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JP THE WAVYはなぜ確かなブランドを築き上げられたのか m-flo「Toxic Sweet」参加を機に探る

リアルサウンド

19/9/1(日) 8:00

 m-floが、8月7日に新曲「Toxic Sweet feat. JP THE WAVY」を配信リリースした。

 m-floらしいコミカルなリリックで、火星人のヒロインと地球人のメンズの恋物語を描いた「Toxic Sweet」。メンバーの☆Taku Takahashiが久方ぶりのラップを披露していたり、レゲエ調のビートが陽射しの強い夏の季節にぴったりだったりと、公開当初より話題を集めている。そんな同曲で耳に残るのが、客演として参加したJP THE WAVYのバースである。

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 JP THE WAVYといえば、まず語られるのが「Cho Wavy De Gomenne」だろう。 2017年にバイラルヒットを記録した同曲は、SALUを客演に迎えたリミックスのMVが1200万回再生を突破(2019年8月25日現在)。その後は、自身のソロワークスを拡充するのはもちろん、SALUやMINMI、加藤ミリヤといったアーティストらの作品に迎えられることとなった。しかしなぜJP THE WAVYは、ラッパーとして今日のような確かなブランドを築き上げられたのか。本稿では、彼の特徴的な歌声に焦点を当てながら、その理由を考えてみたい。

 何よりもまず、JP THE WAVYの歌声には不思議な“中毒性”がある。その声色は、他アーティストらと比べてロートーンにあることが多く、落ち着きながらも芯の通った声質のため、オートチューンがうまく奥行きを与えるのだろう。また、ゆったりとしたBPMのトラップビートには、彼の得意とする、うねるようで滑らかなフロウも相性がよく、それらの掛け合わせが独特な聴き心地にまで昇華されるのだ。あわせて、ラップ/メロディのどちらにでも対応できる歌唱力も買われたのだろう。「Toxic Sweet」では、メンバーのLISAではなく、JP THE WAVYが楽曲のフックを歌い上げている。

 さらに、前述したMINMI「イマガイイ」や加藤ミリヤ「顔も見たくない」では、力強くもチルアウトな雰囲気を演出。どちらの楽曲でも、フックのみならず楽曲全編に絡む立ち位置に据えられているが、なかでも後者では、冒頭から加藤のパートを引き立てるコーラスも担当している。そして、MINMIらボーカルが歌う小節の繋ぎ目ではアドリブも細かに披露。〈Aye〉や〈Skrrr〉などに代表されるアドリブは、J-POPにおける“合いの手”のようなもので、近年のヒップホップでは、楽曲を構成する重要な要素のひとつに認識されている。JP THE WAVYが発する低めなトーンのアドリブは、男声と女声というコントラストを意識させ、楽曲そのものをタイトに引き締めてくれる。

 そんな彼の歌声にますますのオリジナリティを与えるのが、ダンサーの経験を活かした拍の取り方(=ビートアプローチ)のセンスだ。“踊れるラッパー”として知られるJP THE WAVYだが、そのダンス歴はラップのそれよりも長いとのこと。いわゆる“トラップ以降”のヒップホップでは、小節毎に言葉を詰め込みがちになる分、リズムキープが肝になるわけだが、彼は様々なビートに対して多彩なフロウを提示しながら、小節毎に的確な落としどころを見つけてくる。“踊れる”という強みが、MVなどで視覚的に活きるのはもちろん、その能力は自身のラップスキルにも還元されているのだ。

 以上の要素が揃っているからこそ、説得力あるパフォーマンスが実現するほか、客演という立場ながらも、時としてメインボーカル以上の存在感を発揮してしまうのだろう。JP THE WAVYに対して“華がある”イメージを抱くのは、それらの背景があるためだと思われる。現に、若年層ヘッズを中心として「JP THE WAVYが参加している曲なら間違いない」という共通認識が急速に広まった時期を目撃した経験がある。それはもしかすると、前述したようなアーティストたちの間でも同様だったのかもしれない。

 そしてJP THE WAVYほど、自身の“代名詞”に富んだラッパーもなかなかいないだろう。ハイブランドに身を包んだ〈ネオギャル男(=Neo Gal Wop)〉、「Cho Wavy De Gomenne」に登場するパンチライン〈今まで見たこと無い このType〉をはじめ、〈Sorry〉や〈Wavy〉といった一言でさえ、今や“JP THE WAVY”その人というイメージに直結している。「Toxic Sweet」の☆Takuのバースでも、〈Cho Wavy De Gomenne〉のワンフレーズが効果的に用いられているのが、何よりもの好例といえるだろうか。

 最後に、〈Wavy〉という言葉は自身の地元である神奈川・平塚の“波”のほか、第一に“格好いい”という意味合いから選んだとのこと。その意味づけを踏まえるに、現在の彼自身はまさに〈Wavy〉すぎる存在といえる。JP THE WAVYが“謝り”続ける日々は、まだまだ終わりそうにない。(一条皓太)

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