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押井守の あの映画のアレ、なんだっけ?

『DUNE/デューン 砂の惑星』の押井流鑑賞方法を教えてください!

月2回連載

第58回

Q.
リメイク版『DUNE/デューン 砂の惑星』の押井流鑑賞方法を教えてください!

── 今回のお題は現在公開中の『DUNE/デューン 砂の惑星』の楽しみ方についてです。監督は『メッセージ』(16)、『ブレードランナー2049』(17)のドゥニ・ヴィルヌーヴ。原作はフランク・ハーバートです。

押井 やっぱりオーニソプターじゃない? オーニソプターがまともに飛んでるように見えたのはこの作品が初めてだよ。これまでもいろんな映画に登場していたメカだけど、飛べそうなものはなかった。宮さん(宮崎駿)もオーニソプターは大好きで、『ラピュタ』(『天空の城ラピュタ』(86))にも出している。でも、あんなのどう見たって飛べないじゃない。

オーニソプター”とは、鳥などのように翼を羽ばたかせることで飛ぶ航空機のこと。写真は押井さんが褒める『DUNE/デューン 砂の惑星』劇中のオーニソプター。

私のように飛行機に興味がある者は、もれなくオーニソプターと聞くと目の色が変わる。私たちにとってのロマンであり、永遠の願望。みんな「羽ばたいて飛びたい」って思っているんだから。

実際は原理的にエネルギーのロスが激しくてダメなんだけど、それが叶うのがファンタジーの世界。異世界なら、そのテクノロジーで飛ばすことができるんです。

『デューン』のオーニソプターはトンボっぽいデザイン。目玉の部分がコックピットになっていて、翼も羽根のように畳める。ちゃんと高速振動もしていて、とてもよく考えられている。本当に飛べそうですよ。素晴らしい! 「ああ、これが観たかったんだよなー」って、惚れ惚れしましたね。

── 私、ヴィルヌーヴにインタビューしたんですが「いろんなガジェットの中で、もっともお気に入りなのはオーニソプター。原作のスピリットにもっとも近いものができたと思っている」と言っていました。

押井 ほら、分かってるんですよ、ヴィルヌーヴは。

これ、フィギュア出ないのかなあ。卓上に置いて毎日、眺めたいよ。羽根も畳めて、コックピットも開閉できるようなものが欲しい。それなら数万円でも買います!

── いや、押井さん、まさか、オーニソプターだけじゃないですよね?

押井 半分ぐらいはオーニソプター。あとは宇宙船。巨大なブロックの塊みたいなデザインの。あれは現代の解像度だから通用したデザインなんだよ。極めてシンプルなデザインでありながら、巨大感と質量感が表現できているのは解像度の違い。おそらく、細かなノイズ──ザラザラした感じとかへこみとか、そういうのを私たちはノイズと呼んでいるんだけど、それを乗っけると途端にデータ量が増えて表現がリアルになる。それがなかったら、ペラペラしたオモチャにしか見えないから。

『DUNE/デューン 砂の惑星』に登場する宇宙船などのガジェット。

私も『スカイ・クロラ』(『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08))で戦闘機を登場させたけど、課題はそのボディにいかにノイズを乗せるかだった。私たちは背景に描いたノイズを張り込んでしのいだんだけど、そういうことをやらないとツルっとしすぎていて、巨大なプラモデルにしか見えなくなる。

これがシンプルなデザインだとますます難しい。シンプルなデザインにいかにノイズ情報を盛り込むかは、積年の課題だったからね。複雑なデザインだとごまかせるしスケール感も出やすいからどうにかなるんだけど、シンプルだと途端にハードルが高くなるんですよ。

だから、あのメタルの塊のようなデザインで、ちゃんと宇宙船であることを表現できているのは凄いんです。10年前は難しかったと思うよ。

── ということは、『デューン』の成功要因のひとつは、そういうガジェットにも手を抜くことなく、ディテールにもこだわっている、ですね?

押井 おっしゃるとおりです。

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