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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

タイムループを繰り返す主人公を見て人生の本当の意味を考えさせられる『パーム・スプリングス』

月2回連載

第65回

ラストは不思議と納得できて気持ち良かった!

今回は現在公開中の埋もれちゃいけない作品を2作品紹介します。まずは『パーム・スプリングス』。カリフォルニアのリゾート地をタイトルと舞台にした、ちょっと変わったラブコメです。

『パーム・スプリングス』

パーム・スプリングスで行われる結婚式にやってきたナイルズは、花嫁のブライズメイドのサラをガンガン誘いまくり、やがてふたりはパーム・スプリングスの雰囲気にものまれてロマンティックな雰囲気に。ところが、そこに謎の老人が弓矢で襲いかかり、彼は肩を負傷。ふたりは近くにあった洞窟に逃げ込むのですが、そこには不思議な赤い光が……。

『パーム・スプリングス』

目覚めたとき、ふたりは結婚式当日の朝に戻ってしまいます。彼女が状況を把握できずにいると、実はナイルズはその状況を何度も何度も繰り返していたことを告白。ふたりはタイムループにはまって、同じ1日を繰り返すことになるのです。

『君の名は。』でも使われているタイムループの設定を、めちゃくちゃ個性的なふたりの恋愛をからめて描いた異色作です。現実にタイムループなんてあったら困るし、こんなことはありえないんだけど、この作品を観ると登場人物と同じことを経験したら、自分ならどう動いていたのかを考えますね。だって、実際はやり直すチャンスなんてもらえないですし、やり直すチャンスをもらえたとしても、そこでどうすればいいかなんて思いつきませんよね。

『パーム・スプリングス』

この作品では、タイムループを繰り返すふたりが、刹那をエンジョイすることが最初のうちは描かれますが、もちろんそれだけじゃありません。こんなファンタジーみたいなループにハマれば、きっと人生の本当の意味を考えさせられますよね(笑)。

『パーム・スプリングス』

そしてこういう作品の一番の問題はラストよね。最初は不満に満ちた女性も最後はどうなるか? そして、宇宙人にとらわれていた? もしくは夢オチ? いえいえ、そうじゃありません。意外な方向に物語は転がっていくんですが、ラストは不思議と納得できて気持ち良かったですよ。

コメディ感が程良くて、まだまだ日本ではあまり見慣れてないふたりの主人公(アンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオティ)だからこそ楽しいのかもしれませんね。特に注目は、謎の弓矢の老人を演じているJ.K.シモンズ。彼が登場することで、物語がぐっとしまるんですよ。この奇妙な体験はぜひ劇場で!

『パーム・スプリングス』

余韻のあるラストで、この話の後の世界が見たいと思った

さて、もうひと作品は『アンモナイトの目覚め』。ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナン、オスカー女優ふたりの共演によるロマンティックな歴史劇です。

1840年代のイギリス南西部、海沿いの街ライム・レジス。そこで化石の発掘をして、土産物として販売しているメアリーは、老いた母親とふたりのつましい暮らしをしています。

『アンモナイトの目覚め』

実は彼女、恐竜の化石で世紀の大発見をした古生物学者。だけど、時代が時代だけに、その功績はスルーされ、男性の同業者に奪われているんですね。そんな彼女のもとに、裕福な化石収集家の夫婦が訪れます。

『アンモナイトの目覚め』

夫はメアリーの大ファンで、発掘の様子を見学したいと申し出、いやいやながらもメアリーは受け入れます。一方、彼の妻シャーロットは心を病んでいて、夫とは全く反りが合わない状態。夫はシャーロットをメアリーに託して、旅を続けるといって町を後にします。何もかもが正反対のメアリーとシャーロットは、最初は合わないものの、次第に惹かれ合っていき……。

『アンモナイトの目覚め』

『ゴッズ・オウン・カントリー』で長編デビューしたフランシス・リー監督の新作です。これはね……この話の後の世界が見たい!って思ってしまったんですよ。映画はエンドロールが終わっても、自分の中では続いていくことって多いじゃないですか。これはあまりにも余韻がすごくて。でも、観終わってからは、その余韻があるラストって正解かもとも思ったり。この終わり方はたまらないな~。

『アンモナイトの目覚め』

人は置かれた状況や周りの人で変わります。母と一緒とはいえ、世間に見放されたような生活を送るメアリーも、夫に見放されているシャーロットも、心が壊れてしまっているんですね。だからこそ、このふたりはお互いの気持ちが理解できて、グイグイと惹かれ合っていくんですよ。

パズルのピースが綺麗にハマるように、互いに持っていないものは相手が持っていて、補完し合っているんです。素敵な恋愛ですよね。しかも、ちょっと行き過ぎたときに起こる、女性らしい感情もうなずけますし。1840年代の時代背景も、こういうふたりを描くにはピッタリ。

『アンモナイトの目覚め』

全体的には静かな作品だけど、登場人物の心の中が激しくて、観る人のハートを揺さぶりまくりますよ。私のハートも、いつもと動きが違っていたもの(笑)。

※次回は4月30日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
(C)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
(C)The British Film Institute, The British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited 2019

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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