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家入レオが明かす、『絶対零度』主題歌に投影した“未完成”な自分 「人を愛するって綺麗事だけじゃない」

リアルサウンド

20/1/29(水) 18:00

 家入レオが、1月29日に通算16枚目のシングル『未完成』をリリースした。

 同作の表題曲は、月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』(フジテレビ系)の主題歌として書き下ろされたもの。人気シリーズであるこのドラマに家入が主題歌を書き下ろすのは、前シリーズに引き続きこれで2回目。前回の「もし君を許せたら」(『第60回 輝く!日本レコード大賞』編曲賞受賞)と同じく作編曲に久保田真悟(Jazzin’park)を迎えた家入は、抑揚を抑えたビートと切ないストリングスセクションをバックに、「叫び」にも似たエモーショナルな歌声を披露している。

 「未完成」について家入は「人が人を思う時に生まれる大きなパワーを、持て余してしまう未完成な私だからこそ作れた曲」とコメントしていたが、実は制作中に人生の転換期ともいえるような「大きな出来事」を体験したという。愛も、憎しみも、執着も、諦観も、全て含まれたこの歌詞(共作は岡嶋かな多)は、一体どのようにして生み出されたのだろうか。「大きな出来事」を経て彼女は、どのように生まれ変わったのか。赤裸々に語ってもらった。(黒田隆憲)

自分の“情けなさ”を知り「魂の土台」が出来上がった一年


ーー家入さんの通算16枚目のシングル『未完成』ですが、表題曲は月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』の主題歌として書き下ろしされたものだそうですね。どのように制作していったのでしょうか。

家入:2019年の夏からずっと書いていました。曲作りに時間をかけている間、当然ですが私自身の日常も並行して動いているわけで、もし早い段階で主題歌が決まっていたら、この「未完成」は生まれていなかったと思うと不思議な気持ちです。

ーーつまり制作中、家入さんの日常に大きな出来事があったということですね。

家入:はい。その出来事に向き合った時、何をどう表現したらいいか分からないけど、とにかく歌いたい、作りたいという気持ちになって。それでもう一度、ドラマのプロットを読んだら、登場人物たちも傷付いたり傷付けたりしながら、強烈な思いを抱えていることに改めて気づいたんです。それと、自分の中に渦巻いている強烈な気持ちをリンクさせながら曲作りを進めていきました。

ーー何があったんでしょうか。

家入:一つひとつ自分の中だけで大事にしたいものなんです。でも、どの出来事も「あなた自身で生きなさい」ということを気づかせてくれるものでした。これまで色んな方から「25歳を前にすると、一つの『壁』というか、ターニングポイントを迎えると思うよ」と言われ、それってどういうものなのだろう? と思っていたのですけど、「あ、言ってたのってこれだったのか」と思うような出来事がいくつも起きましたね。これでやっと、「魂の土台」が出来上がったなという気持ちです。

ーーこれまでは、どこか「自分自身で生きている」という実感が得られなかったということですか?

家入:自分では生きているつもりだったのですけど、今振り返ってみると10代の頃は「反射」で生きていた気がします。17歳でデビューして、とても流れの速い海の中で流されないように必死に立っていて。一つ一つの物事に対して判断を迫られた時に、反射で「やる」「やらない」を大人たちに伝えなければならない状態だったというか。

 もちろん、支えてくださる人たちは周りにたくさんいましたけど、自分自身もずっと肩に力が入った状態だったんです。徐々に抜けてきてはいたのですが、すぐには変われないから。そのテーマと2019年は正面から向き合った形になりました。

ーーそうだったんですね。

家入:「どうしてそんなことを言われなくちゃいけないんだろう」みたいな出来事もあったし、自分が大事にしていたものを無くしたり壊したりしたことで、「ああ、もう自分で生きていくしかないんだな」と思わされたこともありました。そのうち、「ああ、そうそう。こういうときに傷つくのが私だよね」なんて茶化して言えるようにもなってきて。端的に言えば、「負け」というか、自分自身の「情けなさ」を知った1年だったと思います。

