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稲垣吾郎、ソロ曲「SUZUNARI」は半生を表す集大成に? MVを観て感じたこと

リアルサウンド

18/12/24(月) 8:00

 稲垣吾郎が14年ぶりにリリースしたソロシングル「SUZUNARI」のMVが、12月21日に公開された。大人の恋をテーマに描かれたMVは、稲垣自身が紡ぐブログを彷彿とさせる落ち着きのある洗練された雰囲気だ。

(関連:稲垣吾郎「SUZUNARI」は美しい詩を朗読するよう? 主演ドラマ『東京BTH』と主題歌に触れて

 フォトスタジオの人工的なフラッシュと、ベッドのある部屋に差し込む陽の光によるプリズム。モノクロの世界から、黄色いヘッドライト、赤い靴、アニマル柄のジャケット、黒いサングラス……と、少しずつ色味を帯びていく時間の流れ。そして〈全部曖昧な色してるよ/どの色が君に見せる顔だっけ〉というフレーズに、私たちの人生はいつだってグラデーションで満ちていることを気づかせてくれる。

 振り返る思い出は、現実より少し美化されているかもしれないし、今の感情だって、いつかは変化していくかもしれない。自分が想定していた以上に感情的になる瞬間もあるけれど、それでもすべてに意味があると思って生きていく。そう歌う本作は、どこか遠い世界のフィクションというよりも、私たちの生きる世界の稲垣吾郎のスタンスそのもののように感じられる。

稲垣吾郎 – SUZUNARI
 同日に公開されたブログにも「遠くで鈴鳴りする声に、回想してゆく過去そして未来… この歌には今の僕の素直な気持ちが溢れている。 こんなにも素敵な曲を・・ 川谷絵音さんありがとうございます!」とコメントしていた稲垣。アーティストとして揺らがない個性を持つふたりは、どこか共通した眼差しでこの世界を見ているのかもしれない。

 このMVやブログから感じられる稲垣のポリシーは、いつだって美しく凛として生きることなのだろう。花を飾ること、季節の移ろいを感じること、自分の似合う髪型を知ること、遠くで鈴鳴る声に耳を傾けること……周囲の変化を敏感に察知する気持ちと時間の余裕をつくるために、自分がするべきことを効率よく進めること。それも彼の美学のひとつだ。

 自分が冷静でいなければ、この美しき世界を守ることは難しいと知っているから。だから、しっかりした理由なく、そのペースが乱されるのを極端に恐れ、感情的になる場面もある。〈おもちゃ箱の様な感情手探り〉の歌詞を聞けば、きっと『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)で草なぎ剛と香取慎吾が「ヒステリックゴロチ」と笑う稲垣の人間味溢れるの部分を思い出して、頬が緩むファンも少なくないはずだ。

 「やっぱり吾郎ちゃんだよね」。稲垣の持つ独特な美学が垣間見えるたびに、そう感じるときがある。きっと、それは今でこそ多くの人が人生のテーマとして掲げる“自分らしく生きる”というものを、稲垣が早い段階から貫いてきたからではないだろうか。

 主役クラスの人気を誇りながらもドラマのバイプレーヤーとして作品を彩ったのも、ワイン好きというキャラクターも今思い返せばかなり新鮮だった。稲垣の革命はいつだって、静かに、穏やかに進んでいくのだ。そして、この「SUZUNARI」という曲とMVこそ、稲垣の半生を表す集大成なのかもしれない。稲垣吾郎は“自分らしく生きる”を貫いて、ここまできたのだ、と。

 世界の曖昧さを受け入れる余裕を持つために、自分の美学を守るということ。一見すると矛盾するようなこのスタンスが、私たちが“自分らしく生きる”難しさなのだろう。はっきりとした正解のない中で、手探り状態なのは誰もが同じこと。稲垣も、これまでの長いアイドル人生で築いてきたブランドを持って、また新たな挑戦を始めたばかり。

 ヒステリックゴロチを地で行くようなベートーベンを演じる舞台『No.9 -不滅の旋律-』をさらに進化させたり、限りなくプライベートトークに近い新感覚ドラマ『東京BTH~TOKYO BLOOD TYPE HOUSE~』に挑んでみたり、映画『半世界』ではこれまでのイメージを覆すような山男にも扮している。さらに、官能的でスキャンダラスな手塚治虫の名作の実写化に挑む『ばるぼら』への出演も決定した。

 自分自身を愛し、周囲を敏感に見つめていく。そうすれば、押し寄せる大きな波に身を任せながらも、美しく生きられるのだと、稲垣を見ていると感じられる。〈これからはもっと美しいストーリーがあるはずなんだ〉。そう信じながら、人生を楽しむこと。「SUZUNARI」は、スタイリッシュに生きたい、大人のための応援ソングにも聞こえてくる。(文=佐藤結衣)

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