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ペンギンラッシュが語る、ジャンルに捉われない音楽性 「やり過ぎないというより“寄り過ぎない”」

リアルサウンド

19/6/7(金) 18:00

 名古屋出身の4ピースバンド、ペンギンラッシュが2ndアルバム『七情舞』をリリースした。前作の1stアルバム『No size』では“ジャズ、ファンクをルーツにした独創的なJ-POP”という基本的なスタイルを明確に提示しつつ、ジャンルに捉われない音楽性を描き出した4人。リードトラック「悪の花」を含む本作では、メロディ、歌詞、アレンジ、演奏のすべてにおいてさらに強度を上げ、リピートするたびに新たな発見がある奥深いポップミュージックを体現している。望世(Vo/Gt)、真結(Key)に様々なアイデアが施された『七情舞』各曲の制作風景、バンドが目指すビジョンについて話を聞いた。(森朋之)

ジャンルに捉われないで作りたい(望世) 

ーー1stアルバム『No size』で初めてペンギンラッシュの音楽を聴いたリスナーも多かったと思うのですが、反応はどうですか?

望世:『No size』は私たちのいろいろな面を表現したアルバムなんですけど、そのせいか、いろんなジャンルを好きな方々が聴いてくれてるみたいで。

真結:ふだんはジャズやファンクを聴かない人も聴いてくれてるし、たくさんの人に届いているなって。

ーージャンルで説明しづらいバンドだからこそ、幅広い層のリスナーにリーチできるのかも。特定のジャンルに偏らず、いろいろな音楽の要素を取り入れるというスタンスはバンド結成当初からなんですか?

望世:「こういうコンセプトでやろう」という話はまったくしてないんですけど(笑)、「(ジャンルに)捉われないで作りたいね」というのはありましたね。作曲の段階から、そういう意識はあるんじゃないかな。

真結:うん。メンバーでアレンジしているうちに、いろんな要素が入ってくることもあるし。

ーーそれぞれのルーツもけっこう違ってそうですね。

望世:どうだろう? 完全にバラバラというわけではなくて、重なっている部分もあると思いますけどね。私と真結は高校から一緒で、軽音楽部の顧問の先生に教えてもらったジャズやファンクを聴いていて。ベースの浩太郎さんはポップスやフュージョン、ドラムのNarikenさんはわりとロックがルーツみたいですね。Red Hot Chili Peppersとか、日本のバンドだとthe band apartやPeople In The Boxとか。

真結:コード感に特徴があるバンドが好きみたいですね。

望世:そのあたりも何となく共通していますね。

ーー好きなコード感やリズムが似ているというか。最近のジャズもリズムやコードワークの解釈が広がってますからね。R&Bやヒップホップと接近するのも当たり前になっていて。

望世:そうですよね。私たちもそういう音楽が好きだし、曲を作るときも“ジャズと何か”を組み合わせている面もあって。

ーーなるほど。2ndアルバム『七情舞』もジャンルを超越した楽曲が揃っているし、メロディ、言葉、アレンジ、サウンドメイクを含め、さらに強度が高まっている印象がありました。制作にあたってはどんなテーマがあったんですか?

望世:最初はコンセプトアルバムにしようか? って話してたんです。これまで「夜に聴きたい」とか「夜バンド」と言われることがけっこうあって。私たちはそれを意図していたわけではなかったから、今回はあえて夜っぽい曲を集めてみようかと。でも、実際に作り始めたら、あまりこだわらなくなって(笑)。

真結:コンセプトを意識したのは最初だけで、結局、いつも通りの制作でしたね。似たような曲が集まっているわけでもないし、メンバーそれぞれが「こういう雰囲気の曲はどうかな?」という感じで原曲を作って、それをみんなで形にしていきました。

ーー曲のアイデアが本当におもしろいですよね。たとえば1曲目の「悪の花」は、ニューオリンズ発祥の“セカンドライン”というリズムを取り入れながら、憂いを感じるポップナンバーに結びつけていて。この曲の着想はどういうところだったんですか?

