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東京事変「赤の同盟」はドラマと重なり合う楽曲に 『私たちはどうかしている』主題歌として担う役割を考察

リアルサウンド

20/9/2(水) 6:00

 本日9月2日に最新第4話の放送を控える『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)。その主題歌を務めるのが、今年8年ぶりに活動を再開した東京事変だ。本作は幼なじみの椿(横浜流星)と七桜(浜辺美波)が、殺人事件の起きた老舗和菓子屋『光月庵』を舞台に15年の時を経て再会し“偽装結婚”する様子を描いた物語である。『光月庵』の跡取り問題や女将から七桜への壮絶ないじめ、そして和菓子屋を舞台に過去の事件と恋が複雑に絡み合うサスペンス×恋×和が魅力の作品である。東京事変が本作のために書き下ろした主題歌「赤の同盟」にもそのおどろおどろしい雰囲気は踏襲されつつ、合わせて妖艶な魅力が迸りドラマの世界を牽引する役割を担っているだろう。

 『私たちはどうかしている』には特筆すべき魅力が多々ある。その魅力を「赤の同盟」はメロディと歌詞でより深くまで追求できるようにリードするのだ。15年前の事件をめぐるサスペンス要素はその魅力のひとつと言える。恋愛ドラマには似つかわしくない「殺人事件」という重い過去を描きつつ、事件を軸に恋愛と壮絶ないじめが並行して展開される様子は、現代のドラマでありながらどこか懐かしさも感じられる。この事件にまつわる椿と七桜の関係は「騙し合い」と「駆け引き」によって展開する。「赤の同盟」の〈まあ一回打算を排してよ警戒心〉の歌詞はまさにこの2人の炎の揺らぎのような安定しない関係を優しくいなすようにも聴こえる。どちらかがフッと肩の力を抜くと、急速に惹かれ合ってしまうような椿と七桜の結付きにまさにぴったりの歌詞なのだ。さらにこの部分のメロディは序盤のミステリアスな雰囲気から転じて爽やかな印象を持つ。2人の恋に一縷の望みを抱いてしまう視聴者の心を掴む音の運びだろう。

東京事変 – 赤の同盟 (Official Music Video)

 その一方で、椿と七桜には妖艶な着物姿での刺激的なシーンも数多く存在する。まだ恋が始まりかけている段階でありながら、キスや抱擁、ベッドシーン一歩手前の様子まで鮮烈に描写された。こうしたシーンの多くはお互いに対する疑心暗鬼の心が突き動かす「衝動」を表していることが多く、歌詞冒頭の〈ええい何が起きても結構〉はこうした駆け引きに対して動じずにいようと務める椿、七桜の双方の心情が重ねられるだろう。

 他にも歌詞のフレーズにはドラマ中で様々な印象的なシーンを想起させるものが多々あり、このドラマのために書き下ろされた楽曲だからこそできる魅力の引き出し方に徹している。『私たちはどうかしている』においての「赤の同盟」は、本楽曲があってこそドラマが作品として完璧な状態で完成するという、まさにパズルのピースのような重要性を感じた。それほどまでにパチリとしっかり作品の中にハマっているのだ。楽曲が持つイメージが視聴者にどのような働きかけをするかを熟知した演出が多くなされており、「赤の同盟」に関しても毎話、佳境となるドラマの終盤で、最適なシーンの中に取り入れられている。

 主題歌の力がドラマをより盛り上げることは度々あり、人気ドラマと人気主題歌はいつの世もセットになっている。「赤の同盟」も同じようにドラマの世界をより深く掘り下げ、多くの人に強い印象を抱かせる名盤となるだろう。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

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