ーーようやく、自分の弱さや情けなさを人前にさらけ出すことができるようになった、と。

家入:自分に余裕のない10代から仕事をしてきましたが、そうすると、その余裕のなさ、「いっぱいいっぱい」な姿を人に見せるのは失礼な気がして、気づけば体裁だけ整えるようになっていたんですよね。心の中はずっと苦しかったり、助けて欲しかったりしているのに「平気なフリをするのが当たり前」みたいな。しかも、「苦しい時は『苦しい』って言ってもいいんだよ?」って、手を差し伸べてくれる人もいたのに、そういう生き方を今までしてきたことがなかったから、自分が傷つけられているような気がして取り乱してしまったんです。

ーー差し伸べられた手すらも「痛み」に感じていたというか。

家入:そうですね。これまでずっと、守られたり愛されたりすることに慣れすぎていたのかもしれないです。その手を受け入れられなかったことの後悔から学び、「取り乱したっていいんだ」ということに気付いてからは、「今、この瞬間」を大切にしよう、と。自分がとっても大事にしていたものを、一度失ってからじゃないと気づけないことがあった1年でしたね。

ーー「今、この瞬間」を大切にするというのは、具体的にはどうするようになったということですか?

家入:例えば今日のこのインタビューも「この時間にしか話せないことを話そう」って思ったり、挨拶も、今までちゃんとしてきていたつもりだったけど「10回挨拶するなら1回にちゃんと気持ちを込めよう」と思ったり(笑)。最近、必要以上にお礼を言ったり謝ったりしなくなりました。

 それからもし今、自分に余裕がなくて真剣に向き合えないんだったら、「ごめん、今じゃなくて後がいいな」とか、「ちょっと持ち帰って考えてみてもいいですか?」と言えるようになったんです。反射的に物事を決めることに慣れ過ぎてしまったから、これからはスピードに呑まれないことにチャレンジしようと思って。

ーーなるほど。

家入:以前はありえないくらいスピードの中で「うわあ、この壁を越えないといけないのか……無理だよ」って毎日思いながら生活してたし、その壁が次のステージへの扉になる瞬間というのを、どこかで楽しんでいたんですよね。そういう自分は今も変わってないけど、「何も起こらない日常」を、次に人生の方から何か大きなことを仕掛けてきたときに、対応できる自分でいるための準備期間なのだなと思ったら自然と焦らなくなりました。平和な毎日もちょっとずつ抱きしめられるようになった気がします。

ーーそうした出来事に身を置きながら書き上げたのが「未完成」の歌詞なのですね。家入さんは、自分が未完成だと感じることはありますか?

家入:日々ありますね(笑)。人ってそれぞれ感覚が違うから、「これを大事にしたい」という人と自分の感覚をすり合わせていかなければならないじゃないですか。私はここが心地いいけど、相手はここが不快だとか。それって黙っていては分からない。でも私は、そのことを相手に伝える作業をずっと渋っていたんですよね。「言ったら悪いかな」と思ってしまったり、好きだからこそ言えなかったり。

 でも、それって関係を持続させる努力を放棄しているのと一緒なのだなと。自分が傷つきたくないから言ってないだけなんだなと気づいてからは、伝えられなかった普遍的な愛への思いが一気に迫り上がってきたんです。

ーーそれを書き留めていった、と。

家入:「未完成」は、どこか一部分を抜粋して聴くとか、本当はあまりして欲しくないんです。一部分だけ切り取られてしまうと、ものすごく怒りや憎しみに包まれている歌詞にもなるし、逆に愛が強すぎる歌詞にもなる。自分というパレットに、赤、青、黄色、色んな色を絵の具から出して、筆でぐちゃぐちゃって混ぜて、自分でも何を歌っているか分からないけど、強烈な衝動だけがある……みたいな。でも根底に流れているのは「絶対的な愛」なんです。

ーー「絶対的な愛」ですか。

家入:主題歌を書くにあたって、色んなニュースにも敏感になるんです。あるニュースを見て感じたことなんですが、人を愛するって綺麗事だけじゃないし、むしろ相手のことを大事に思えば思うほど、美しい感情と同時に醜い感情も増幅すると思うんですよね、私は。だから「絶対的な愛」を書くにしても「あなたの幸せを願っている」という、美しい心にたどり着くまでの時系列を端折らずにこの曲では書きたかった。そういう未完成な伝え方しかできない今の自分をそのまま投影させたんですよね。

