高畑充希さんと大久保佳代子さんの芝居がすごくいい！

今回は2作品プラスひとつおまけで紹介します。まずは『浜の朝日の嘘つきどもと』。舞台となっている福島県では先行して8月から上映中、他の地域では9月10日から公開中の日本映画です。

100年近くの間、地元の人たちに支えられて映画文化を育んできた福島県南相馬の映画館・朝日座。近年、シネマコンプレックスの台頭から、次第に客足は遠のいていくのに耐えられず、支配人の森田はある決意をします。

ところがそのとき、若い女性・茂木莉子が現れ、その決意に水を差すことに。東京の配給会社に勤めていたという彼女は、朝日座を立て直すためにやってきたのです。朝日座の閉館は決定事項、支配人の森田にも手の打ちようがありません。が、莉子は街に住んでなんとかするから絶対につぶさないで、と懇願。

実は彼女が高校時代、映画の魅力を教えてくれた恩師との約束のため、この劇場を守り抜こうとしていたのですが……。実在する映画館を舞台にした、映画愛に満ちた感動作です。

莉子が立て直しにかかる朝日座がある街は、みんなが知り合い同士という小さな街。そこで、東京にはないご近所付き合いをうまく使ったアイデアで、朝日座をなんとかしようと試みます。

高畑充希さんが演じる莉子は、東京で配給会社に勤めていたという設定なんですが、これが本当にアルアルで……。こういう配給の女性いるなー、と思える役作り。ユーモアがあって、強さがあって、とてもバランスがいい芝居。しかも、充希さんがすごく自然に演じているのが素敵でした。

なぜ莉子が支配人に「映画館なんてな、時代に逆向しているんだよ。」とまで言われながらも、そこまで映画館に対して思い入れがあるのか、という理由は、高校時代の恩師・茉莉子先生の存在があります。茉莉子先生は大久保佳代子さんが演じているんですが、これまたいい！

茉莉子先生は莉子に映画の楽しさを教えるとともに、実の親よりも手厚く見守ろうとしてくれたんですね。その誰かを心から気にかけるということの大切さは、大久保さんの芝居で見事に表現されています。人生のつらいときを救ってくれた映画と映画館に思いを込めた温かな作品です。

主人公の「見た目さえよくなれば人生明るくなる」という考えには異議あり！

次は『整形水』。韓国のアニメーション映画です。

人気タレントのヘアメイクを担当しているイェジは、小さい頃から自分の外見にコンプレックスを抱えている女性。自分に自信がないだけでなく、タレントからは馬鹿にされ、偶然出てしまったテレビ番組の後には悪意たっぷりのネット書き込みが乱立し、自暴自棄になってしまいます。

そんなとき、巷で噂の“整形水”が届きます。整形水は、顔をその水にひたすだけで思いどおりのルックスに変わることができる、副作用も後遺症もない奇跡の水と言われていました。早速イェジも整形水を試し、新しい顔と新しい人生を手に入れようとするのですが……。コミック原作のサイコホラー／アニメーションです。

このコーナーでアニメーション映画を紹介することはあまりありませんが、これはすごい。タイトルからしてインパクト強烈なんですが、途中まで観たときに「こりゃ実写では無理だわ」と思う描写がたくさん。しかも、多くの人が気にしがちなルックスをテーマにしているのもいい。

まずイェジのキャラクターが、全く共感できないってのがいいですよ。美貌だけでなく、お金や名声にも欲を丸出しで、家族への態度も世間への態度もめちゃくちゃ悪くて利己的。「そもそも彼女は見た目が問題じゃない」ってことに気づくと思います。

人間誰でもコンプレックスを持っていると思いますが、多くの問題は時間をかけて努力することである程度は克服できることだったりするもんですよね。実は私も自分の顔に嫌いなパーツがあって、以前は映ることをすごく気にしていたんですが、見ている人に気にさせないテクニックを磨くことで乗り越えてきました。

だからこそ、イェジの「見た目さえよくなれば人生明るくなる」という考え方には異議あり。外見の追求はほどほどにしないと、内面まで崩れていってしまうよ、ということを、恐怖の展開で見せきってくれています。

最後にひとつおまけで『スーパー戦闘 純烈ジャー』(笑)。ご存知のとおり、夫・小田井涼平が所属している純烈が初主演したヒーロー映画です。実は、メンバーの後上翔太さん以外は全員特撮ヒーロー出身だったので、全員がヒーローを演じるのを念願にしていた企画。これ、ツッコミどころ満載なのかと思ってみたら……思いの外、ガチのヒーロー映画で、むしろもうちょっとツッコミたかったと思ったほど。唯一、小田井が変身すると縮む（本人が大柄すぎて）という現象には笑えるはずです(笑)。

※次回は9月24日（金）に更新予定です！

取材・文：よしひろまさみち　撮影：源賀津己

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プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社　1400円（税別）
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