望世:あるアーティストのライブを観に行ったら、セカンドラインの曲を演奏していて。その演者さんは「このリズムってハッピーになるよね」と言ってたんですが、そのときに「このリズムでハッピーじゃない曲を作ってみたい」と思って。頭のなかですぐに曲ができてきたので、家に帰ってすぐにデモを作って、それをスタジオに持っていって。

真結:Narikenさんに「セカンドラインのリズムを叩いてみて」って。私は「低い“レ”の音から始めて」って言われました。

望世:ザックリしてて申し訳ない(笑)。

真結:(笑)。どうなっていくかわからないまま進んでいくのが楽しかったですね。ここまでセッションで作ったこともなかったし。最初は「セカンドラインを意識したほうがいいのかな」と思ってたんですけど、最後はかなり自由に弾いてました(笑)。

望世:参考になる曲を聴いてもらうこともあるけど、「絶対にこうしてほしい」というわけではないので。

ーーそれぞれの解釈から生まれるフレーズも混ざっている、と。〈形ばかりを必要とするなら/要らないわ〉など、苛立ちや葛藤が混ざった歌詞も印象的でした。確かにあまりハッピーではないですね(笑)。

望世:そうですね(笑)。それはこの曲に限らず、常にそうかも。前作もそうでしたけど、明るい曲にしようと思うことがあまりないんですよね。

真結:明るいときやハッピーなときって、あんまり曲が生まれないですからね。暗い気分のときや何かが起きたときのほうができやすいというか。そういう人が多いと思いますけどね、曲を作る人は。

望世:そうそう。私の場合、歌詞は最後なんですよ。歌詞が先ということはなくて、まずメロディを固めるんです。その時点では音的に気持ちいいところだったり、「この流れだったら、ここでしょ」という感じを優先しているから、歌詞を乗せるのがけっこう大変で。

真結:歌詞を乗せるとき、「ここは自由に変えていいよ」「この音だけは外さないで」というポイントがありますからね。それは作曲者によって違うんですけど。

望世:彼女の場合、デモの段階ではBメロのメロディしかなかったりするんですよ(笑)。

真結:それ以外は自由に歌ってくださいって(笑)。

ペンギンラッシュ – 悪の花 (Official Music Video)

ーーバンド内でコライトしている状態に近いのかも。2曲目の「アンリベール」はフュージョンの要素が強い楽曲ですね。

望世:これはベースの浩太郎さんが持ってきた曲なんですよ。私たちには作れないですね、こういう曲は。

真結:転調しまくってますからね。演奏するのが大変だから、自分では絶対に作らないです(笑)。

望世:(笑)。もともとは彼が別のバンドでやっていたインスト曲なんですよ。単純に「カッコいい」と思ったし、確かに演奏は難しそうだけど、ぜひやってみたいなと。やっていて楽しいし、好きな曲ですね。

真結:遊び心もすごくある曲なんですよ。演奏しているときに生まれるものもあるし、私も好きです。

望世:この曲も歌詞は大変でしたね。どっちの言葉がいいだろう? って、レコーディングの直前まで迷ってたり……。浩太郎さんからは、アニメのタイムワープの場面みたいな、背景がバーッと後ろに進んでいく映像を見せられて、「こんな感じのイメージで」って言われたんですけど。

真結:知らなかった(笑)。

望世:私はなんとなく切なさを感じたから、そのイメージを加えて歌詞にしました。

ーー「アンリベール」というタイトルの由来はフランスの小説家・スタンダールの本名ということですが、もともと好きな作家なんですか?

望世:いや、特に好きというわけではないんですけど(笑)。詩や小説を読むのは好きで、かなり影響を受けていると思います。もともとは瀬尾まいこさんの作品が好きだったんですが、大学の授業で読まず嫌いしていた村上春樹さん、村上龍さんの小説を読んだら、まんまと感化されて、大好きになって。その影響もいろんな歌詞に出ていると思います。

ペンギンラッシュ – アンリベール (Official Muisic Video)

自分たちがやりたいことを表現したい(真結) 

ーー「能動的ニヒリズム」は歌、楽器を含めて、メンバーのプレイが生々しくぶつかり合っていて。かなり攻めている曲だなと。

真結:そうかも。この曲は私が“もと”を作ったんです。好きなコードを弾くことから始めることが多いんですけど、この曲もまさにそうで。好きなコード、好きなリズムで作っていった結果、セクションごとにかなり雰囲気が違う曲になって。