 「未完成」の歌詞は、〈「会えてよかった」と君が笑う もう自由だよ〉で終わる。この曲の正常な部分って、ここだけなんですよ。でも、ここにたどり着くまでには、これだけの怒りと悲しみと後悔があって。これまでいろんな物事が、形を変えて私に訴えてきていたんだなって思いますね。「気付きなさい」って。自分でしか生きていけないのに、違う人を生きようとしたり、形だけ整えてしまったり。

ーー歌詞を読むと辻褄が合わない感情があるのは、その揺れをそのまま出しているからなのですね。

家入:そうなんです。3秒ごとに人格が変わっちゃう。映画の『ジョーカー』観ましたか? あれを観た後に書いたというのもあるかもしれないです。感情をうまく外側に押し出せない私は、あの映画に共感しかなかったんです。さっきも言ったように、今は「助けて」と思ったら言うようにしていますけど。泣くことを恥ずかしいと思ったり、悲しいと思っていることを照れたりしない生き方をしよう、と。

これからも剥き出しのままで生きていくしかない


ーーこの曲を書くにあたって、他に何か影響を受けた作品はありましたか?

家入:平野啓一郎さんの『私とは何かーー「個人」から「分人」へ』を読んで、それでまた生きるのが楽になりました。自分は「1人」じゃなくて、人と出会う数だけ自分が生まれる。その中から、「この人といる自分が好き」と思える相手と一緒にいるべきだし、「この人といる自分はあまり好きじゃない」と思ったら、心地よくなれる距離を探すべきだということが書かれているんです。

 それと、千早茜さんの『男ともだち』にも感銘を受けました。イラストレーターの主人公が、ある写真展で作品を観て号泣する場面があるんですけど、そこを読んだ時に自分が小学生の頃を思い出したんです。当時、テレビのオーディション番組を観ていたら、自分と同じ年の子が大勢の前で自己PRをしたり、歌ったり踊ったりしている姿を見た時に涙が止まらなくなったんですよ。「同じ年の子がこんなふうに頑張っている時に、私は何をやっているんだろう、何のために生まれてきたんだろう」とまで思ってしまった。

ーー感動すると同時に、自分を否定されたような気持ちになってしまったのですね。

家入:自意識過剰ですよね(笑)。母にも、「どうして?『あら素敵、綺麗』でいいじゃない? あなたが否定されているわけじゃないのよ?」と言われていました。でももうしょうがないなと。私はそうやって生きてきちゃったし、これからも剥き出しのままで生きていくしかないなと思って。それで丸裸になって書いたのがこの「未完成」という曲です。

ーー2曲目の「UNCHAIN」は、どんなふうに作っていきましたか?

家入:ツアーでベースを弾いてくれている須藤(優)さんが作ってくれました。須藤さんとはいろんな形で曲作りをしているのですが、この曲を聞いた瞬間「うわあ、すごくいいなあ」って。しかも歌い上げるのではなく、呟くように歌った方が合っている曲だなと。新しい家入レオに挑戦出来るかもしれないと思ったんですよね。テーマは「クォーターライフ・クライシス」が合うんじゃないかと思って、歌詞を書いていきました。

ーー20代後半から30代に訪れる、人生への焦りや幸福の低迷期を「クォーターライフ・クライシス」と呼ぶそうですね。

家入:それこそ周りで結婚や出産を経験する人が増えたり、幼なじみの子たちが人生の中の大きな選択をしているのを見ると、自分の中でも新しく何かをはじめたいな、と。

ーーそういう、新しい自分の可能性や役割を模索する時にはいつも何から始めますか?

家入:本を読んだり映画を観たり、演劇を観に行ったり……感情を他に探しに行きますかね。あと、自分が好きなことを見つけるために、幸せを感じるときのことを書き出します。ご飯食べるのが好きだと気づいたら、「じゃあお家で手の込んだおせち料理でも作ってみようかな」とか。

 最近は休日に小説を書いているんですよ。それは、20年後に完成するかもしれないし、今年中に出来上がるか分からないけど(笑)。今できることの範囲でパワーを貯めておくのが大事なのかなと。何がどう繋がるか分からないですしね。

ーー「結婚」の話が出ましたけど、今現在の家入さんの結婚観はどのようなものですか?

