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『東京ラブストーリー』14年ぶり再放送 小田和正による主題歌との親和性を改めて考える

リアルサウンド

18/9/18(火) 18:00

 1991年放送の月9ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)が14年ぶりに再放送を開始した(9月14日〜28日、15時50分より/関東ローカル)。『東京ラブストーリー』は、カンチ(織田裕二)、リカ(鈴木保奈美)、三上(江口洋介)、さとみ(有森也実)が東京で繰り広げる恋模様を描いた物語。ドラマ『カルテット』(TBS系)などで知られる坂元裕二が、弱冠23歳にして脚本を手がけ、“月曜日の夜9時は街から女性たちが消えた”と言われるほどに社会現象となったドラマだ。主題歌である小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」も、ドラマと合わせて大ヒット。放送から27年が経った今でも『東京ラブストーリー』というワードを聞けば、多くの人が同曲を思い浮かべることだろう。本稿では、再放送を機に「ラブ・ストーリーは突然に」と『東京ラブストーリー』の親和性について改めて考察していきたい。

 「ラブ・ストーリーは突然に」といえば、あのサビだろう。前に押し出すような勢いのあるリズムと、高低差のある音を用いてドラマティックに演出したメロディ。〈あの日あの時あの場所で君に会えなかったら〉という恋愛の始まりを端的に捉えた歌詞。一発で耳に残るこのフレーズが劇中で流れることで、曲とともにドラマも忘れられないものになったに違いない。また、このフレーズはカンチとリカの関係性を彷彿とさせる。あのとき2人が出会った奇跡を考えると同時に、2人が出会わなかった並行世界も想像してしまう不思議なフレーズだ。

 曲中では、登場人物の感情と照らし合わせたくなる歌詞がいくつもある。例えばAメロの頭にある〈何から伝えればいいのか分からないまま時は流れて〉というフレーズは、カンチが思いを寄せていたさとみへの思いや、すれ違いを重ねてしまう三上とさとみを代弁しているかのように思える。さらに、2番のAメロでは〈誰かが甘く誘う言葉にもう心揺れたりしないで/切ないけどそんなふうに心は縛れない〉とした一方で、ラストサビでは〈誰かが甘く誘う言葉にもう心揺れたりしないで/君をつつむあの風になる〉に変わっている点も見逃せない。弱気な感情が強い意思へと変化しており、まるでドラマの結末を暗示するかのような内容になっている。 

 ドラマの第3話では、リカが失恋したカンチに向かって「人が人を好きになった瞬間って、ずーっとずーっと残っていくものだよ。それだけが生きてく勇気になる。暗い夜道を照らす懐中電灯になるよ」と言うシーンがある。好きな人と結ばれる/結ばれないということに関係なく、誰かを好きになったことは自分自身の未来をずっと輝かしていく。坂元裕二は、このドラマでそんなことを伝えようしていたのではないだろうか。また、小田和正が手がけた同曲の歌詞にも〈明日になれば君をきっと今よりもっと好きになる/そのすべてが僕のなかで時を超えてゆく〉という一節がある。これもまた、“誰かを好きになったことは、自分の未来にずっと繋がっていく”というメッセージであり、先述したセリフと密接している。

 「24時間好きって言ってて!」、「どんなに元気な歌聴いても、バラードに聴こえる夜もある」など今ではあまり使われないトレンディドラマ的なセリフ回しはあるにせよ、同ドラマは登場人物たちの本心はあまり明らかにされていないし、登場人物の感情の移り変わりも多い。当時のトレンディドラマとしては異例なストーリー展開であったというが、きっと現代のドラマに見慣れている人にとっても新鮮に映ることだろう。そんな同ドラマに対し、小田和正はドラマティックなサウンドや本質を突いた歌詞によって登場人物たちのセリフにはない感情を代弁していたように思える。このドラマが多くの視聴者を感情移入させ心を掴んでいった背景には、そうした楽曲効果もあったに違いない。このドラマを観たことがある人も、まだ観ていない人も、こういった点にも注目して再放送を楽しんでみてほしい。

(文=北村奈都樹)

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