ーーいわゆる“Aメロ、Bメロ、サビ”というフォームからも逸脱してますね。

真結:そうやって(Aメロ、Bメロ、サビを意識して)作ることはほとんどないですね。バーッと好きなように作って、あとから「ここにAメロが入りそう」みたいな感じで決めるので。「このパートが間奏になるのか歌が入るのか、最後まで決まってない」ということもありますね。5曲目の「モノリス」もそういう感じだったかな。

望世:「モノリス」は途中までしかなかったからね、最初。

真結:そうか(笑)。「能動的ニヒリズム」はじつは『No size』の頃からあったんですけど、そのときは形にならなかったんです。スタジオで何度か演奏してるうちに、アレンジやテンポが変わっていって。

望世:バンドの練習曲みたいになってたんですよ。「どこまで速くできるかやってみよう」とか。

真結:最初のデモよりBPMが30くらい上がってますからね。

ーーいろいろなトライ&エラーを経て完成したんですね。曲を構築するスキルも上がってるのでは?

望世:そうかもしれないですね。去年よりは曲を形作る力が付いていると信じたいです(笑)。

ーー歌詞のテーマは“SNS”ですね。

望世:私たちはSNSのネイティブ世代というか、中学生の頃から使っていて。でも、本当はいらないと思ってるんです。

真結:うん。SNSは私も苦手で、やらなくていいんだったら、やってないと思います。ツールとしてはすごく便利なんだけど、個人的にはほとんどやってないですね。

望世:そういうことを考えている人はあまりいないと思いますけどね。周りの人たちを見ていても、依存していることに気づいてないような気がして。歌詞の解釈はそれぞれでいいと思うんですけど、何かを考えるきっかけになったらいいなというのはありますね。

ーーアルバムの最後の「青い鳥」は、ゆったりとしたグルーヴが印象的な楽曲ですね。

真結:それこそ“夜”をテーマした曲ですね。前作の「RET」もそうなんですけど、風景を思い浮かべながら作ることはけっこうあるんですよ。この曲は月をイメージしていて、仮タイトルも“MOON”だったんです。それを望世に渡して、歌詞をつけてもらって。それを見て、鍵盤ハーモニカの音を加えたんです。歌詞を見てから音を変えることもけっこうありますね。

ーー「青い鳥」という題名通り、幸せの在り処がテーマになっていて。

望世:私なりの応援歌ですね。デモの音源がすごくやさしい印象だったから、他の曲みたいに強さとか皮肉ったりするのではなくて、「応援したいな」という気持ちになったんですよね、珍しく。

ーー“幸せは身近にある”という普遍的なメッセージも込められていますが、お二人にとって幸せな状態とはどんなものですか?

望世:そうですね……。音楽に関わっているのが好きだから、こうやって取材してもらってアルバムの話したり、いろんな人に自分たちの曲を届けられるのはすごく幸せですね。

真結:うん。「こういうことを思いながら作りました」みたいなことって、普段はリスナーの方に伝えられないじゃないですか。こういう機会があるのはすごく嬉しいです。「こうやって作ったんです」と話したいというのもあるし(笑)、アーティストのインタビューを読むものも好きなんです。

ーーどの曲にも独創的なアイデアが施されているし、ジャンルレスですが、全体を通して“ペンギンラッシュらしさ”はしっかり存在していて。お二人は“ペンギンラッシュらしさ”をどんなところに感じていますか?

望世:さっき「能動的ニヒリズム」は前作のときからあったって話しましたけど、(『No size』に)収録しなかったのは、4人とも「“っぽく”ないかもね」と思ったからなんです。それが何なのか? って言われると、明確に答えられないんですけど。

真結:それは共通感覚としてありますね、メンバーのなかで。

ーーそれがズレることはないんですか? つまり誰かが「っぽいね」と思って、誰かが「っぽくない」っていう……。

真結:それはないかな。大体一致するような気がする。

望世:そうだね。どこで「っぽい」と思ってるんだろう?