家入:この間、福岡の祖母と電話で話して「いい人、いるとね?」って言われたときに「ああ、そういう年齢だよな」って思いましたね(笑)。

 結婚は自分だけの問題じゃなくて、相手のいることじゃないですか。求めすぎても、求められすぎてもうまくいかないんだろうなと。ただ、一つ思うのは、私は誰かを好きになるときに、恋をしにきている姿勢に心を惹かれたことがあまりなくて。その人が仕事をしている姿や、何かを一生懸命頑張っている状態に惹かれるんですよね。だから私も、自分が今目の前にあることを一生懸命やっていれば、どこかのタイミングでそういう機会が来るのかなと思う。あまり、結婚って「何歳までに」というものでもないと思うし。

ーー家族のあり方みたいなものも変わってきている気がしますね。

家入:そう思います。それは、LGBTQにあてはまらなくても、女性同士が自分たちの人柄に惹かれあって、一つ屋根の下で暮らすようになって。どっちかが他の人と授かった子を育てたりとか。そういうことが当たり前になっていくんじゃないかと思っています。自分がどういうものに当てはまっていくのかは分からないけど、東京にいると特に社会的なプレッシャーみたいなものも、そんなに感じないんですよね。それもまた怖くもあるんだけど(笑)。

ーーもう、血のつながりへのこだわりも無くなっていくのではないかなと。

家入:自分で選ぶ。そういう世の中にもっともっとなっていけば、いろんな人が生きやすくなると思いますね。

■リリース情報
16thシングル『未完成』
発売:2020年1月29日(水)
<初回限定盤A CD+DVD>
価格:¥1,800(税抜)
<CD>
01. 未完成 (フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』主題歌)
02. Unchain
03. Every Single Day(Acoustic Version)
04. 未完成(Instrumental)
05. Unchain(Instrumental)
<DVD>
Acoustic Sessions Movie
01. miss you
02. a boy
03. Overflow
04. For you
05. Shine

<初回限定盤 B>
価格:¥1,800(税抜)
<CD>
初回限定盤A と同内容
<DVD>
01. 未完成(Music Video)
02. 未完成(Music Video Making)

<通常盤 CD>
価格:¥1,200(税抜)
<CD>
初回限定盤Aと同内容

<ニューシングル「未完成」店舗別オリジナル特典>
下記対象店にてCDシングル「未完成」予約・購入すると、先着で<家入レオ「未完成」カレンダー入りオリジナルポストカード>(*絵柄は全7種)をプレゼント。Amazon.co.jpは「デカジャケ」。

<対象店>
絵柄A:
・タワーレコード 全国各店 / タワーレコードオンライン
絵柄B:
・HMV 全国各店 / HMV&BOOKS online
絵柄C:
・TSUTAYA RECORDS 全国各店 / TSUTAYA オンラインショッピング
※TSUTAYAオンラインショッピングは予約分のみ対象。
絵柄D:
・楽天ブックス
絵柄E:
・セブンネットショッピング
絵柄F:
・ビクターオンラインストア / WIZY
絵柄G:
・その他、全国CDショップ(後日店名追加発表予定)
・山野楽器   CD/DVD取り扱い店舗
・ネオウィング
・玉光堂    各店舗
・バンダレコード 各店舗
・ブックセンター湘南栗原店、ブックセンタークエスト黒崎井筒屋店、小倉本店、
ブックセンタークエストエマックス 久留米店、積文館書店 筑紫野店
・紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店、ゆめタウン廿日市店
・成田本店 しんまち店、みなと高台店
・八文字屋長井店、丸井八文字屋、みずほ八文字屋
・スクラム  古川店、大河原店
・文榮堂 ヴィレッジヴォイス/ リブロ ひたちなか店/ よむよむ 草加松原店/ 宮脇書店 加美店/ ライオン堂

<デカジャケ>
・Amazon.co.jp
※特典のカレンダー入りオリジナルポストカード絵柄は7種類です。対象店により絵柄は異なります。(Amazon.co.jpはデカジャケ)
※特典は無くなり次第終了。
※対象店は随時追加となる可能性あり。
※一部取扱いの無い店舗もあり
※各オンラインショップにて予約受付中

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