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新たな法廷もののジャンルを切り開いた『99.9』 一度ハマると抜け出せないその魅力

リアルサウンド

20/6/29(月) 6:00

 18年前の2つの事件はつながっていた。『99.9-刑事専門弁護士- SEASON Ⅰ 特別編』(TBS系)最終夜で、谷繁(千葉雄大)の父・明利(緋田康人)がビルの屋上から落ちて死んだ同時刻に、三枝(平田満)は杉並で起きた資産家令嬢殺人事件の犯人を目撃していた。当時、検察で杉並の事件を担当していた佐田(香川照之)は、三枝の証言を採用し、被害者と交際中の真島(菅谷哲也)を起訴。真島は有罪となり再審請求中に亡くなっていた。

参考:松本潤が千葉雄大の弁護を担当 『99.9』木村ひさし演出回は小ネタが満載

 三枝の目撃証言は明利殺しのアリバイ作りのための虚偽のものだった。明らかな検察のミスだが、検事長の十条(中丸新将)は隠ぺいを指示。深山(松本潤)は犯人が通った橋が工事中だったことを突き止めるが、三枝は犯人を目撃したのは別の橋であったと証言する。真相解明の途は、ふたたび閉ざされてしまった。

 「自分にとっては小さなことでも、人によっては大きく人生を左右することがある」と所長の班目(岸部一徳)が語るように、多くの人の一生を狂わせる冤罪も、発端はほんの些細なことだったりする。それを隠そうとして嘘を塗り重ねるうちに、真実は手の届かないところへ行ってしまう。無罪を現実のものにしようと奮闘する弁護士たちの向こうには、有罪率99.9%を守ろうとする人間がいて、0.1%をめぐって熾烈な攻防を繰り広げている。

 真島の無罪を証明する深山の手段は徹底してディテールにこだわること。依頼者や証人の家族構成を聞くわけは、「関係ないことが関係してくる場合もありますので」ということで、真島の友人だった板橋(吉沢悠)の何気ない言葉が最終的に真犯人へと結び付いた。

 『99.9』は“司法の闇”とも言うべき問題を扱っている。SEASON Iは検察、IIでは裁判所をめぐる問題が取り上げられるが、大上段から正義を訴えたり、歪んだ司法を断罪するのではなく、検事や裁判官それぞれが個人としてどのように過ちや葛藤と向き合うかにフォーカスしている。佐田は板橋に「この事件に関わった人間として、検察官として真犯人を見抜けなかった」と言って詫びる。

 その上で「罪は罪だ。嘘が本当になることはない」と話すのだが、仮に佐田が自身のミスを無いものとして目をつぶっていたら、真実と向き合うことはできなかっただろう。検察時代にした不手際を認めた佐田の姿は、真実を明らかにするのに遅すぎることはないということも示唆している。

 2話連続の後編は、片桐仁(ラーメンズ)演じるパラリーガル明石の身体を張った活躍が見ものであった。とにかく転びまくり、バナナの皮で滑ったうえにハチにめった刺しにされる「そんなバナナ」と「泣きっ面に蜂」のダブルコンボやフロア全員でのクイーン「WE WILL ROCK YOU」地団駄まで、同じくパラリーガルの藤野を演じるマギーとともに、『99.9』のギャグサイドのテンションを一手に担っていた。

 『99.9』の芸人枠では、2人の他に、最終夜で阿佐ヶ谷姉妹(渡辺江里子・木村美穂)も登場。「いとこんち」客では、第4夜のエレキコミック(今立進・やついいちろう)に続いてどぶろっく(森慎太郎・江口直人)も参戦した。SEASON IIは馬場園梓(アジアン)も加わり、ちょっとした漫才の舞台になっている。

 高まる一方のギャグ濃度に対して、恋愛要素は、相変わらず加奈子(岸井ゆきの)から深山への一方的な片思いのみというアンバランスさも本作の特徴。シリアスなストーリー進行と対照的な『99.9』ワールドには、一度ハマると抜け出せない魅力がある。

 連続ドラマで刑事専門弁護士を初めて扱った『99.9』であるが、その後、『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)などの作品が続いている。新たな法廷もののジャンルを切り開いたと言えるが、元祖として『99.9』の新シーズンを目にできる日を楽しみに待ちたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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