2位を獲得するかたちで2020年を締めくくった。

 今回は12月第2週に初めてトップ10圏内にランクインして以来、徐々に順位を上げ、あとわずかで1位に手が届きそうなところまで躍進しているSugLawd Familiar, OHZKEY, Vanity.K「Longiness」に注目してみよう。

 SugLawd FamiliarはOHZKEY、XF MENEW、Oichi、Vanity.Kの4人のMCと、DJであるcaster mildを擁するヒップホップクルーで、沖縄を拠点に活動を展開している。沖縄といえば、Awichや唾奇、Yo-Sea、OZworld a.k.a R’kumaなど実力派のラッパーがひしめき合い、日本のヒップホップ界を牽引している強勢な地域である。特にUSヒップホップの時流をリアルタイムに反映しながらも、オリジナルの表現方法を模索し続ける本格的なラッパーが多く、まがい物はすぐに没落してしまう厳しい環境だ。そんな競争が激しい沖縄をフッド(地元)にしながら、SugLawd Familiarはその名を全国区にしようとしている。

 「Longiness」は、SugLawd FamiliarからOHZKEYとVanity.Kの2人のMCをフィーチャリングした楽曲。OHZKEYとVanity.Kのスキルフルなラップもさることながら、ファーストインプレッションでトラックに心を奪われた。近年、世界のヒップホップは重低音を強調し、細かく刻まれたキレの良いハイハットからなるトラップ以降のビートが主流となっている。しかし、「Longiness」ではトラップビートによるアプローチではなく、オールドスクールなサンプリングの手法が用いられており、90年代を彷彿とさせる泥臭いサウンドに仕上がっている。シーンの最前線で新たなサウンドを塗り替えることもヒップホップの醍醐味ではあるが、一方でクラシックなスタイルを再解釈し現代にアップデートすることも重要だ。2000年代以降のロックの世界では、Radioheadを筆頭にジャンルレスで実験的なサウンドを追い求める潮流のなかで、初期ロックンロールへの回帰の流れが生まれ、Arctic MonkeysやThe Strokesといった素晴らしいガレージロックのバンドが生まれた。ヒップホップの世界においてもこのようなクラシックリバイバル現象が当てはまるかもしれない。

 「Longiness」のリリックに目を向けてみよう。〈リーズナブルな完成度+スケスケまくりのimitation/あいつになりたくてもがいても/底なし沼のように沈んでくよ〉というフックは、思わず口ずさんでしまうような秀逸なパンチライン。誰の真似でもない自分たちのスタイルでクオリティの高い作品をドロップしていく心意気が声高に宣言されている。このフックの血気盛んなメッセージを裏付けるのが、OHZKEYとVanity.Kの個性的でスキルフルなラップ。フック部分を間に挟んでOHZKEYとVanity.Kのパートが分かれる構成になっている本楽曲は、2人の異なるスタイルを効果的に映し出している。OHZKEYの抑揚のあるフローがリリックの世界観にリスナーを誘い、Vanity.Kのアグレッシブなライミングで圧倒する。約3分のうちに、強烈なパンチラインをもつフックと2MCのキャラクターが鮮明に提示される構造は簡にして要を得ていて素晴らしい。1曲あたりの長さが短くなる傾向の現在のトレンドでは、短時間のうちに強烈なフックだけで押し切ってしまうスタイルが散見されるなか、重層的な構成でありながら短時間でリスナーの耳をひきつけるクレバーさには驚かされる。

 OHZKEYの〈俺ら発展途上でもかっけえぞ〉というリリックが示すとおり、SugLawd Familiarはまだ発展途上であるものの、ガウディによる未完の世界遺産「サグラダ・ファミリア」のように未完成の段階ですでに異彩を放ち、その完成に向けた過程さえもが人々の心を掴む特別な力を秘めているようだ。

SugLawd Familiar (OHZKEY×Vanity.K) – “Longiness”

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
Twitter(@Z1169560137)

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