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佐藤千亜妃、江沼郁弥、tomodati……ソロ活動で追求される音楽性と滲み出るキャラクターに注目

リアルサウンド

19/4/21(日) 8:00

 ロックバンドにとって、いまは良かれ悪しかれ自分たちの音楽にどのように向き合うかが問われている時代だ。音楽性を大きく変化させるか、自分たちの持ち味を活かしながら新たなサウンドを追求するか、こだわりをつらぬくか。そんななかで注目したいのはバンドとしての活動から距離を置いたソロ活動だ。そこにはバンドという制約から一歩抜け出した音楽性の追求と、それでも滲み出るキャラクターが垣間見える。ここではその実例として、3人(組)をピックアップしたい。

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 きのこ帝国の佐藤千亜妃は2018年7月にソロEP『SickSickSickSick』をリリースして、ソロデビューを果たした。甘い轟音とリバーブに特徴づけられるギターロックから一転、R&B寄りのアーバンなサウンドを披露。80年代のデジタルシンセやサンプラーを思わせるサウンドが配置され、シャープな聴き心地に整えられている。Art of NoiseとKraftwerkが衝突したようなM1「SickSickSickSick」や、ACO「悦びに咲く花」を彷彿とさせるエレクトロニックなバラードM2「Summer Gate」などはプロデューサー砂原良徳のカラーを強く感じるが、ソングライティングはもちろん、R&Bにもなんなくフィットする声質や、挿入されるディストーションギターなどに佐藤のアーティスト性が息づいている。

 続く2019年4月4日にリリースされた配信シングル曲「Lovin’ You」は踊Foot WorksのTondenheyがプロデュースを担当。アトモスフェリックなパッドと硬質なトラップのビートで組み上げられたR&Bだ。イントロのマリンバや声ネタ、そしてアコースティックギターのリフやローズピアノのバッキングが親密な空気を演出している。時折あらわれる日常音によって、オーガニックな雰囲気に満ちているのも面白い。前作から引き続いてギターが登場する間奏も、暴力的ながらエモーショナルで、淡々とした楽曲にこのうえない高揚を与えているのがとても良い。ロックの文脈とR&Bが融合した作風に、今後も期待が高まる。

 2017年にplentyを解散し、翌年よりソロ活動を開始した江沼郁弥の作品も興味深い。サイケデリックなフォークやドリームポップをエレクトロニックなサウンドで構築、大胆な転身を見せた。なにより注目なのは自身の特徴的なボーカルを巧みに処理する手腕だ。1stアルバムの『#1』のM1「soul」や、M9「take my hands」、M10「freesia」で聴ける、ダブリングやオクターバーなどで丹精に処理された声は、作り込まれたトラックに劣らない存在感を放っている。

 江沼は3月より3カ月連続でシングルを配信中で、3月3日には「うるせえんだよ」、4月4日には「偽善からはじめよう」をリリース済みだ。四つ打ちにインダストリアルなパーカッションがのり、不思議な距離感に調整されたストリングス、深い空間を感じさせるリバーブや左右チャンネルの駆使といったサウンドデザインの妙が光る「うるせえんだよ」。まるで水中を伝わってくるかのようなごつごつとうごめくノイズを背景にビートが刻まれ、クライマックスへと盛り上がっていく「偽善からはじめよう」。ダンサブルな要素が強くなり、早くも次のアルバムを期待したくなる楽曲だ。

 最後に紹介するのは、Have a nice day!のギタリストでもある中村むつおが主導するユニット、tomodatiだ。Have a Nice Day!自体もポップなダンスサウンドで人気を博しているが、tomodatiもポップへの振り切れ方は引けを取らない。1stアルバムの『tomodati』は2015年の活動開始以来、待望のリリースとなった。

 M1「1000%」からいきなり披露されるサンプルのカットアップとフィルター使いがフレンチタッチのハウスサウンドが全開で、ゼロ年代のダンスミュージックに親しんだ世代には直撃するはず。またそれはノスタルジーにはとどまらず、ビッグルーム系のEDMやフューチャーベースの流行を経たうえでのチル化、ハウス回帰であるとか、あるいは「ポップ」という枠組みの見直しが進む今ならではのサウンドでもある。M4「kawaii」の楽曲構成やボーカルカットアップはフューチャーベース以後のポップスとゼロ年代のダンスポップを接続しなおしたかのようで興味深く、なによりキャッチーだ。全体として未来志向に感じられるのは、M2「フューチャーミュージック」やM11「ロックスターになれなかった」の歌詞が示すアティチュードの賜物だろう。

 3人(組)とも、「バンド活動の余技」などにとどまらない音楽性の伸びしろを如実に示しており、今後の活動が楽しみだ。こうした意欲的な作品が、時代の空気を徐々に変えていくことを願いたい。(imdkm)

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