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安藤サクラの演技は視聴者の心を明るくさせる 『まんぷく』第1話に詰まったワクワク感

リアルサウンド

18/10/2(火) 6:00

 NHK朝の連続ドラマ小説『まんぷく』は、高度経済成長期の大阪を舞台に、安藤サクラ演じるヒロイン・今井福子と長谷川博己演じる青年実業家・立花萬平が、インスタントラーメンを開発し、食文化に革命を起こす姿を描く作品である。

参考:『まんぷく』第2話では、腹痛(?)で倒れた母・鈴(松坂慶子)を咲(内田有紀)が心配する

 画面上に登場した安藤は、女学校を卒業したばかりという18歳の福子をイキイキと演じていた。ホテルの電話交換手として働き始めた福子の、慣れない仕事に戸惑いながらも懸命に仕事する姿には好感がもてる。ホテル従業員から「新入りの子はな、べっぴんは客と顔を合わせる部署。そうやない子は裏方に回されるんや」とからかわれた後、受付の女性を見つめながらため息をつく福子の表情は、年頃の娘といった感じでなんとも愛らしい。女学校の親友とラーメンを食べに出かけた先で「私って器量が悪いん?」と相談する姿は、悩み多き18歳の女の子そのものだ。

 また家族構成も、福子のキャラクターをより強く印象付けた。早くに夫を亡くしながらも、「武家の末裔」という誇りをもち、3人の娘を育て上げた母・鈴(松坂慶子)。貴金属店で働きながら家族を支え、婚約者と結婚することが決まっている優しき長姉・咲(内田有紀)。画家の夫と結婚し、4人の子供に恵まれた明るい次姉・克子(松下奈緒)。彼女たちによって、末の娘として大事に育てられたことは、家族と過ごす福子ののびのびとした姿から伝わってくる。

 そして「食べることが大好き」という福子は、食事シーンではとにかく美味しそうにご飯を食べる。結婚する咲に対して母が口を挟むシーンでも、「器量が悪いん?」と相談するシーンでも、食事に向かう瞬間には一貫して幸せそうな表情を浮かべる福子。その表情を見ていると、見ているこちらも思わず笑みを浮かべてしまう。

 たった15分間しかない中で、福子がどんな人物なのかが分かり、物語の伏線を感じさせるような、今後の萬平との未来を感じさせるような、ワクワク感に満ちた演出が印象的だった。福子を全力投球で演じる安藤の明るい表情は、テレビの前の視聴者の心をぱーっと明るくする。福子を演じる安藤の溌剌とした演技、思わずお腹が空いてしまいそうな食事シーン、第1話以降に期待が高まるとびっきりのワクワク感。『まんぷく』の世界観は、視聴者の心を“まんぷく”にしてしまう不思議な魅力で満ちている。

 安藤はこれまでもNHK朝の連続ドラマ小説のヒロインオーディションを受け、何度も落選したという。念願のヒロイン役を受けたとき、安藤は第一子の出産から数ヶ月経ったばかりだった。しかし夫・柄本佑や家族からの励ましにより、連ドラ初の“ママさん”ヒロインとして役を演じることに決めた安藤。NHK公式インタビューによれば、『まんぷく』制作陣がかけた言葉によっても励まされたという。

「『まんぷく』制作陣のみなさまにお会いしたときに、私の娘にとってもスペシャルな時間にしましょうと言ってくださったことが心に響き、一緒に飛び込んでみるか、という気持ちになりました」

 ヒロイン役を勝ち取るまでの背景を知ると、安藤が福子を全力投球で演じている理由が容易に理解できる。彼女の女優生活において、とても大きな転機となるだろう。

 朝の連続テレビ小説は長い放送期間を要するが、安藤の女優としての経験と彼女自身のキャラクターから不安は感じられない。福子がこれからどんな風に夫となる萬平と出会い、結婚し、食文化に革命を起こす夫婦となるのか期待が高まる。

 脚本を手がけた福田靖によると、今作のモデルである安藤百福の妻・仁子に関する資料はほとんどないと言う。関係者への取材は可能な限り行ったが、日清食品株式会社の創業者である安藤を支えた妻の物語は「限りなくフィクション」だと明かしている。しかしだからこそ「誰もが元気になれる楽しい“朝ドラ”にしなければ意味がありません」と話す福田。

 第1話を観る限り、安藤の演技は、誰もが元気になれる楽しい“朝ドラ”を提供してくれることだろう。(片山香帆)

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