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“北欧のフェルメール”ハマスホイの絵画約40点が来日!

ぴあ

20/1/22(水) 0:00

ヴィルヘルム・ハマスホイ《背を向けた若い女性のいる室内》1903〜04年 ラナス美術館

東京都美術館では、『ハマスホイとデンマーク絵画』展が1月21日(火)より開幕。デンマークを代表する画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの作品約40点とともに19世紀デンマークの名画が、3月26日(木)まで紹介されている。

柔かな光が差し込む、静まり返った室内。開け放たれた扉、控えめで上品な家具、後ろ向きの女性——。

デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864〜1916)は、音と光が閉じ込められたような静謐な室内世界を描いたことから、「北欧のフェルメール」と称される。

ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内》1898年 スウェーデン国立美術館

19世紀末から20世紀初頭に活躍したハマスホイは、没後一時忘れられた存在となっていたが、1990年代以降欧米の主要な美術館で次々と回顧展が開催され再び脚光を浴び、日本でも2008年に初の展覧会を開催。それまでほぼ無名の画家だったにもかかわらず、多くの美術ファンを魅了した。

今回の展覧会では、19世紀のデンマーク絵画の流れの中で、ハマスホイの絵画がどのように誕生したのかを紐解いていく。日本初公開を含むハマスホイ作品約40点をはじめ、19世紀のデンマーク絵画約85点を展示。日本で初めて19世紀のデンマーク絵画が本格的に紹介される展覧会でもある。

『ハマスホイとデンマーク絵画』展会場風景

展示は「日常礼賛」「スケーイン派と北欧の光」「19世紀末のデンマーク絵画」「ヴィルヘルム・ハマスホイ」の4章で構成。

第1章「日常礼賛—デンマーク絵画の黄金期」では、多くの芸術家が現れ、完成度の高い作品を送り出した、「黄金期」と呼ばれる19世紀前半のデンマーク絵画を紹介。敗戦による混乱期に台頭してきた市民階級が好んだ、身近な自然やささやかな日常を温かな眼差しでとらえた作品が並ぶ。

クリステン・クプゲ《フレズレクスボー城の棟—湖と町、森を望む風景》1834〜35年 デンマーク・デザイン博物館(デンマーク国立美術館に寄託)
コンスタンティーン・ハンスン《果物籠を持つ少女》1827年頃 デンマーク国立美術館

第2章「スケーイン派と北欧の光」では、急速に近代化の進む都市部では失われた古き良きデンマークの姿を、漁師町スケーインで見出した画家たちの作品を紹介。同時代のフランス印象派をはじめとする外国からの影響を取り入れた、大胆な筆致と明るい画面にも注目したい。

ミケール・アンガ《ボートを漕ぎ出す漁師たち》1881年 スケーイン美術館
オスカル・ビュルク《遭難信号》1883年 デンマーク国立美術館(スケーイン美術館に寄託)
ピーザ・スィヴェリーン・クロイア《朝食——画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン》1893年 ヒアシュプロング・コレクション

第3章は「19世紀末のデンマーク絵画——国際化と室内画の隆盛」を紹介。当時人気を博した温かみのある「幸福な家庭生活」をイメージした室内画から、次第にモチーフの配線や構成、色彩の調和といった絵画的要素の洗練された統合を追求していった流れを辿っていく。

ヴィゴ・ヨハンスン《きよしこの夜》1891年 ヒアシュプロング・コレクション
ピーダ・イルステズ《ピアノに向かう少女》1897年 アロス・オーフース美術館

こうした室内画を追求した画家たちの中で最も先鋭的だったのがハマスホイだ。最終章の第4章「ヴィルヘルム・ハマスホイ——首都の静寂の中で」は、ハマスホイ作品のみを展示。室内画だけでなく、肖像画、人物画、風景画も並ぶ。

第4章「ヴィルヘルム・ハマスホイ——首都の静寂の中で」会場風景
ヴィルヘルム・ハマスホイ《三人の若い女性》1895年 リーベ美術館
ヴィゴ・ヨハンスン《きよしこの夜》1891年 ヒアシュプロング・コレクション
ピーダ・イルステズ《ピアノに向かう少女》1897年 アロス・オーフース美術館

灰色を基調とした繊細な色調による表現は、1880年代のデンマーク画壇においては挑発的なものだったという。しかし、ハマスホイは1889年から移り住んだ旧コペンハーゲンのアパートを描いた一連の室内画の独特の表現によって、国内外の名声を獲得していった。

ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内——開いた扉、ストランゲーゼ30番地》1905年 デーヴィズ・コレクション
ヴィルヘルム・ハマスホイ《カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ25番地》1910〜11年 マルムー美術館

上質な家具、時間の堆積を感じさせる美しい空間、穏やかな光、調和した色彩、何も語らない人物像や誰かがそこにいた痕跡。こうしたハマスホイ独自の世界から、当時の人々は洗練された美意識とともに、郷愁を帯びた心地よさを感じ取っていたようだ。

こうして4章を通覧すると、デンマーク絵画の黄金期からハマスホイに至るまで共通する「素朴な親密さ」を感じとることができる。身の回りのありふれた、しかし、魅力的で美しい世界。デンマークならではの、穏やかで詩情あふれる絵画の魅力を堪能してほしい。

【開催情報】
『ハマスホイとデンマーク絵画』
1月21日(火)〜3月26日(木)まで東京都美術館にて開催

【関連リンク】
ハマスホイとデンマーク絵画

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