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WINNERやテミン楽曲から学べる“生きた韓国語” NICE73が教える、K−POP歌詞の読み解き方

リアルサウンド

19/9/14(土) 12:00

 タワーレコードによる次世代のエンターテイメント人材を育成するプロジェクト、タワーアカデミー。その夏休み特別講座として、K-POPイベントのMCや作詞・作曲家として活躍するNICE73を講師に迎えた『NICE73のK-POPでハングルを学ぼう!』が8月23日にタワーレコード渋谷店で開催された。ここでは講座終了後に行ったNICE73へのインタビューを交えて、K-POPの歌詞の特徴や日本語詞との違い、その文化的背景などについて見ていきたい。

 受講者の歓声に迎えられ、「皆さんこんばんは~! アンニョンハセヨ!」と元気よく登壇したNICE73。「韓国語を話せるようになるには韓国人の友達を作ることが大事だが、日本人の友達ですらイチから作るのは大変なこと。でも皆さんには、大好きなアイドルという友達がいる。サイン会などで推しに会ったときに、何か一言でも韓国語で伝える。それだけで一歩を踏み出せると思うので、今日はそんな言葉を一緒に勉強していきたい」と本講座の目的を明らかにした。

 前半の40分は韓国語の発音と抑揚について。自然な韓国語を話すためには最も重要であるという抑揚のポイントや、日本語にはない母音や子音の発音をひとつひとつ確認していく。また日本語は音域がHIGH、韓国語はLOWな音であることが多いとし、声の出し方を変えるだけで韓国語らしく聴こえ、伝わりやすくなると説明。「あぁ~とあくびをするときのような音で、下の方から広く音を出すイメージが大切」というわかりやすい解説に、受講者もうなずきながら耳を傾けていた。韓国人の歌の上手さにもこの声の出し方が関係しているといい、「韓国語は胸に声を響かせて話すことが多く、そのおかげで喉を開いた音を出すことに慣れている。そのため、歌うときの響きにも良い影響があるのではないか」とNICE73は分析する。

 そして本講座のメインである、K-POPを用いた韓国語講座の時間へ。この日は3曲のK-POP楽曲を取り上げたが、1曲目に選んだのはPRODUCE 48(IZ*ONE)の「We Together」。IZ*ONEを生んだ日韓合同オーディション番組『PRODUCE 48』の最終課題曲である。韓国語タイトルは「これからよろしくね」で、題名から歌詞まで日常で使える表現が多く含まれている。その中でも歌詞に出てくる「昨日」「今日」などの単語を使い、サイン会でK-POPアイドルからよく聞かれる「(韓国に)いつ来たんですか?」という質問に答えてみようという試みが行われた。NICE73いわく、K-POPにはこのように日常の韓国語を学べるストレートな歌詞が多いという。「J-POPはAメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ、サビと全部歌詞が違うが、K-POPはサビの歌詞がひとつしかない。逆に韓国の人は、なぜ日本はサビでこんなに歌詞が変わるのかと疑問に思う。そして詩的な比喩が少なく、話し言葉や日記を読んでいるような歌詞が多いので、生きた韓国語を学びやすい」と話した。

 またK-POPのサビの歌詞の特徴については、日常生活でよく耳にする韓国語を使うか、耳馴染みのいい外来語や韓国語のフレーズを使うか、大きく2つのパターンに分かれるという。「VIBEというアーティストが2006年にリリースした『酒よ』という曲は、『毎日酒だ』という男性がよく言うフレーズをサビに持ってきて大ヒット。みんなが酔っぱらいながらそれを歌っていた。逆にTWICEの『FANCY』のような、耳馴染みがいい単語をサビに落とし込むという手法もある」と語る。近年は後者がトレンドといい、インパクトのある「頭が痛い」というフレーズを繰り返すStray Kidsの「Side Effects」などの曲も生まれている。

 2曲目に解説したのはSHINeeのメンバーであり、ソロアーティストとしても活躍するテミンの「Danger」。この曲を選んだ理由についてNICE73は「原曲も幻想的で比喩表現が多いが、日本語詞も素晴らしいので。〈オヌルパム(今夜)〉という単語を〈今宵〉と訳したり、〈ノン チョルチョヘ(君は徹底している)〉を〈Knock 頂上へ〉、〈サラジョヨ(消えよう)〉を〈さよなら〉と似ている発音の言葉に置き換えるなど、訳詞とはこうであれという一曲」と絶賛。自身も訳詞家として詞を書くときは“音触り”を重要視しているという。「原曲の意味そのままではなく、聴いて音に違和感がないかを優先。韓国語では日本語よりも小さい音、例えば『タ』というときに『タッ』となり『ッ』という音が存在するが、そこを無視すると締まりのない音になってしまう。これがあることで音楽にグルーヴが生まれるので、韓国語と同じような舌使いができる、同じようなグルーヴになる言葉を選ぶようにしている」と語った。

 3曲目はWINNERの「AH YEAH」。WINNERの楽曲は「男心を歌わせたら右に出るものはいないんじゃないかというくらい、今の韓国男子の心情を表現してくれている」といい、歌詞を通じて“韓国男子あるある”を解説。例えば〈俺は友達とか無理〉というフレーズには、元彼女と友達になるのは無理、その後を知らないで生きていきたいという人が多いという背景があるとNICE73。「韓国の人たちは付き合うと『ご飯食べた?』『何してる?』と一日中連絡を取り合う。そこまで愛し合った2人の愛が消えてしまったら、他人になるしかない」と推測した。ほかにも、歌詞にデートの定番スポットである「映画館」や、韓国男子の好きなオンラインゲームのできる「PCバン(ネットカフェ)」が登場する点、ラップパートでの言葉遊びなどに言及。歌詞の内容から発展して、韓国語での多様な謝罪フレーズも紹介した。

 WINNERのほかに、今の生きた韓国語を学べるK-POPアーティストとしてNICE73が挙げてくれたのは、女性ラッパーでシンガーのHeizeと女性デュオの赤頬思春期。「韓国の人がどういう風に恋愛をして、どういう風に悲しんでいるか、今の若者の感性を知ることのできるアーティスト」と推薦した。

 終盤の10分間は撮影可能とし、好きなK-POPアイドルを相手に使える「また来ました」「大好きです」などの基本フレーズを紹介。受講者は画面に映されたフレーズの数々を、スマートフォンで熱心に撮影していた。またこの日の様子は、受講者限定で全編を動画で公開。自宅に帰っても、いつでも復習できるのが嬉しい。

 受講者からの質問も活発に飛び出し、盛り上がりを見せた本講義。最後は“K-POPイベントあるある”の受講者をバックにした記念撮影を行い、和やかな雰囲気で幕を閉じた。「どうせならただ意味が通じるだけでなく、心が通い合う言葉で話したいと思う。これからもただ言語を教えるだけでなく、その背景まで解説する講座を開いて、お互いへの理解が生まれるきっかけになれたら嬉しい」とNICE73。次回は未定だが、今後の開催にも期待したい。

(取材・文=土田理奈)

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