ーーポイントはあるんですよね、どこかに。

望世:うーん、一つあるのは“溢れない”ということかも。

真結:わかる。「ここを超えたら、“っぽくない”」っていう。

ーー“溢れない”というのは“やり過ぎない”ということ?

望世:やり過ぎないというより、“寄り過ぎない”かな。

真結:そうだね。演奏的にやり過ぎちゃうことはけっこうあるんだけど(笑)、何かに“寄り過ぎ”はちょっと違うなって。

ーーなるほど、たとえばファンクに寄りすぎると、「ちょっと違う」ということになるのかも。

望世:そういうのはありますね。

ーーでは、ライブを意識することは? 「盛り上げる曲がほしい」とか。

望世:それはないです(笑)。

真結:考えたことない(笑)。

望世:体が揺れるような曲とか、盛り上がる曲とか、考えたほうがいいのかな(笑)。むしろ削ってますからね、私たちは。キラーチューンというか、ライブでいちばんウケがいい曲があったんだけど、やらなくなっちゃったんです。

真結:それも「っぽくない」というところで意見が一致したんですよね。「あの曲やらないんですか?」って言われるし、今回のアルバムにも「ついに収録されるかも」って思われてたみたいですけど……。

望世:入れなかったです(笑)。

ーーミュージシャンとしてやりたいことを優先している?

望世:そうなのかな? いいのか悪いのか(笑)。

真結:でも、自分たちがやりたいことを表現したいというのはありますね。リスナーのみなさんには好きなように楽しんでもらえれば。

望世:変拍子でもぜんぜん踊れますからね。

ーーペンギンラッシュの音楽はJ−POPシーンにもジャズシーンにも浸透できると思いますが、「こういう方向性で活動していきたい」というビジョンはあるんですか?

望世:いま言ってもらったように、いろんなところで活動できるのが理想ですね。ジャズのフェスにも出たいし、ロックバンド系のフェスにも出たいし。ずっとそうしてきたんですよ、私たちは。名古屋には私たちと似たような音楽性のバンドがいなかったから、ギターロックとか、歌モノのアーティストとかメロコアのバンドとも対バンして。

真結:名古屋はメロコアが強いですからね。

望世:それを続けていきたいんですよね。最近は東京でライブをやることが増えて、似た傾向のバンドと一緒になることも多いんです。それはそれで楽しいんだけど、まったく違うタイプのバンドとバチバチやるのも好きなので。

ーーすごい。ガッツのあるコメントですね。

望世:そうですか?(笑) 

真結:いろんなジャンルの人とやるのは単純に楽しいんですよね。聴いたことがない音楽も聴けるし。

望世:私たちが聴いたことのないジャンルのバンドと一緒にやって、すごく楽しい日を作れたことも何度もあって。そういう楽しさを知ってるんですよね。

(取材=森朋之/写真=伊藤 惇)

■リリース情報
2ndアルバム 『七情舞』
発売:6月5日(水)
価格:¥1,800(税抜)
配信はこちら

<収録曲>
1. 悪の花
2. アンリベール
3. 契約
4. 能動的ニヒリズム
5. モノリス
6. 晴れ間
7. 青い鳥

■インストアライブ情報
6月9日(日) 愛知 名古屋パルコ西館1FイベントスペースST 12:00
内容:ミニライブ+サイン会(来場者全員ライブ観覧可能)
詳細

■ライブ情報
ワンマンライブ『Rush out night 2019』
8月18日(日)名古屋 新栄APPLO BASE
OPEN 17:30/START 18:00
チケット発売中(イープラス)

『七情舞』東名阪レコ発ツアー “七情に舞う”
6月27日(木)名古屋 新栄APOLLO BASE
OPEN 18:30/START 19:00
w/けもの
チケット発売中(イープラス)

7月5日(金)東京 代官山SPACE ODD
OPEN 19:00/START 19:30 
w/集団行動、showmore
チケット発売中(イープラス)

7月12日(金)大阪 心斎橋CONPASS
OPEN 19:00/START 19:30 w/Lucky Kilimanjaro、RAMMELLS
チケット発売中(イープラス)

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